全頭脱毛症ってどんな病気?症状や原因と治療方法を知ろう!

一般的に脱毛症になっている方はおよそ人口の1~2%との推測があります。この計算によると日本では約160万人以上が脱毛症で悩んでいるということになります。

このように脱毛症はそれだけ一般的な現象であり、様々な症状がありますが、その中でも全頭脱毛症とは、文字通り、頭髪が全て抜けてしまう症状です。

どうして全ての毛が脱けてしまうのでしょうか。

今回は全頭脱毛の症状や対策、治療法などについて見て行きます。

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全頭脱毛は難治性の病気

全頭脱毛1(銅像)

全頭脱毛症は難治性の病気と言われることがあります。

しかし、ある日を境に急に全ての毛がごっそり脱毛してしまう、というわけではありません。

どこか一部分が円形脱毛になって、それから抜け毛が徐々に進行していき、最終的に全ての毛が脱毛するというのが代表的なパターンです。

それぞれの段階の症状に則して言うと、単発脱毛症→多発型脱毛症→全頭脱毛症となります。

それでは各段階の症状について順を追って見て行きましょう。

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脱毛症の症状

全脱毛3(考える男性)

脱毛症で代表的なのは円形脱毛症です。

遺伝的な要因だけではなく、生活習慣やストレスなど一般的な要因で誰にでも発生する可能性があるものです。

単発脱毛症

いわゆる10円ハゲと言われるような比較的軽い脱毛症です。

男児年齢でいえば小学生や未就学時であっても発症事例があり、年齢に関係なく発症するのが特長です。

それまで髪がふさふさだった方でも、ある日突然、小さな円形になった頭皮を発見して気がつく、ということはよくあることです。

発見後によく見ると、さらに小さなハゲが2、3見つかるということも多いです。

特に前兆もなしに発症することも多く、また治る際にも特別な治療をしなくても気がついたら治っていた、というケースも多く見られます。

単発型であればあまり深刻になる必要はなく、一時的なストレスなどによる場合、原因となっている原因が解消すると同時に治ることが多いようです。

しかし、重症化すると次に紹介する多発型円形脱毛症に発展することがあるので慎重に経過を見る必要がある場合もあるので要注意です。

多発型脱毛症

単発の脱毛症が進行していく内に別の脱毛症が発生するパターンです。

単発型円形脱毛症は、数カ所脱毛症が発症して、いつの間にか治っていることが多いものですが、多発型脱毛症の場合はそれが何度も繰り返されます。

このため、常に頭のどこかに円形脱毛症が発生しているような症状になります。

気がつけば治っている単発型よりも完治に時間がかかるのはもちろんですが、いったん治ったと思っても、再度症状が現れることがあるという点が非常に厄介です。

単発型脱毛症から多発型脱毛症に移行する理由はケースバイケースですが、少なくとも単発型円形脱毛症に比べると例えば重いストレスがかかっていることが多いようです。

それによって精神的だけでなく肉体的にも強いダメージを受けたことが影響しているものと考えられています。

多発性の一種、蛇行性円形脱毛症

多発型脱毛症の一種に蛇行性円形脱毛症があります。

複数の円形脱毛症が広がってつながり、名前の通り蛇が這うような形で脱毛していく症状です。

通常の単発型や多発型の脱毛症と異なって、脱毛している範囲が広く、さらに通常は脱毛しづらいと言われている側頭部や後頭部にも脱毛が広がり全体でまだらになっているような状態になります。

