プロペシアは男性に多い男性型脱毛症(AGA)の進行を止める治療薬です。プロペシアを服用している間はAGAの進行を止めることができますが、プロペシアに耐性ができてしまい、だんだん効き目が悪くなるという噂があります。
薬に耐性ができるというのはよく聞く話ですが、プロペシアでも本当に耐性ができて、効き目が悪くなってしまうのでしょうか。また薬が効かなくなったら、どのような対策をしたら良いのでしょうか。
目次
AGA治療薬プロペシアとは
AGA治療薬のプロペシアに耐性ができるのか、その検証の前にまずプロペシアとはどのような治療薬なのか、プロペシアの成分や効果、臨床試験でAGAがどのように改善されたのか、またプロペシアの副作用についても確認しておきましょう。
プロペシアの成分フィナステリド
プロペシアの主成分であるフィナステリドは、毛根の毛乳頭にある還元酵素5αリダクターゼの働きを阻害する作用があります。
5αリダクターゼは男性型脱毛症の原因である男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)を、テストステロンから変換する働きがあります。DHTが毛乳頭のレセプターと結合すると、ヘアサイクルの成長期が短くなり抜け毛が増えて、進行性の男性型脱毛症(AGA)を発症します。
フィナステリドが5αリダクターゼの働きを阻害することで、男性型脱毛症の進行を防ぐことができます。
元々はアメリカで前立腺肥大の薬として開発されましたが、後に薄毛治療にも効果があることがわかりました。経口薬のAGA治療薬として開発され、商品名「プロペシア」の名で販売されるようになりました。
日本では2005年国内初のAGA治療の承認薬としてMSD社より販売され、今も多くのAGAを発症した日本人男性が服用しています。
フィンペシア
プロペシアを1か月服用すると、薬代が1万円程度かかることもあります。より安価なインド製ジェネリック薬のフィンペシアを、個人輸入で購入する人も多いようです。しかし個人輸入は副作用が起きた場合自己責任になり、薬の品質の安定性など安全性の面で心配です。
日本でも厚生労働省から認可されているクラシエ、サワイ、トーワなどからプロペシアのジェネリックが出ているので、プロペシアより安価なものを求めるのであれば、国内で認可されたジェネリックをクリニックで求めることがおすすめされています。
プロペシアの効果
プロペシアは5αリダクターゼの働きを抑制し、男性の男性型脱毛症の進行を遅れさせる作用があります。特に頭頂部の薄毛の改善に効果があるとされています。
プロペシア自体には発毛効果はありませんが、AGAの進行を止めることで発毛しやすくなるようです。半年~1年で進行が止まる、髪の量が増えるなど症状の改善が見られるようです。
初期脱毛が服用開始後約1~2か月の期間で見られることがあります。初期脱毛は薬の効果で毛母細胞が活発化、正常なヘアサイクルに戻す過程で起きる脱毛なので、問題はないそうです。初期脱毛が収まると新しい髪が生えてきて、改善が見られるということです。
プロペシアの臨床試験
日本での臨床試験ではプラセボ群(実際にはフィナステリドを服用していない群)、フィナステリドを0.2mg服用した群、フィナステリドを1mg服用した群に分けて、AGAの症状が改善したか、変わらなかったか、薄毛が進行したかを調べました。
プロペシアを1年間服用してもらったところ、プラセボ群で改善6%・不変72%・進行22%、フィナステリド0.2mg群で改善54%・不変41%・進行5%、フィナステリド1mg群で改善58%・不変40%・進行2%という結果になりました。
フィナステリドを服用している群の方が改善効果があり、AGAの進行が見られないという結果となりました。
さらにフィナステリド1mg群で1年で改善58%だったのが、2年後で68%、3年後で78%と改善率が上がることも認められました。
またアメリカでの実験でも同じ面積での髪の毛の本数がプラセボ群は平均21本減少したのに対し、フィナステリド1mg群は平均86本の増加が見られたという結果が得られました。
プロペシアの副作用
プロペシアは肝機能低下、性欲減退、男性機能低下、抑うつなどの副作用が起きることがあります。プロペシアの服用を中止後に副作用が現われる、または副作用の症状が継続する「ポストフィナステリド症候群」が問題になっています。
性欲減退、男性機能低下に関する副作用に関しても臨床試験が行われましたが、性欲減退はプロペシア群で1.8%、プラセボ群で1.3%、またEDはプロペシア群で1.3%、プラセボ群で0.7%の出現率でした。
プロペシア群の方が若干数値が高いですが、プラセボ群でも症状が出たという報告があったことから、必ずしもプロペシアによる副作用とは言い切れないのではという意見もあるようです。
プロペシア服用で耐性ができるのは本当か
プロペシアの服用でAGAの進行を止めている男性にとって、プロペシアに耐性ができるという噂は見過ごすことのできない話題でしょう。果たして本当にプロペシアの長期服用で耐性ができるのでしょうか。検証していきます。
プロペシア耐性に関する記事
プロペシア耐性に関する記事は、専門家の先生方のコラムや薄毛・育毛関連の情報発信サイト(「ハゲラボ」「育毛研究所Age35」さんなど)などでも多数見られます。
耐性はない、という意見も多いですが、発毛治療を行っている某クリニックのN先生が「発毛薬で効果が出なくなることがある」という発言が掲載されていたり、ハゲ治療が順調に進んでいる人にとって非常に心配になる意見もあるようです。
プロペシアに耐性がないとする根拠は?
