現代医学は非常に進歩しており、今までは原因も何もわからない対処不能な病気と言われてきたものも、原因や治療法が解明しているものが次々と出てきております。その中でもとりわけやっかいな症状として扱われてきたのが自己免疫疾患です。
この自己免疫疾患になってしまうと脱毛症状が出てしまうため、髪の毛関連のトラブルを巻き起こしてしまうようになります。そこで、今回はこの自己免疫疾患について解説し、どうして脱毛トラブルが発生するのか、解決方法はあるのかを記載いたします。
目次
自己免疫疾患って何?
自己免疫疾患とはその名前の通り私たち人類に備わっている、ウイルスや細菌から身を守る自己免疫に及ぶ疾患です。自己免疫疾患になると私たち人間に備わっている自己免疫がまともに働かなくなってしまって、本来なら正常であって攻撃する必要も無いような細胞や組織に対して攻撃するようになってしまいます。
わかりやすく言えば、体内で自分の体で自分自身を攻撃する機能が働くようになってしまっていると思ってください。これはウイルスや細菌によって攻撃されているわけではありませんので、通常の抗生物質などはほとんど効果がありません。
アレルギーと似ている
考え方としてはアレルギーに似ているとすればわかりやすいでしょう。アレルギーも似たように免疫機能に異常が発生していることが原因なのです。花粉症やアトピーといったアレルギー疾患のもととなる花粉や埃といったものはアレルギー症状が特にない方にとっては無害ですが、アレルギーになっている方には非常に有害になります。
これは免疫力の異常が原因で、無駄に抗体が働くようになってしまい、これらの異物を有害物質ととらえることで起こる現象となっております。自己免疫疾患も免疫のシステムがなぜか正常に働かなくなってしまうことで発生するものなので、仕組み的には似ているのです。
原因は何か?
この自己免疫疾患の原因ははっきり言ってわかっておりません。もともと、20世紀の初頭には「免疫機能は自分自身を攻撃することはない」という説が有力だったのですが、そこから研究が進んで自分自身を抗原とする自己抗体が発見されたので、その時点で自己免疫疾患の存在が認められたのです。つまり、昔はこの病気そのものが知られていなかったと言うことになります。
自己抗体発見から研究は進んではいるのですが、ウイルスや細菌のように特定できるものは未だに見つかっておりません。ホルモンバランスの乱れが関係していると考えられてはいますが、それも確定情報では無く遺伝・生活環境・ストレス・何らかの病気など様々な説が唱えられております。
△リンパ球が減ると発症しやすい?
様々な説がありますので特定はできませんが、ほかには病気などになってしまって免疫力が低下している人ほど発症しやすいという説もあります。この考え方の根底にあるものは、病気などで弱っている体は免疫力が低下しており緊急出動したリンパ球の数も多くなりがちで、急いで生成された免疫は誤作動する可能性が高いのでは無いのかという説です。
ストレスが多いとなりやすい?
ストレスが多すぎる人は交感神経が優位になってしまうことでリンパ球が減少して顆粒球が増加し、白血球のマクロファージとリンパ球と顆粒球のバランスが乱されるようになります。このバランスが狂うようになると関節内で活性酸素を出して人体組織を攻撃するようになるという考えもあるのです。
間接内で活性酸素を出して組織破壊を行うようになるとリウマチなどの症状を引き起こすようになると考えられているのです。そのサイクルは以下の通りです。
交感神経が緊張状態ある⇒顆粒球が増加するようになる⇒関節内で活性酸素によって刺激を受けて自分自身を破壊する⇒炎症が発生するようになり関節が痛むようになる⇒ステロイド薬などに頼る⇒ステロイド薬でリンパ球などが抑制される⇒痛みは減るがリンパ球が減って免疫力が低下することで病気になるリスクや自己免疫疾患になるリスクが上がる。
