脱毛症というのは髪の毛が何らかの原因により抜け落ちてしまう症状です。正常なヘアサイクルでも1日に髪の毛は50〜100本ほどと言われています。多かったとしても1日に250本以上が自然に抜け落ちることはないでしょう。
この抜け毛とほぼ同量もしくは、少し多い割合で毎日新しい髪の毛が生えてきています。恐らく平均で1日110本近くの髪の毛が生えていると推測されます。
もしこの新しい髪の毛の成長と抜け毛の数に変化が起きて、抜け毛の本数の方が多くなってしまうと何らかの脱毛症になっている可能性があります。原因は様々で、抜け毛の症状に合わせて何らかの症状が発症している場合にいくつかの脱毛症であると判断されます。詳しい症状については薄毛やAGA専門のクリニックや病院などで詳しい検査をしないとわかりませんが、もしそれらの症状の特徴が確認されれば、ほぼその脱毛症であると判断できます。
いきなり病院での診察やカウンセリングなどに抵抗がある人は、まずはどの様な脱毛症があるのか、そして自分がどのような脱毛症の危険性があるのかを知っていきましょう。
目次
進行形の脱毛症
脱毛症の中でも治療が困難であり、時間とともに薄毛が進行していく脱毛症について紹介します。男性女性関係なく、どちらにも発症するもので抜け毛の症状がなかなか治まらず、育毛剤の使用やシャンプーの変更や薬の服用などを行う人も少なくありません。
生活習慣などを改善することでいくらかの症状の緩和が期待できますが、症状が進行してからはそれだけの変更では根本の治療は難しくなっています。
では3つの脱毛症を紹介していきます。
AGA(男性型脱毛症)
AGA(エージーエー)と呼ばれるもので男性型脱毛症とも呼ばれます。男性に引き起こる脱毛症の代表的な脱毛症の一つです。主に、生活習慣の悪化、ストレス、ホルモンバランスの変化、肥満、加齢、遺伝、運動不足、睡眠不足、などの問題が関係して脱毛症に繋がります。
男性型脱毛症のメカニズムは血中を流れる男性ホルモンのテストロンが毛根内に侵入しその内部に存在する毛乳頭細胞内の5αリダクターゼという酵素の働きによってより強力なホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変化します。
このジヒドロテストステロン(DHT)が毛母細胞内に侵入すると受容体(レセプター)と結合します。この結果毛母細胞内で細胞分裂が行われなくなり髪の毛の成長が妨げられます。さらに毛周期(ヘアサイクル)が乱れてしまい、髪の毛の成長期の期間が短くなり、休止期や後退期と言った期間が長くなることで髪の毛の脱毛、抜け毛の量が多くなります。
男性のAGAの場合の遺伝では母方の祖父からの隔世遺伝でのAGAになりやすい染色体の遺伝が行われます。自分の母方の祖父の髪の毛の状態を確認し、自分の髪の毛の変化の具合を確認してみましょう。
薄毛の症状としては基本的には前髪の生え際から、もしくは頭頂部からの薄毛が進行します。逆に側頭部や後頭部の部分には薄毛は進行しない傾向にあります。フケや頭皮が脂ぎったりしていない場合でおでこの面積が広くなってきたりつむじの薄毛が気になりだしている人はAGAの薄毛の可能性が高いでしょう。
AGAに関する詳しい記述はこちらの記事を参考にしてみてください。
・AGAとは?特徴や原因を知ろう!治療するには薬が効果的なの?
・agaの治療費用はどのくらい掛かる?クリニックなどで掛かる費用の相場を紹介!
FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGAは女性に起こる男性型脱毛症のことで、女性男性型脱毛症とも呼ばれます。女性の体内にも少量の男性ホルモンが存在しています。この男性ホルモンが男性と同様の影響をあたえることで男性型脱毛症が女性にも引き起こります。
女性に男性型脱毛症が起こる場合は髪の毛全体が均等に薄くなる様な症状が見受けられ、後頭部も側頭部にも薄毛の症状が見られます。女性のAGAの場合はびまん性脱毛症という風にも呼ばれます。
主な原因は男性のストレスに近い、競争ストレスを長期的に受けることや、元々男性ホルモンが多い人(ヒゲやスネなどの体毛が濃い)や、更年期などの加齢が原因で女性ホルモンのバランスが崩れてきている時期や、家族間で薄毛の症状を発症している人が多い場合は遺伝の可能性も考えられます。
また女性特有の原因としては、生理時のホルモンバランスの変化やダイエットなどによりる栄養不足やストレスなどの影響で脱毛が引き起こる可能性もあります。
治療法では頭皮の細胞を若返らせるHARG療法などが効果が高いとして近年注目されています。細胞の元となる幹細胞から抽出された成長因子を頭皮に注入し再び正常なヘアサイクルを取り戻す治療方法です。いままで治療が難しかった加齢が原因の場合のFAGAなどの治療にも効果が期待できます。
FAGAに関する詳しい記述はこちらの記事を参考にしてみてください。
・女性男性型脱毛症FAGAって何?原因と治療法と対策方法を紹介!
牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)
この脱毛症は特に髪の毛の長い人などで、長期的に髪の毛を縛っているなど髪の毛の生え際に引っ張る力を長時間かけている人に発生しやすい脱毛症です。
原因となりやすい髪型としては、ポニーテール、ツインテール、お団子ヘア、三つ編み、編み込み、ヘッドアクセサリーの使用、ヘアアイロンの使用などがあります。さらに髪の毛を毎日同じ方向に分けていることでも前髪の生え際が薄毛になってしまったりもします。
男性でも同様に髪の毛が長い場合や、髪の毛の根元に負荷のかかる髪型をしている場合にその生え際が部分的に薄毛になってしまう場合があります。
特に大きな薄毛の事故に繋がった例で言うとエクステンションによる髪の毛の牽引が強いことで前髪全体が後退してしまった例もあります。また無意識に髪の毛をいじってしまうことでもその部分が薄くなってしまう例もあります。
前髪の分け目や髪の毛の分かれ目が薄毛になっている人は、牽引性脱毛症を意識し定期的に髪型や髪の毛の分け目を変更したり、過度なヘアアレンジなどを行う場合は髪の毛を休ませる時間も確保してあげましょう。
どのくらいの期間での引張で髪の毛の薄毛に繋がるかは個人差がありますので自分の髪の毛の状態や体調や頭皮の状態を確認しつつ問題を回避していきましょう。
一時的な脱毛症
上記の脱毛症では、時間経過とともに脱毛症が進行しひどくなっていく症状を紹介しましたが、ここでは時間経過で自然治療が目指せたり、比較的症状の回復が見込める脱毛症について紹介していきます。
問題となる症状が緩和されれば、同時に髪の毛の抜け毛の症状も治まっていくので、問題となる症状を確認し対策して治療していきましょう。
円形脱毛症
円形脱毛症はよく聞かれる脱毛症なのではないでしょうか?誰もが1度は聞いたことがあるのではないかと思います。特に若い子どもに発症しやすい傾向のある脱毛症で、基本的には7割以上が単発型と呼ばれる10円〜500円程の大きさで頭皮が露出するほどの髪の毛の脱毛が1箇所〜2箇所に発生します。
大きな原因は一時的なストレスや遺伝、またはアトピー性の皮膚炎などを持っている人に発症しやすかったり、自己免疫疾患が原因であるとされています。免疫作用が暴走して髪の毛の毛根を外敵と判断し攻撃してしまうことで髪の毛の脱毛が起こってしまうことがあります。
子供に起る場合は、環境の変化やいじめや両親の離婚、親族の死、不慮の事故などの問題があったりそれらが重なった時に脱毛が起こりやすい症例があります。
成人以降の男女にも同様の原因で脱毛症が発症します。しかし、原因が割りとはっきりしている1〜2箇所ほどに出来る単発型の脱毛症であれば、生活習慣の改善やストレスを取り除くことで2〜6ヶ月ほどで症状の自然回復が見込まれます。
治療が難しいのは2箇所以上に出来る多発型や帯状に脱毛が起こる蛇行型、頭全体の髪の毛が抜け落ちてしまう全頭型、頭以外の体毛までも抜け落ちる汎発型などの脱毛症の場合非常に治療が困難になります。特に蛇行型、全頭型、汎発型などの脱毛症は原因がはっきり解明されておらず難病に指定されています。これらの脱毛症になってしまった場合、長期的な治療と脱毛症との付き合い方を医師と一緒に模索していく必要があるでしょう。
円形脱毛症に関する詳しい記述はこちらの記事を参考にしてみてください。
・円形脱毛症の原因を知ろう!ストレスが原因は間違い?治療法と再発防止策について!
粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)
フケの症状が異常に起こっている状態で脱毛症にまで発展している場合の脱毛症になります。
季節の変わり目やシャンプーを長期的にしていない場合や頭皮の乾燥が異常に起こっている人や頭皮がベトベトしているなどの症状がある人に引き起こりやすい脱毛症です。
一般的なフケ症とは異なる量で、異常にフケの生成が行われちょっと髪の毛に触っただけでフケが落ちてきて、取っても取っても無くならず無限に近い形でフケが落ち続けます。
フケが大量に発生することで、フケが毛根を塞いでしまうことと頭皮にマラセチア菌が大量発生することで髪の毛の栄養が奪われたりすることや痒みや湿疹ななどの症状がひどくなるなどが抜け毛の原因になっていると考えられます。
原因はホルモンバランスの乱れやストレス、自律神経の乱れ、自分の頭皮に合っていないシャンプーやトリートメントなどの使用、生活習慣の乱れなどが原因で頭皮の常在菌を増やしてしまったことが主な原因と考えられます。
シャンプーだけでは治療が困難なので、専門の医師のもとでステロイド剤やアレルギー系の飲み薬などを処方してもらいましょう。
脂漏性脱毛症(しろうせいだつもうしょう)
ホルモンバランスの異常や自律神経の異常などが原因で皮脂の分泌が過剰に行われてしまい、頭皮がベタベタになり毛根を塞いでしまったり、さらに毛根周辺や毛根内部での炎症が引き起こり髪の毛の脱毛が発症する症状です。
皮脂の過剰分泌の影響で常在菌が異常に増殖した結果、頭皮や毛根に炎症が起こり脱毛が起こります。この脱毛症は脱毛症全体の発祥割合の1%にも満たない稀な脱毛症です。脂漏性皮膚炎を起こしている人でも脱毛症にまで発展しない人が多く居ます。
思春期の時期や肥満傾向にある人に発生しやすく、大きな原因が精神的な要因によるホルモンや自律神経の乱れや運動不足や食生活の乱れによる皮脂の異常分泌などが原因になります。
原因を正しく把握して、適度な運動やストレスの発散などを行って症状を緩和させていきましょう。味の濃い食事や脂っこいもの、アルコール、タバコ、コーヒー、辛いものなどは控えて頭皮の環境を整えるビタミンB群を多く含む魚や野菜や脂質が少なくタンパク質の多い豚肉や鶏肉などを摂取して行きましょう。
脂漏性脱毛症に関する詳しい記述はこちらを参考にしてみてください。
・脂漏性脱毛症とは?原因や治療法、予防法を知ろう!食生活の見直しで防ぐことができる?
分娩後脱毛症(ぶんべんごだつもうしょう)
出産後からその後1年程の期間の間で見られる脱毛症のことです。女性特有の脱毛症になります。女性は妊娠中体内の女性ホルモンの値が100倍以上に膨れ上がります。これは、赤ちゃんをお腹の中で成長させるための正常な働きなのですが、女性ホルモンには髪の毛に対して成長期を長くして、ハリとコシのある健康な長い髪の毛を作る働きがあります。
出産後この女性ホルモンの値が正常に戻り、一気に女性ホルモンが下がることで髪の毛の成長期が止まり髪の毛が抜け落ちて髪の毛のボリュームが無くなります。
基本的にはこの脱毛は何もしなくても普段通りのバランスの取れた食事を取っていれば6ヶ月ほどで回復傾向に向かいます。しかし、この回復スピードには個人差があり脱毛などに大きなストレスを抱えているとさらに脱毛が引き起こったり、症状が長引いたりします。
この脱毛症の場合は出来れば抜け毛対策の治療などは行わず、自然な回復を待ったほうが良いでしょう。ステロイド剤や育毛剤などに手を伸ばしてしまうとさらに薄毛を気にしてしまって抜け毛がなかなか治らない事もあります。自然治療を目指しましょう。
分娩後脱毛症に関する詳しい脱毛症はこちらの記事を参考にしてみてください。
・産後に抜け毛が起こる原因は?いつからいつまで続くの?対策法やおすすめの髪型を紹介!