多発性続発から全頭脱毛症に

これまで述べてきたとおり、朝起きたら全ての毛が抜けていた、というような形で全頭脱毛症が起こることはありません。

単発型円形脱毛症から多発型脱毛症に移行し、そのさらに延長線上にあるのが全頭脱毛症です。

よって、なんらかの前兆があり、それをそのまま処置せずにいたことが全頭脱毛症に発展したというパターンが多いものと考えられています。

全身の毛が脱毛する汎発性脱毛症も

全頭脱毛症がさらに進んだ場合、髪の毛だけではなく全身の毛が脱毛する汎発性脱毛症へと発展する場合もあります。

汎発性脱毛症は難治性の高い病気と言われており、原因もはっきりしておらずしたがって治療法も確立していません。

AGAやびまん性脱毛症との違い

脱毛症には様々なタイプがありますが、有名なものにはAGA(男性型脱毛症)やびまん性脱毛症があります。

発症する性別や年齢の違い

円形脱毛症が性別・年齢に関係なく発症するのに対し、これらはそれぞれ発症する性別や年齢に特長があります。

いずれもホルモンバランスの影響により発症するものなので円形脱毛症とは治療法が異なります。

AGAが発症する男性年齢

多くの人で30歳前後にAGAの徴候があらわれるようです。

仕事や家庭の面で変化が大きい年代のため、ストレスや不規則な食生活など生活習慣の乱れなどの影響が大きいと考えられています。

はえぎわから脱毛が広がっていくところが円形脱毛症とは異なります。

AGAに関する詳しい記述はAGAとは?特徴や原因を知ろう!治療するには薬が効果的なの?を御覧ください。

びまん性脱毛症が発症する女性年齢

以前は更年期(おおむね45~55歳)の女性に多いタイプとされていましたが、近年は様々な理由で20~30代の女性にも多くみられるようになりました。
また、妊娠や出産後のホルモンバランスの一時的な変化でも同様の症状が発症することがあります。

円形脱毛症のようにどこか一部分から脱毛が始まって拡大していくのではなく、頭髪全体がだんだんと薄くなるものです。

びまん性脱毛症に関する詳しい記述はびまん性脱毛症の症状と原因を紹介!治療方法と食事による予防とヘアケア方法を知ろう!を御覧ください。

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脱毛症は自己免疫疾患

全頭脱毛2悩み

円形脱毛症にかかっている患者の遺伝子を詳細に調べた結果、脱毛が起こる原因の一つが毛根を標的にした自己免疫疾患であることがわかっています。

免疫は本来、体外から進入でてきた異物を排除するためのシステムです。

自己免疫疾患とは、本来、体を守るはず免疫に異常が発生し、正常な細胞も攻撃してダメージを与えてしまう病気です。

リンパ球が毛根を攻撃

円形脱毛症の毛根を調べたところ、毛根の回りにリンパ球が集まっていました。

リンパ球は免疫であり、体外からの異物の進入に反応して集合し対抗するというシステムになっています。

例えば皮膚が炎症を起こした場合には、火災の際の消防車のようにリンパ球が部位に集まり、炎症を鎮める働きを果たします。

リンパ球の誤作動で発毛が阻害

円形脱毛症の場合は、なんらかの理由でリンパ球がいわば誤作動を起こして毛根に集まり、外敵と思い込んで毛根を攻撃してしまうことが原因と考えられています。

その結果、毛根がダメージを受け、髪の毛の成長が止まって円形脱毛症となって表れるのです。

よってリンパ球の攻撃を抑制することができれば脱毛症を改善できる可能性があるものです。

アトピーが脱毛症に関係?

実は円形脱毛症にはアトピーとも関係があると言われています。

円形脱毛症になった人の内、実に4割以上がアトピー要因を持っているといわれているのです。

アトピー要因とは、血縁関係のある家族などにアトピー性皮膚炎の人がいるなど、アトピー性皮膚炎になりやすい性質のことをいいます。

実際にアトピー性皮膚炎と円形脱毛症が併発する場合もあり、この場合はアトピー性脱毛症と言われています。

アトピー性皮膚炎も自己免疫疾患の一つであり、同じくストレスが誘因になるなど、脱毛症との共通項は多いです。

円形脱毛症に関する詳しい情報は円形脱毛症の原因を知ろう!ストレスが原因は間違い?治療法と再発防止策について!を御覧ください。

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脱毛症の原因

全頭脱毛ストレス

脱毛症が自己免疫疾患だとしたら、それを引き起こす原因は何なのでしょうか。

脱毛症の原因としてはストレスがよく挙げられます。

ストレスが原因?

肉体的、精神的にストレスがかかると副腎皮質ホルモンが分泌されます。

副腎皮質ホルモンとは、腎臓近くの副臓という臓器の外側の皮質で作られています。

副腎皮質ホルモンには抗炎症作用や免疫抑制作用の他に抗ストレス作用があります。

ストレスを受けたときに副腎皮質ホルモンが分泌され、ストレスがなくなれば副腎皮質ホルモンの分泌が止まります。

しかし、常にストレスを感じる状態では副腎皮質ホルモンの分泌が止まらないことになります。

そうなると常に副腎が稼動している状態になり、疲労から副腎皮質ホルモンの分泌がされなくなります。

副腎皮質ホルモンの免疫抑制作用を抑える効果がなくなることで、免疫力が異常行動を起こすものと考えられています。

ただし、これも一説に過ぎず、免疫異常が起こる明確な原因は解明されていないのが現状です。

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全頭脱毛症の治療法

全頭脱毛 治療

一度全頭脱毛症になってしまうと治療が難しいのは事実ですが、一方で全頭脱毛症といえども円形脱毛症の延長線上にあると考えれば、あきらめてしまうのは早計です。

早期の治療開始が重要

まず、円形脱毛症を発見した際にはできるかぎり早く治療を開始することが重要です。
放置してそのまま治癒することはありますが、そのまま全頭脱毛へと進行してしまう可能性もあります。

