ミノキシジルはもともと高血圧のための薬として開発されましたが、薬を服用していた人から髪の毛が増えたという副作用の報告がありました。後に脱毛症の治療薬として内用薬、外用薬が開発され、AGA治療薬として広く使われるようになりました。
ミノキシジルは脱毛症にどのように作用するのでしょうか、効果はどれぐらいで現れるのか、副作用はあるのでしょうか。またミノキシジルと併用できる治療薬やその他の治療薬にはどのようなものがあるかについても、確認していきましょう。
ミノキシジルの発毛効果
ミノキシジルには発毛効果があると言われています。
血管拡張作用があるということですが、いったいどのようにミノキシジルは髪の毛に作用して、発毛を促すのでしょうか。
血圧降下剤
ミノキシジルはもともと血管拡張剤であり、高血圧の人のための降圧剤として開発された薬です。
血管を拡張することで血流のめぐりが良くなりますが、ミノキシジルが処方された患者から髪の毛の毛量が増えたり多毛症の症状が現れました。
AGA治療薬
ミノキシジルが処方された高血圧の患者に発毛が見られたことから、後に育毛剤の成分として開発が進められ、内用薬、外用薬が開発されました。AGA治療薬としてプロペシアとともに薄毛治療でよく使われる治療薬です。
若ハゲ番長さんのブログ、AGA治療体験記でもミノキシジルや他の治療薬についていろいろ紹介されているので参考になります。
ミノキシジルの発毛メカニズム
血圧降下剤であれば薄毛治療に効果があるのかというと、決してそうではありません。降圧剤の中でも髪が生える現象が見られたのはミノキシジルのみなのだそうです。
ミノキシジルを服用することで血管が広がって、血流が良くなります。さらに頭皮にある毛包に栄養成分が送られ、毛包内の毛乳頭に働きかけて毛母細胞が活発に分裂するようになります。毛母細胞は分裂すると髪の毛になっていきます。ミノキシジルを服用すると髪の毛の伸びが早くなると言われています。
発毛因子
ミノキシジルを服用することで、毛乳頭細胞からVEGFやKGFと呼ばれるタンパク質が分泌されます。
このタンパク質が発毛因子として働き、毛包の毛細血管が増えることで髪の毛が成長期へと移行するといわれています。
男性型脱毛症(AGA)
男性型脱毛症は、男性ホルモンが毛乳頭や皮脂腺に存在する還元酵素によって、脱毛を促す男性ホルモンに生成されることが原因で発症する脱毛症です。生成された脱毛ホルモンは髪の健康なヘアサイクルに悪影響を与えます。
ヘアサイクルには髪が太く長く成長する成長期、成長が止まる退行期、髪が抜け落ちる休止期があります。本来成長期は2年~6年ありますが、男性型脱毛症を発症すると半年から1年の成長期間となってしまいます。この脱毛スイッチが入った状態になると抜け毛が増えて、脱毛症を発生します。
このような脱毛症は男性だけでなく女性にも起こり、女性男性型脱毛症とも呼ばれています。育毛成分のミノキシジルは休止期~成長期の髪の毛に働きかけ、発毛を促す作用があります。
男性型脱毛症は男性の場合、人によって薄毛の進行の仕方が異なります。頭頂部から、生え際の両サイドから、または前頭部全体からハゲがゆっくりと進行していきます。女性の場合は頭部全体の頭髪が薄くなります。薄毛・育毛治療において、ミノキシジルの使用で薄毛の改善が見られています。
男性型脱毛症診療ガイドライン
男性型脱毛症診療ガイドラインとは、日本皮膚科学会が選定したAGA治療方法の目安となるものです。AGA治療法にはいろいろなものがありますが、診療ガイドラインではA判定からD判定の5段階に治療法を判定しています。
A判定がもっとも強く勧められる方法ですが、ミノキシジルの外用薬とフィナステリドの服用がA判定とされています。
ミノキシジルのタイプ
脱毛症治療薬として使用されるミノキシジルには、内用薬のタイプと外用薬のタイプがあります。内用薬はミノタブの名前で知られるミノキシジルタブレット、外用薬はリアップやロゲインなど、ミノキシジルが配合された塗布剤です。
リアップは薬局で購入できる一般用に販売されている医薬品ですが、ミノタブやロゲインはAGA治療や脱毛症治療専門のクリニックなどでないと手に入りません。並行輸入、個人輸入は安全面からおすすめできません。
ミノキシジルの副作用
ミノキシジルには多毛症や動悸、息切れ、かゆみやかぶれなどの副作用があるといいます。
その他服用にあたって注意することは何でしょうか。
多毛症
ミノキシジルを服用することで、手の甲や指、腕や脚、顔などの毛が太く濃くなることがあります。ミノキシジルは血管拡張剤として直接毛包に作用する働きがありますが、内用薬の場合は直接頭皮に塗る外用薬よりも、全身の毛に影響を及ぼしやすいです。
外用薬でも全くないとは言えません。
動悸
ミノキシジルを服用した人に動悸や狭心症の発作の副作用が見られることもあります。ミノキシジルは血管拡張作用がありますが、動脈にのみ作用し静脈の拡張はありません。そのため動脈が拡張したことでで増えた血流は、静脈を通って心臓に戻ってくる時に一気に流れこんできます。そのため心拍数が増加、狭心症の発作を引き起こすことがあります。
