整髪料はスタイリング剤ともいわれ、使う人のほとんどがほぼ毎日使う、使用頻度の多いヘアケアグッズです。
まさかそう考えている人はいないと思いますが、一般の整髪料には育毛効果はありません。文字どおりヘアスタイルを整えることが目的で、育毛効果どころか、整髪料を使うとハゲるとさえいわれます。
本当に整髪料がハゲの原因になるなら、それは大問題です。そこで、整髪料、とくにワックスに焦点をあててハゲとの関係を調べてみようと思います。
目次
整髪料の種類と特徴
整髪料は、目指す髪型や髪の質感、髪の毛につけたときの感触などで選びます。そして、できれば薄毛や抜け毛、ハゲにいいものを選びたいものです。
ところが、いざ購入するとなると店頭に並んでいる整髪料の多さに圧倒され、選びきれないという人も多いのではないでしょうか。ここで、整髪料の種類と特徴を整理しておきましょう。
ヘアスタイルに適した整髪料を選ぶ
ヘアスタイルにはそれぞれ適した整髪料があり、髪の毛の質によっても適した整髪料は違います。
以下に、整髪料の種類分けをして簡単な特徴を添えます。整髪料を選ぶときの参考にしてください。
ヘアムース
水とアルコールを合わせてエマルジョンタイプにしたものを、界面活性剤で泡状にしてあります。噴射して出てくる泡を、髪の毛に塗ります。ヘアフォームともいわれます。
ヘアミスト
ヘアウォーターともいわれ、保湿が目的の髪の毛専用の化粧水です。寝グセを直したり、髪にツヤを与えることが目的です。ほかの整髪料を使う際に下地として使うこともあります。
保湿だけしたければ、髪の毛に吹きかけるだけです。ブロー剤として使うときは、髪の毛全体に吹きかけてしっとり湿らせてからドライヤーでブローします。髪の毛にツヤが出て、きれいにまとまるので女性にはブロー剤としても人気があります。
ヘアクリーム
髪の毛に水分と油分を補給し、コンディショニング効果を与えます。
ヘアジェル
粘着性のある液体、つまりゼリー状です。高いセット力でヘアスタイルをしっかり固め、ジェルを洗い流すまで髪形は固まったままです。髪の毛にツヤをプラスするのも特徴です。
ヘアオイル
油が主成分で、ポマード、グリース、チックとも呼ばれます。髪の毛に油分を補い、ツヤと柔軟性を与えます。
シア油、ツバキ油などの植物オイルが主成分の場合はさっぱりした使い心地で、主成分となっている植物のビタミンやミネラル、抗酸化物質なども含まれることがメリットです。
鉱物油(ミネラルオイル)が主成分のものは、エステル油やスクワランが適宜配合されます。酸化しにくく、アレルギー反応を起こしにくいことが特徴です。
ヘアリキッド/ヘアトニック
ある化粧品メーカーによる造語で、主に男性用整髪料をさします。さらっとした使用感と柔軟性のある仕上がりが特徴です。
ヘアリキッドと混同されやすいヘアトニックは、整髪ではなく頭皮のコンディションを整えることが目的です。
ヘアスプレー
整髪成分やオイル成分をアルコールに溶解し、LPGなどの噴射剤を使って吹きかけるエアゾールタイプの整髪料です。アルコール基材なので速乾性があり、これが第一の特徴です。
ワックスなどの整髪料で整えた後に、ヘアセットのキープ目的に使われます。ナチュラルタイプ、ハードタイプ、アレンジタイプ、グロスタイプなどがあり、スタイリングスプレーともいわれます。
ヘアローション
水、アルコール、ポリマー(コーティング)剤が主成分です。指でウェーブをつくり、それをキープするために吹きつけます。
ヘアワックス
油性成分を加湿溶解し、固形にしたものです。多くのタイプがあって、それぞれに整髪力や仕上がりに特徴があります。ワックスは、ほかの整髪料より、頭皮に負担をかけない使い方ができるといえるかもしれません。
ワックスについては、もう少し詳しく後述します。
整髪料の成分の特徴とデメリット
整髪料の、水以外の主な成分は、シリコンオイル、合成界面活性剤、アルコール、油、紫外線吸収剤や酸化防止剤などです。クリーム、ジェル、泡などの形状の違いがあっても、構成成分はほとんど同じといっていいでしょう。
これらの成分と、その使用目的やデメリットを説明します。
シリコンオイルの特徴とデメリット