一部の大学病院では皮膚病の一種として脱毛専門外来も

脱毛症になった場合、まずはどこに相談すれば良いのでしょうか。

専門のクリニックもありますが、皮膚病の一環として順天堂大学などの大学病院でも脱毛専門外来を設置しているところもあります。

脱毛症の治療法

日本皮膚科学会では円形脱毛症診療ガイドラインを作成してます。

そこで各治療法についてランク付けがなされており、このランク付けから代表的な治療法としてはステロイド関係及び局所免疫療法だと言えるでしょう。

推薦度Bランク(勧められる)

・ステロイド局所注射

・局所免疫療法

推薦度Cランク(行っても良い)

・ステロイド内服薬

・ステロイド塗布用薬

ステロイド療法

副腎皮質ホルモンの免疫抑制作用を抑える効果がなくなることで、免疫力が異常行動を起こすことは先に述べたとおりです。

ステロイドは副腎皮質ホルモンを人工的に作ったもので内服薬や塗布薬、局所注射といった形で使用されます。

体内で分泌されなくなった副腎皮質ホルモンを体外から補充することで免疫力の異常行動を抑えるという考え方です。

子供へのステロイド投与は禁止

副作用が強いことから、年少者の場合には成長障害を引き起こすこともあるので使用できず、成人患者の治療に使用は限定されています。

なお、一方で、ステロイドは免疫を抑える働きをするため、本来免疫が担うはずのウイルスへの対抗力が弱くなり、感染症にかかりやすくなることがあります。

そのため、例えば数ヶ月服用療法を行って、一時中断した後に再度脱毛が発症したような場合には継続は困難です。

ステロイド局所注射

円形脱毛症診療ガイドラインにおいて信頼度が高く、一定の効果が認められる方法とされているのがステロイド局所注射法です。

一定レベル以上の重症患者へのケアとして採用されており、単発型や多発型の両方に使えるとされています。

抜け毛が目立つ箇所にステロイド薬を注射する治療法ですが、注射時に強い痛みを伴うこと、注射した範囲しか効力がないなどのデメリットもあります。

局所注射を長く続けることにより糖尿病や高血圧など他の病気を招く可能性もあり、特に持病を持っている方の場合は実施にあたり非常に慎重になる必要があるものです。

また、脱毛が広範囲に進んでいると必然的に注射回数や投薬量が多くなり、副作用の点から他の選択肢も考慮したうえでの判断が必要になります。

ステロイド塗布薬

単発型の円形脱毛症など狭い範囲の発症にはステロイド塗布薬を使用した治療を行います。

ステロイドには皮膚の細胞増生も抑制してしまう効果もあります。

適切な範囲内で使用する分には問題ないのですが、最低限必要な分よりも強い薬を長く使っていると皮膚細胞が増えにくくなり皮膚が薄くなることがあります。

また皮膚表面の免疫の働きを抑制することから、感染症にもかかりやすなるなどの副作用も報告されています。

ステロイド内服薬

脱毛が広範囲に及ぶ場合については、ステロイドを内服することでそれまでの治療で効果が薄かった時にも急速な治癒効果が見られることがあります。

効果が強いことから、ステロイド内服薬を使用する場合は少量の服用から開始します。

目に見えるような成果がすぐには出ないことがありますが、自己判断で服用する量や飲む回数を増やすことは厳禁です。

医師の指導にしたがって規定の量を決まった時間に服用していき、徐々に適した量を見つけていくことが大事です。

もし大量に服用した場合は身体へのダメージも大きくなり、脱毛症以外の副作用が発生するリスクがあります。

一方で、症状が改善したからといって薬の服用を止めてしまうと、体内のステロイド量が不足することで症状が再発しやすくなります。

こんな時には治療中止を

例えば、女性では顔が丸く腫れ上がってしまう症状が表れることがあり、そうなってしまうとウィッグなどでカバーできる脱毛の方がまだましだった、ということにもなりかねません。

さらに食欲を増進する作用もあることから、肥満に悩まされることも想定されます。

このように見た目に関わる副作用が多いことが注意点です。

こういったリスクも勘案して脱毛面積が25%未満であれば使用を勧めないのが一般的であり、ステロイド内服をする時には強い薬であることを意識して、医師の指示通りに使うことが重要です。

局所免疫療法(SADBE治療)