外用薬でもまれに見られますが、特にタブレットは副作用が出やすいようです。そのため処方をしない医療機関もあります。高血圧や不整脈などの症状が見られる人は使用を控えましょう。
ミノキシジルの危険性
その他にもミノキシジルの副作用としてかゆみ、低血圧、頭痛やめまい、しびれ、性欲減退やED、体重の増加、顔のむくみ、目の腫れや充血なども報告されています。
さらに重い症状として心室肥大、心外膜液異常、多臓器不全、高カリウム血症、腎性全身性線維症などの副作用があることも警告されています。
初期脱毛
ミノキシジルに限らずプロペシアのようなフィナステリド成分の治療薬を服用することで、以前より脱毛が増える初期脱毛という副作用が起きる可能性があります。
これは、薬の成分が毛母細胞に作用し、毛母細胞が急激に活性化することで起きる現象です。毛母細胞が急激に活性化すると、休止期にあった髪の毛が通常よりも早く生えようとします。そのため元々生えていた髪の毛が押し出されてしまい、髪が抜けてしまいます。
治療を始めたのに髪の毛がいつもよりさらに抜けることで不安になりますが、新しい髪が生えてきている証拠なのであまり心配せず、また治療薬の服用や塗布を止めないようにしてください。
飲む育毛剤ミノタブ
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)は飲む育毛剤とも言われ、発毛、育毛に高い効果があるそうです。
その効果を発揮するにはどれぐらい飲み続ければよいのでしょうか、またミノタブはどこで入手すれば良いのでしょうか。
ミノタブとは
ミノタブはミノキシジルを主成分とするタブレット(錠剤)で、飲む育毛剤とも言われています。頭皮の血行を促進し、毛乳頭へ栄養が行き渡ることで毛母細胞の分裂を促進、つまり髪の成長を促します。
薄毛が気になる頭頂部や生え際の発毛を促すことで、攻めの治療薬とも言われます。外用薬より高い発毛作用がありますが、その分副作用も多いようです。
服用法と服用期間
ミノタブには2.5mg、5mg、10mgがあります。1日1、2回服用します。服用量は医師の処方を守るようにしましょう。個人差はありますが、服用して数週間で初期脱毛が始まり、1か月~3か月で効果が実感できるそうです。
ただしせっかく発毛しても服用をやめれば効果がなくなります。ミノタブの発毛力を発揮するには、薬の服用を継続することが必要です。
治療費
AGA専門クリニックなどでミノキシジルタブレット処方の治療の場合、ミノタブが1月分で4,200円~5,200円程度、6か月で25,200円~31,200円程度、さらに診察料が6か月で30,000円ぐらいとすると、6か月で計55,000円から60,000円ほどすることになります。遺伝子検査や他の検査もするとさらに10,000円~20,000円かかることになります。
クリニックによって診察・処方の内容と料金にも差があるので、事前によく確認しておきましょう。
入手方法
ミノキシジルタブレットは飲む発毛薬としてすっかり有名になりました。AGA治療専門クリニックで処方してもらうのが良いのですが、治療費トータルで考えると高くなってしまいます。
そこで個人輸入や個人輸入代行サイトなどで購入している人も少なくないようです。個人輸入代行業で有名なのはオオサカ堂ですが、こちらで購入すると100錠で3,000円ぐらい、医療機関で購入する4分の1ぐらいで入手できます。
個人輸入の危険性
ミノタブを個人輸入するのはリスクがあります。まずそのミノタブが本物ではなく偽物の可能性があるということ、医師の処方でないために副作用の危険性があります。
また副作用が出た場合、個人輸入された薬では医薬品副作用被害救済制度が適用されません。
ミノキシジルの外用薬
ミノキシジルは発毛効果が高い薬ですが、内用薬は体全体に作用しやすく、重い副作用が起こる可能性もあります。直接頭皮に塗るミノキシジル配合の外用薬は、よくある育毛剤より効果が高く、内用薬ほどの副作用の心配がないとされています。
国内で発売されているミノキシジル配合の外用薬である市販薬には、大正製薬のリアップシリーズがあります。
発毛治療の外用剤
外用薬ミノキシジル配合の発毛剤には、ロゲイン、ポラリス、リアップ、ジェンヘアーがあります。内用薬ほどの強い副作用はないようですが、塗布することで頭皮のかゆみや湿疹が見られることがあります。発毛剤選びに悩むところですが、濃度や使用感が異なりますのでよく確認してから使用しましょう。副作用や頭皮への刺激が心配であれば、濃度の低いものから使用してみるといいでしょう。
アメリカの製薬会社から発売されている外用発毛剤のロゲインは知名度も高く、医療機関でも使われています。ミノキシジルが5%配合されていますが、日本のリアップにも5%配合されたものが出ていますので、ほとんど効果は変わらないとされています。ロゲインの方が価格が安いのですが、国内の薬局で買うことはできません。
ミノキシジル配合の外用剤は、薬局でも買える薄毛治療薬としては最強の外用剤でしょう。