薬剤の耐性というのは、生物(病原菌)が薬剤を化学的に分解する酵素を出したり、体内のウイルス自身が薬が効かないよう変化したり、薬を細胞から排出する力を持つことによって、薬の影響を受けず生きることを指すようです。
広くは薬の使用を続けていると抵抗力や抵抗性ができて効かなくなることを指しますが、薬剤の耐性と言うと病原菌に関することを指すようなので、AGA治療薬のプロペシアに使うのは不適当という意見もあるようです。
プロペシアの服用を続けると効き目が効かなくなるのかについては、より長い経過の薄毛の改善効果を確認する必要があるでしょう。
実際にアメリカで長期にわたるプロペシアの効果を確認したところ、フィナステリド1日1mgの10年間服用で5年後は改善が53%、不変が45%、悪化が2%、10年後は改善が68%、不変が28%、悪化が4%という結果になりました。
5年より10年後の方が改善した割合が増えています。状態が悪化した人も多少増えていますが、全体としてはAGAの進行がプロペシアの長期服用で改善していると考えて良いと考えられます。
プロペシアの耐性・効果まとめ
プロペシアは服用1年経過で半数以上の人が改善を体験しています。また2年、3年経過するとプラセボ群と比較しても改善率が大きくアップしていることから、治療薬効果により薄毛が改善していると考えられます。
また5年、10年と試験期間を延長して確認したところ、5年後よりも10年後の方が改善率がアップしていました。これらの臨床試験の結果を理由に、プロペシアに耐性がないという噂は科学的根拠がないと見なされているようです。
プロペシアの耐性を感じた時に気をつけること
プロペシアはAGAの発毛治療に欠かせない治療薬です。プロペシアには耐性がないようですが、服用を続けても以前のように効果が出ないと非常に困ります。薬の効果がないと感じた時、気をつけることを確認しておきましょう。
服用量を守る
プロペシアが効かなくなったからと言っていきなり中止したら、さらにAGAが進行する可能性があります。副作用など出ていなければ服用は続けましょう。
また効き目が悪くなったからと言って適量を守らず、服用量を増やすのも副作用の危険があるので止めましょう。
なるべくフィナステリドの血中濃度を一定にするためにも、決まった時間に服用することが勧められています。服用の仕方に問題はなかったか振り返ってみましょう。
薬が効かなくなった原因を考える
もしクリニックで処方されたプロペシアではなく、個人輸入代行サイトで購入した海外のフィナステリド薬で効かなくなったとしたら、その薬自体に問題があるのかもしれません。
AGA治療薬に限らないですが、品質の悪い薬や偽造品が流通していることが問題になっています。信頼できるところで購入しましょう。
プロペシアはAGAの初期症状には効果がありますが、症状が進むとプロペシアのみでは改善が難しいとされています。年齢が進むほど男性ホルモンの影響だけでなく細胞が不活発になり、脱毛の症状が進んでいくことも考えられます。
プロペシア以外の治療も併用が必要かもしれませんので、クリニックで先生に相談してみましょう。また日常生活で薄毛の症状が進むような要因が潜んでいないか、栄養不足やストレスなどの原因も探ってみましょう。
プロペシアの耐性を感じた時他の治療薬は?