このようなサイクルになると予想されているため、ストレスをため込んでいる人や体調不良が続いている人は注意した方がいいでしょう。
なりやすい人について
この自己免疫疾患になりやすい人は原因特定はできていないですが、法則がある程度見つかっているので注意喚起がなされております。それが女性です。ホルモンバランスの乱れによって発症する確率が高くなっておりますが、そのホルモンバランスの乱れが出やすいのは男性ホルモンよりも女性ホルモンなので、なりやすいと考えられております。
また、過剰なストレスを受けている人も発症する確率が高くなる傾向にありますので、注意してください。これにタバコを吸う人や生活習慣が乱れている人も追加されることが多いです。
そして、アトピーや花粉症などのアレルギー疾患がある人は、免疫異常がすでに発生している人たちなので、通常の人たちよりも免疫疾患が発生する確率が高いとも言われております。
どのような症状が出るのか
この自己免疫疾患には大きく分けて全身性自己免疫疾患と臓器特異的疾患の2種類があります。全身性自己免疫疾患は名前の通り、全身に症状が出るもので、関節リウマチ・シェーグレン症候群・成人スティル病全身性エリテマトーデス・多発性筋炎・皮膚筋炎等の病気が発症することがあるでしょう。
臓器特異的疾患は腎臓や肺などの臓器類や血液や神経等の一部の臓器で発症することになる疾患です。この疾患を発症すると原田病・自己免疫性肝炎・ギラン・バレー症候群・重症筋無力症・慢性円板状エリテマトーデスそして円形脱毛症になってしまいます。
それ以外にも尋常性白斑は自己免疫疾患が原因だと言われておりますし、バセドウ病や橋本病といった甲状腺機能低下症等の甲状腺疾患、多発性関節炎も自己免疫疾患の一種と考えられております。ちなみに膠原病は全身に出る自己免疫疾患の症状となります。
特定疾患が多い
このような種類があり、障害や病気を受けてしまった部位によって症状が異なるのですが、それが頭であった場合は円形脱毛症になってしまうのです。また、原因が様々で治療法を特定することも難しいことから、自己免疫疾患のほとんどが厚生労働省・難治性疾患克服事業による「特定疾患」に指定されているのです。
自己免疫性自律神経節障害になることも
自己免疫疾患になると自律神経系に反応して攻撃するようにもなるので、自律神経失調症のような症状が出ることもあります。具体的には失神・便秘・ドライアイ・ドライマウス・起立性低血圧などの症状が出るようになります。
円形脱毛症について詳しく解説
それでは自己免疫疾患のうちの臓器特異的疾患に該当する病気の一つである円形脱毛症について解説します。円形脱毛症はどのような病気か知っている人も多いでしょうが、どうして発症しているのか、仕組みはどうなっているのか、治るものなのかといった知識まで持ち合わせている人は少ないのです。
原因は何?
円形脱毛症も原因不明と長らくされてきましたが、現代医療においては髪の毛根組織にある免疫機能に異常が発生して抜け毛が加速する自己免疫疾患の一種であるという考え方が最も有力視されております。
この自己免疫疾患になってしまう原因については記載したように明らかになっておりませんが、遺伝性・ストレス・疲労・感染症などの様々な病気がトリガーになると言われております。
また、ストレス性の疾患を併発することもありますので、胃腸炎のように腸内環境に負担をかける様な病気の発症と同時に円形脱毛症になってしまうケースもあります。
検査方法は?
円形脱毛症の原因は多岐にわたるため、検査方法も問診や血液検査など色々とあります。つまり医師の経験による判断も重要になると言うことです。円形脱毛症と血液検査は関係ないと思われるかもしれませんが、病気が原因で円形脱毛症になっている場合は血液検査でわかることもあるのです。
円形脱毛症になるとどうなる?