年齢別の脱毛症
脱毛症は年齢別に分けて呼ばれることもあります。上記の脱毛症とは違い、脱毛症が引き起こった年令によって分けられているだけで医学的に明確な原因や症状に特徴があるわけではありません。
基本的に脱毛症は原因がわかっていない物が多いです。なので、いくつかの脱毛症が複合して引き起こっていす場合もあります。年齢別の様々な脱毛症について紹介していきます。
若年性脱毛症(じゃくねんせいだつもうしょう)
若ハゲとも呼ばれる脱毛症で10代〜30代に抜け毛の症状が発症し、急激に薄毛が進行します。特に明確な疾患があるわけではなく、脱毛症の原因は様々です。
若くして薄毛になってしまう大きな原因としては遺伝による原因が大きくあります。男性のみではなく女性でも若年性脱毛症が引き起こる割合は近年増えてきています。
男女ともに若いうちからの薄毛対策や薄毛予防シャンプーや育毛剤などを使用する人が増えてきています。
若年性の脱毛症の原因は老化が原因にならないもので、ホルモンバランスの乱れや、AGAの脱毛症、ストレスによる影響、生活習慣の乱れなどが大きな原因となることが多いようです。
特に家系に薄毛の傾向がある人や、真面目な性格で責任感の強い人などに発症する事が多いでしょう。
壮年性脱毛症(そうねんせいだつもうしょう)
壮年性脱毛症は20代以降の働き盛りの時期に発生する脱毛症です。ハゲ方としてはM字ハゲや頭頂部からの薄毛などAGAの薄毛の症状とよく似ていることが多いでしょう。
この脱毛症も特定の症状などの疾患があるわけではありません。30代〜50代にかけて薄毛が発生する薄毛の事を壮年性脱毛症と言います。
大まかな原因は若年性の脱毛症と同じになります。遺伝、ストレス、生活習慣の乱れ、自律神経の乱れ、ホルモンバランスの乱れ、肥満、運動不足、頭皮環境の悪化などが原因で髪の毛のヘアサイクルが乱れてしまい抜け毛が多くなります。
治療でもAGAの治療と同様の方法で行うことが多いでしょう。壮年性の薄毛では仕事や家庭でのストレスや食生活の偏りなどが大きな原因に繋がりやすい傾向がありますので注意しましょう。
壮年性脱毛症に関する詳しい記述はこちらの記事を参考にしてみてください。
・壮年性脱毛症とは?どんな人がなりやすいの?原因や対策方法も知ろう!
老人性脱毛症
60代以上の人に見られる脱毛症のことです。同じくAGAに近い形で薄毛の症状が発症しますが、老人性の場合は主に細胞の老化が関係しての脱毛症が起こるもので明確に原因に違いがあります。
年齢を重ねることで細胞が老化し、同時に頭皮の毛母細胞内の働きも低下していきます。その細胞の老化により髪の毛の成長サイクルが乱れ、成長が鈍くなることで抜け毛や髪の毛の白髪化や髪質の低下などの症状が引き起こります。
AGAよりも治療が難しく、時間もかかりますし治療もより専門どの高いものが必要になります。老人性の脱毛症が気になる方は、若いうちからの食生活の意識や禁煙を行い過度な飲酒は控えるなどの対策による予防が必要でしょう。
乱れた食生活や、生活習慣では髪の毛の健康な成長は期待できないので薄毛になってしまう前からしっかり対策しておくことが重要でしょう。
まとめ
脱毛症は未だ原因や詳しいメカニズムが解明されていない症状がいくつもあります。また、それらの脱毛症に対して、髪の毛を新しく生やせる治療法もまだまだ発展段階です。
頭痛薬のような特効薬はまだ発見されていません。髪の毛を長く健康に生やせるためには、毎日の生活習慣と食生活などをきちんと管理し、ストレスを溜めず生活することが重要になります。特に髪の毛に送られる栄養や、頭皮の環境を良くするなどの身体のメンテナンス機能は優先度が低いので、かなりレベルの高い健康生活が必要になります。
ストレスにならない程度に健康習慣を見に付けて、脱毛症にならないようにいつまでも髪の毛を手に入れましょう。
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