リアップ
リアップは日本で初めて発毛効果が認めらた、ミノキシジル配合の発毛医薬品です。ミノキシジル1%を配合したリアップ、さらに頭皮の環境を整える成分が配合されたリアッププラスなどがあります。市販薬ですので手軽に入手できるのもメリットです。
リアップシリーズは壮年性脱毛症の発毛、育毛、抜け毛の予防をその効能としています。壮年性脱毛症は男性型脱毛症、特に30代以降の人のAGAを指しています。円形脱毛症や甲状腺疾患による脱毛症、急性の脱毛症、髪が斑な状態の脱毛症には使用できません。
主成分のミノキシジルが乱れたヘアサイクルを正常にし、休止期から成長期にかけて新しい毛の発毛促進、成長期では髪の成長促進で毛包を大きく深く成長させます。
リアップX5プラス
リアップX5プラスは、リアップシリーズでも最も発毛力の高い医薬品です。発毛成分のミノキシジル濃度が他のシリーズより高く、ミノキシジルを5%配合しています。
ピリドキシン塩酸塩で皮脂を抑え、トコフェロール酢酸エステルで炎症・においの原因となる過酸化物質に作用、l-メントールで炎症とかゆみを抑えます。未成年、女性には使えません。
女性用リアップ
リアップにはリアップリジェンヌという女性用の発毛剤があります。発毛医薬品成分であるミノキシジルが1%配合されています。さらにl-メントール、トコフェロール酢酸エステル以外に栄養を補給して頭皮を健康な状態にする成分、パントテニールエチルエーテルも配合されています。
リアップリジェンヌは女性用ですが、未成年者や妊婦、妊娠中、授乳中の人には使えません。壮年性脱毛症以外の脱毛症にも使えません。
臨床試験による発毛効果のデータ
リアップX5を長期投与した試験の結果、12週間後で6割の人に軽度の改善、24週後で軽度改善、中等度改善、著名改善を合わせた9割以上で改善が見られたという結果が出ています。また臨床データより髪の毛を生やすだけでなく、太い髪の毛の本数も大きく増え、リアップX5により髪を強く太くする効果があることが伺えます。
ミノキシジル1%配合のリアップでも毛髪数の変化が見られますが、リアップX5はより高い効果が見られることも臨床データによりわかりました。同一部位でリアップの増加数15.4本に対し、リアップX5は21.8本というデータも得られました。
AGA治療薬のプロペシア
薄毛治療でミノキシジルとよく併用される治療薬にプロペシアがあります。
プロペシアはどのような治療薬なのでしょうか。
プロペシアとは
プロペシアは有効成分フィナステリドの治療薬です。元々は前立腺肥大症の治療薬として開発されました。AGAの原因と前立腺肥大の原因が5αリダクターゼという還元酵素にあります。プロペシアにはこの酵素の働きを抑え、脱毛を阻害する作用があります。そのためミノキシジルが発毛を促進する攻めの治療薬と言われるのに対し、プロペシアは守りの治療薬と言われます。
ミノキシジルの外用薬とプロペシア(フィナステリド)の内服は男性型脱毛症診療ガイドラインでも有効な方法とされています。プロペシアは病院やAGA専門クリニックで処方されますが、クリニックでミノキシジルとプロペシアの両方の薬を併用で、処方されることもあります。
有効成分フィナステリド
プロペシアの成分であるフィナステリドは2型5αリダクターゼに作用します。
男性ホルモンのテストステロンは、還元酵素である5αリダクターゼによりジヒドロテストステロンという男性ホルモンに変化します。ジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンは抜け毛の原因となります。フィナステリドが5αリダクターゼの働きを抑制することで、テストステロンがDHTに変化せず、抜け毛を抑えます。
プロペシアの特許が切れたことで、フィナステリドのジェネリック医薬品がいくつか発売されるようになりました。また1型5αリダクターゼにも作用するというデュタステリドにも注目が集まっています。
まとめ
ミノキシジルは元々降圧剤として開発された薬ですが、発毛を促進する効果があることがわかり、薄毛治療の薬として研究開発、販売されるようになりました。ミノキシジルの血管拡張作用により血流が良くなること、また毛包周囲の毛細血管に作用することで、発毛を促進する効果があります。
ミノキシジルには内用薬のミノキシジルタブレットと、外用薬のミノキシジル配合の発毛剤があります。ミノタブは効果が高いのですが副作用も強く、狭心症発作や体の多毛症を引き起こすこともあります。直接頭皮に塗布する外用薬の方が副作用が少ないです。
国産のミノキシジル配合の発毛剤リアップは、薬局でも手に入れることのできる発毛医薬品で、いわゆる育毛剤とは異なり抜け毛の予防や頭皮環境の改善だけでなく、発毛を促進するということで注目されています。
外用薬のミノキシジルの使用と、内用薬のプロペシアを服用することで、より高い薄毛改善の効果が見込まれます。
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