円形脱毛症のメカニズムはウイルスや細菌から身を守るための免疫であるリンパ球系の一種のTリンパ球が毛根を攻撃するようになってしまって、炎症が発生し毛が生えてこないようになるというものです。免疫でのお話で考えるなら一度かかった病気にはかからないために働く獲得免疫のT細胞が毛根を攻撃するから発生すると言えるでしょう。
T細胞にも種類があります。それは攻撃を担当するキラーT細胞と攻撃を指揮するヘルパーT細胞です。このヘルパーT細胞の中には制御性T細胞と呼ばれるものがあり攻撃を制御するための仕組みとして働いております。この仕組みがおかしくなって攻撃するようになってしまうと考えられているのです。
円形脱毛症になるとそれらの免疫細胞が毛包周辺の毛乳頭にある毛根や毛母胎にダメージを与えるようになってしまうので一時的に一部分の抜け毛が多くなってしまいます。もともと人間には毛周期と呼ばれるサイクルがあるのですが、それとは関係なく円形状に抜けていってしまうのです。
円形脱毛症の種類について
円形脱毛症には実は種類があります。世間一般的に知られている10円ハゲと呼ばれる円形脱毛症は単発型のものです。この単発型は大きさもまちまちで大きなものでは500円サイズの脱毛班が1カ所にできます。この脱毛が信仰している場所は毛根が死にかけているので、非常に弱く引っ張るだけで簡単に抜けるようになるでしょう。
そしてここから悪化すると多発型になります。多発型は単発型の円形脱毛症があっちこっちにできるようになる現象です。人によっては数十カ所もできてしまうでしょう。1カ所ならまだ隠すこともできるでしょうが、多発型になると自前の髪の毛では隠すことは困難で、カツラやウィッグなどを用意する必要が出てきてしまいます。
人によっては単発型の後に蛇行型という帯状に蛇行する形で髪の毛が抜けている円形脱毛症になってしまう人もいます。後頭部や側頭部の生え際からゴッソリと抜けていくのですが、これも非常に目立つため隠すのは困難です。
ここからさらに悪化することで前頭型になります。これはまばらに脱毛が進行するのですが最終的には頭髪のすべてが抜け落ちてしまうという状況です。こうなると坊主頭以外の髪型を選ぶことはできないでしょう。
ちなみに、さらに悪化して凡発(はんばつ)型にまでいってしまうと髪の毛だけでは無く、眉毛やひげ、そしてすね毛といった全身の体毛が抜けていってしまうので、つるつるになってしまいます。
放置すれば治るのか?
自己免疫疾患の一種として考えられている円形脱毛症ですが、この円形脱毛症を起因してしまうのがストレスというケースも多いので、ストレスから離れることができれば自然と治まったというケースは非常に多いです。この場合は毛髪を増やすために育毛剤や発毛剤は不要ですし、専門家の知恵や治療も不要となります。
円形脱毛症でも単発型でそれほど大きなハゲになっていないという方は、ストレスから離れた生活をすることで放置すれば治るようになります。ただし、悪化して多発型や蛇行型になってしまった方は放置では治りません。
治療法はどうなっているのか
円形脱毛症の治療方法はいくつかありますので、まとめて紹介いたします。ただし、ストレスによるものだった場合は生活習慣の乱れをただして睡眠時間の確保や、しっかりとした栄養バランスの整った食事をするという薬や治療以外の努力も必要になると言うことを覚えておきましょう。
基本はステロイド剤を使ったステロイド治療
円形脱毛症が重傷かどうかを見極めるラインは日本皮膚科学会の診療ガイドラインによると、脱毛範囲が25%未満かそれ以上かというものでした。しかし、20%も抜けてしまっては大問題なのでそこまで悪化する前に病院での治療を受けるのが基本になります。
その方法は抗アレルギー作用や抗炎症作用のあるグリチルリチンやセファランチンなどを服用するというものもありますが、それよりも免疫細胞の働きを抑えるステロイド外用薬を患部に塗るか注射を行うという方法が一般的です。
進行型の円形脱毛症ではステロイド注射を局所的に行うのが効果的ではありますが、痛みがかなりありますし、注射をした場所にしか効果が出ないというデメリットや注射を行った部分がへこんでしまうと言う副作用が出てしまうケースがあります。
入院してのステロイド治療
また、短期間で最大限の効率を得たいという場合は3日間ほど大量のステロイドを点滴によって体に投与するというやり方もあります。量がかなり多いので、免疫力が極端に下がり入院しながらの治療となってしまうでしょう。それでも短期間の投与ですので副作用の心配も無くかなり効果があると言われております。
それ以外にはステロイド注射やステロイドを塗るという方法では無く、ステロイドを内服するという方法もあります。これは副作用のことを考えると長くても2~3ヶ月程度しか実行できませんが、円形脱毛症の進行がかなり早い場合はこの治療法を使うこともあるようです。
そのほかの治療法について
それ以外の治療法はかぶれを起こしやすい特殊な薬品を使って人工的にかぶれを発生させることで頭皮を刺激して別のTリンパ球を呼ぶことで自己免疫疾患となっているTリンパ球を薄れさせるという方法もあります。これはかゆくなるのでかゆみに耐える必要はありますが、ステロイド注射と比べると痛みは無いのでやりやすいと言えるでしょう。
ただし、人工的に皮膚に軽い炎症を起こさせる治療法になりますので、その炎症が強く出てしまう人には合いません。炎症が強すぎるとアナフィラキシーショックのような副作用が起きる可能性がありますので、医師とよく相談してください。
あとは、患部に紫外線を当てる紫外線治療ことで自己免疫反応を抑え込むというやり方もありますが時間がかかってしまうという欠点があります。人にもよりますが半年くらい続けないとこともあるようです。
液体窒素療法やドライアイス圧低療法のように患部に刺激を与えることで円形脱毛症を治すというやり方もありますがどれが一番効果的なのかは自分自身の症状にあわせつつ、診断をしてくれた医師に相談するのがベストでしょう。
予防はできるのか?