脱毛が広範囲に渡り、半年以上も継続している場合には、局所免疫療法を行うことになります。

局所免疫療法とはかぶれ治療

局所免疫療法は、人工的に「かぶれ」を起こさせる特殊な薬品を脱毛部に塗って、皮膚炎を繰り返し起こさせる治療法です。

SADBE(squaric acid dibutylester)という刺激性を持つ化学物質を頭皮に塗り、かぶれを起こさせることで、いわば毛根を攻撃するリンパ球を別の場所におびきだすものです。

日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインでも有効な円形脱毛症の治療法とカテゴライズされており、これまでの治療法で治らなかった症状にも効用があると言われています。

またステロイド治療が施せなかった年少者にも治療を行うことが可能とされています。

保険適用がなく自費治療に

ただし、効果は治療中に限定されることから、中止するとまた脱毛して何度も治療を繰り返す可能性もあります。

なお、使用される薬品は研究試薬のため健康保険の適用が認められていまないことから多額の治療費がかかることになります。

また、副作用もあり、SADBEを塗る濃度が濃すぎると、かぶれがひどくなり、一方で場合も濃度が薄いとかぶれが起こらず、治療にならないなど、薬品の濃度や塗り方にも方法があるので、自宅治療ではなく専門医にゆだねるべき治療法です。

また、リンパ球の暴走は円形脱毛症の原因の一つであって、別の原因から脱毛している場合には当然効果がないものです。

漢方治療と鍼灸治療

ステロイド治療にせよ局所免疫治療にせよ副作用の危険性は避けられないことから、漢方や鍼灸による治療も注目されています。

漢方治療

漢方とは西洋医学に対する東洋医学、中国伝統医学のことです。

どこか悪いところがあれば薬や手術などで除去するなど外的な処理で原因を取り除き治療する西洋医学療法と異なり、体の中の治癒能力を高めて悪い部分を治癒していくことが特長です。

脱毛症治療でいえば、漢方により内蔵の働きを補助し、体内環境を整えることにより改善を図ります。

また、漢方薬には血液を補給するための成分や頭皮環境の悪化の原因となる湿気や熱を取り除く成分、亜鉛やカルシウムといった育毛に必要な成分などが含まれていることに加え、コラーゲンのように髪の健康を保つ成分などの育毛を促進するような薬が多いことも特長です。

ステロイド等の西洋医学的手法に比べて治療期間は長くなる傾向があり、数ヶ月〜数年を見る必要があります。

なお、漢方薬についてはそれぞれ個人の体質にあわせて処方されることから、必ず専門医に処方してもらいましょう。

実際の効果については未確定な部分があることから、日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインでは推薦度C2ランク(現時点では推奨できない)とされています。

針治療とお灸治療の効果

鍼灸とはご存知のとおり針やお灸を使って身体に刺激を与えることで、健康増進を可能とする医療技術です。

東洋医学では髪の毛は体内の血液が余ったもので作られている(これを「血余」といいます。)と考えられています。

つまり頭部だけではなく身体全体の機能改善を図る考え方から東洋医学的診断に基づき、全身的な施術を行うことが多いようです。

ただし、漢方と同様に治療に明確な関係性が証明できないため、日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインでは漢方よりも低い推薦度Dランク(行うべきではない)とされています。

波動療法、自律神経免疫療法及びエネルギー療法

日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインでランク付けされているもの以外の脱毛治療方法として、波動療法や自律神経免疫療法及びエネルギー療法があります。

いずれも治療効果は臨床的に証明されておらず、学術論文として症例もないため、実際の脱毛治療への効果等は不明です。

かつら(ウィッグ)の使用

一部が脱毛している場合は、髪型などでカバーすることもできます。

それが難しい全頭脱毛の場合にはかつら(ウィッグ)で補うなどして、精神的なストレスをやわらげることも大事です。

男性、女性問わず就活や婚活中など他人からの視線をどうしても意識せざるを得ない状況の場合には、即効性があるウィッグの利用をお勧めします。

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まとめ

全頭脱毛 まとめ

いかがでしたでしょうか。

本文中でも取り上げた円形脱毛症治療ガイドラインでもAランク、つまりこれをやれば必ず治る、といった治療法はみつかっていないのが現状です。

特に全頭脱毛症は非常に治りにくい病気とも言われています。

しかしあきらめるのではなく、自分の身体にあった治療法を、時間をかけてみつけていくことが大事です。

治療方によっては、身体に大きなダメージを与えるものもあることから、治療に当たっては必ず医師などの専門家に相談の上、意見を聞くようにしましょう。

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