プロペシアの効果が感じられなくなったら、他の治療薬に変更か、発毛薬との併用が必要な状態なのかもしれません。まずはAGAクリニックや育毛専門クリニックへ相談しましょう。クリニックでプロペシアの代わりに処方される治療薬、また併用を勧められる発毛薬を紹介します。
ザガーロ(デュタステリド)
ザガーロもプロペシアと同じAGA薬です。5αリダクターゼの働きを抑制することで、男性型脱毛症の原因となる男性ホルモンの増加を防ぎます。プロペシア同様経口薬ですが、プロペシアが錠剤であるのに対し、ザガーロはカプセルタイプです。
プロペシアと異なるのはプロペシアの有効成分フィナステリドは2型の5αリダクターゼに作用するのに対し、ザガーロの有効成分デュタステリドは1型の5αリダクターゼにも作用するところです。デュタステリドの方がよりAGAの進行を抑える効果が高いと言われています。
ミノキシジル
ミノキシジルは男性のAGAだけでなく女性の薄毛治療にも使われる発毛効果のある薄毛治療薬です。ミノキシジルには血管拡張作用、また成長因子の増殖効果もあるとされ、毛母細胞の分裂を活発にし、育毛、発毛、抜け毛予防の効果があります。
ミノキシジルは当初は高血圧の薬として開発されましたが、投薬された高血圧患者に発毛効果があることがわかりました。その後薄毛治療薬として開発され、ミノキシジル配合の外用薬ロゲインが発売されました。
その後ロゲイン以外にもミノキシジルの外用薬が多数販売されるようになり、日本では発毛剤リアップが認可薬として薬局でも売られています。AGA発毛専門クリニックでも、プロペシアと外用薬のミノキシジルは併用としてよく処方されているようです。
外用薬のミノキシジルでは頭皮のかゆみ、ほてりなどが副作用として報告されています。元々血圧に作用する薬なので、血圧や心臓等に異常がある人は使用できません。
ミノキシジルは外用薬(発毛剤)以外にも内服タイプのミノキシジルタブレット(ミノタブ)もあります。
ミノキシジルタブレット
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)は外用薬よりもミノキシジルの効果が高く、薄毛がなかなか改善しなかった人も発毛効果が高いとされています。
ミノタブは発毛薬としての効果は高いのですが、その副作用の危険性がたびたび指摘されています。低血圧、動悸、めまい、頭痛などの副作用があります。
個人輸入でミノタブを購入する人が後を絶たないようですが、AGAクリニックなど専門のクリニックでの処方が安心でしょう。クリニックによっては治療効果を高めるためにミノキシジルとフィナステリドを独自配合しているところもあります。
プロペシアに耐性ができた?薬以外の改善法
プロペシアとミノキシジルを併用しても効果が感じられないようであれば、クリニックに相談し、治療薬以外の改善方法を検討することも考えられます。治療薬以外のAGA治療方法、またセルフケアとしての育毛法についてもご紹介します。
治療薬以外のAGA治療方法
治療薬以外では頭皮に直接成長因子や薬剤などを注入して施術を行う育毛メソセラピー、HARG療法などがあります。治療薬のみでは効果が見られない場合、治療効果を早く出したい場合に利用されるようです。その他に自分の毛包を脱毛部分に移植する自毛植毛法があります。
自毛植毛法
プロペシアやミノキシジルは頭頂部の改善には効果が高いのですが、生え際の薄毛には効果が薄いとされています。自毛植毛法なら好きな部位に移植することができるので、生え際の薄毛にも効果的とされています。
自毛植毛法にはFUE法とFUT法があり、FUE法はメスを使わない方法でFUT法はメスを使う方法です。FUT法は皮膚ごとメスで切ることで広い範囲に植毛しやすいという利点がありますが、傷跡が残りやすいです。
FUE法はパンチで毛包を採取する方法ですが、傷跡が残りにくい反面広い面積の植毛には向いていないとされています。
最近はどちらの欠点も補えるよう技術が進歩し、各クリニックによって手術法にもさまざまな工夫が行われているようです。施術はAGAクリニック、美容皮膚科などで行われています。興味のある人はAGAクリニックランキングなどを参考に、カウンセリングだけでも受けてみると良いかもしれません。
育毛剤
育毛剤には育毛効果のある血行促進成分や、頭皮環境を整える成分などが入っています。育毛剤を塗布してマッサージすることで抜け毛の予防対策や、育毛・発毛を促進することが期待できます。ミノキシジルは刺激が強くて苦手という人には育毛剤もおすすめでしょう。
育毛サプリ
日頃の食生活から髪に必要な栄養素を摂取できるのが理想ですが、すべての栄養素を理想的な量毎日摂取するというのは難しいことです。より効率的に髪の健康に良い栄養素を摂取するには、髪に良い栄養素が多数入っている育毛サプリもおすすめです。
まとめ
プロペシアは男性型脱毛症(AGA)の進行を抑え、薄毛を改善する効果のあるAGA治療薬です。AGAを発症した男性でプロペシアを服用している人は多数いますが、プロペシアには耐性があるという噂もあります。
プロペシアを長期間服用している人を調査したところ、5年後より10年後の方が改善したという人が増え、悪化したという人はほんのわずか増えた程度で、プロペシアの長期服用で効果がなくなるとは考えにくいという説が有力なようです。
しかしAGAは進行性の脱毛症なので、症状によってはプロペシアのみで抑えることが難しいことも考えられます。AGA進行の抑止にプロペシアより高い効果が期待できるザガーロに替えたり、発毛薬のミノキシジルを併用するという手段もあります。
その他のAGA対策として治療薬以外の治療法の検討、頭皮環境や栄養からも育毛環境を整えるために育毛剤や育毛サプリを使用することもおすすめです。
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