自己免疫疾患の一種である円形脱毛症は原因が明確では無いので、はっきりとした対策を立てることはできません。それでも、体の栄養状態を整えるとかストレスを減らすという対策を練ることはできます。原因ははっきりしていなくても、体が弱っていたり栄養バランスが悪い人というのは発症するリスクが高いということは覚えておきましょう。
アレルギー症状を抑える
円形脱毛症はアレルギー症状が強く出ている人たちのほうが発症確率が高くなると考えられております。そのため、アレルギー症状を抑えられるような生活をすることが対策となるでしょう。頭皮だってシャンプーなどの整髪料がアレルギー反応を引き起こしている可能性がありますので、あえて低刺激のものに切り替えるというのも有効な手です。
アトピー性皮膚炎は肌のバリア機能が低下することで発生すると言われておりますが、その要因は紫外線・ストレス・摩擦・ハウスダスト・保湿不足・不衛生な環境などいろんなものがありますので、それらを一つずつ対処していくしか無いでしょう。アレルギー薬に頼るのもいいですが、まずはほかの部分も見直してください。
食生活も整えること
アレルギー症状を抑えたいと考えるのなら、オメガ3必須脂肪酸の摂取量を増やすようにしてください。油にはオメガ3とオメガ6とオメガ9が存在するのですが、現代日本ではオメガ6に該当する紅花油・コーン油・オリーブ油・菜種油などから大量に摂取される傾向にあり、アレルギーを悪化させていると考えられております。
もちろん、これらオメガ6の油も必須脂肪酸と呼ばれておりますが、オメガ3とのバランスである1:2~1:4を守れないならば量を控える必要があるのです。現代日本ではこの比率がひどい人では1:50程度になっていると言われております。
そのため、アトピーなどのアレルギー症状を抑えたいと考えている人はオメガ3が入った食品を摂取する必要があり、逆にオメガ6が入った食品は避けるようにした方がいいでしょう。
このオメガ3は入っているものがかなり特殊で、油脂類である亜麻仁油・えごま油・麻の実油・チアシード油・キウイフルーツ種子油・魚の油等に含まれておりほかにはクルミやきなこ、豆味噌等にも含まれております。人によっては全く摂取しないで生活していたのではないでしょうか。
ストレスを解消させる
ストレスが溜まれば溜まるほど円形脱毛症になる確率は上がります。そのため、円形脱毛症を避けたいと考えている人はストレスを選らす必要があるのです。しかし、社会人では人間関係や仕事の都合上ストレスが天井知らずに上昇するので、体を動かすような趣味を持っていた方がいいでしょう。
体を動かすのが大っ嫌いという人でも、ストレス発散ができるような趣味を持っていた方がいいです。ただし、あまりに疲れていると趣味をすることすら面倒くさいと考えるようになりますので、休憩をすることも忘れないでください。
自己免疫疾患による脱毛は円形脱毛症である
自己免疫疾患は原因の特定ができないため、円形脱毛症も原因の特定は未だできておりません。それでも多くの方々が発症しているため、経験則による情報の蓄積からある程度の予測が医師側でもたてられるようになっているのです。
また、それらの経験則から100%の予防というわけでは無くても、防げる確率が上がる方法がそろっているので円形脱毛症にならないように、しっかりと予防法を実行して発症しないようにしましょう。
関連記事としてこちらの生地も合わせて参考にしてみてください。
・ハゲの予防に重要な6つの要素について。M字ハゲやつむじハゲを予防する方法を知ろう!
・つむじハゲの初期症状を紹介!早期対策でつむじハゲの進行を食い止めよう【原因と対策法】