シリコンは、シャンプー剤などのヘアケア剤の成分としておなじみです。整髪料や化粧品にはシリコンオイルで配合され、成分名は「〇〇メチコン」などの表記になっています。
シリコンオイルは、髪の毛や肌の表面に膜をつくります。このシリコンオイルのコーティング作用で髪の毛は守られ、キューティクルが剥がれたり、切れ毛などの予防ができます。
シリコンは髪の毛にとって悪者扱いされがちです。それは、ヘアケア剤を使ったときシリコンが頭皮に付着し、強いコーティング力で毛穴をふさいでしまうことがあるからです。
シリコンが肌に付着すると、濃度によっては、水やお湯では簡単に落とせません。完全に洗い流すには、メイク落とし用のクレンジング剤のような強力な洗浄力が必要です。
また日本では、家庭排水に含まれる油などの有機物は、下水処理場で微生物によって分解されて河川に流されます。ですが、シリコンは微生物では分解できず、家庭から排出されると、水で薄まるだけで河川へ流れされます。
このように、髪の毛や頭皮に残留しやすいうえに洗浄しにくく、環境への負担も大きいということが、シリコンが嫌われる理由です。
界面活性剤の特徴とデメリット
界面活性剤には、天然と合成界面活性剤があります。
その中で天然由来系界面活性剤といわれるのは、天然素材、石けん系、脂肪酸エステル系、アミノ酸系、高級アルコール系の一部で、それ以外の高級アルコール系が石油系界面活性剤といわれます。
また、水に溶けたときのイオンの種類で、陰イオン性界面活性剤(アニオン界面活性剤)、陽イオン性界面活性剤(カチオン界面活性剤)、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)に分類され、それぞれの乳化力や泡立ちなどの性質で用途が決められます。
界面活性剤は、性質の違う2つのもの(例えば水と油)の境界線に吸着して2つを混ぜ合わせます。この性質が、さまざまな製品の乳化や可溶化、起泡(泡をつくる)などに利用され、整髪料やヘアケア剤にも欠かせない成分となっているのです。
一方、界面活性剤にはたんぱく質を変質させるという性質もあります。
皮膚や髪の毛はたんぱく質でできていますから、界面活性剤が付着すると変化が起きることがあります。ほとんどの場合は自然に修復されるのですが、もともと肌が弱い、その界面活性剤と相性がよくないなど、条件によっては修復できず、もとに戻らないこともあります。
アルコール成分の特徴とデメリット
整髪料には、各種の配合成分を溶かして合わせるためにアルコールが使われます。
アルコールには水分を蒸発させる性質があり、それを利用しているのがスプレータイプの整髪料の速乾性と、ヘアトニックのスーッとする清涼感です。
ただし、アルコールの速乾効果は頭皮や髪の毛も乾燥させ、フケやかゆみ、枝毛や切れ毛の原因になることもあります。
油成分の特徴とデメリット
整髪料に配合させる油は、主に植物油、動物油、鉱物油の3種です。
植物油は植物由来の油で、配合されたときにその植物に含まれている栄養成分も含まれるのがメリットです。
動物油は、スクワランというサメの油などから抽出された油です。 これが成分として配合されているとたいへん高価になります。
整髪料ほか化粧品などに配合される油は、8割近くが鉱物油といっていいでしょう。
鉱物油は、石油からプラスチックなどの工業製品をつくった後に出る廃油からつくられます。脱色して、精製して不純物を取り除き、無味無臭にした高純度の油です。
現代の鉱物油は非常に高い精製技術でつくられ、長期間劣化しない安定した油です。鉱物油という名称がつけられているのは、分類学上、石油が鉱物とされているためです。
鉱物油は皮膚の内部に浸透せず、皮膚の表面に膜をつくります。外部刺激から皮膚を保護するという目的からみれば、安全性の高い、信頼できる素材といえます。
しかし、鉱物油が配合されている整髪料が頭皮に付着したら、洗い落とすまで鉱物油が頭皮についたままです。これが、毛穴をふさぎ、詰まらせ、髪の毛の成長を阻みます。
洗浄しにくいのも鉱物油の特徴で、洗い流すには強い洗浄力が必要です。不完全な洗浄で、油分が頭皮に残っていると毛穴をふさいでしまいます。
成分表記では「鉱物油」とは記載されません。「ミネラルオイル」と記載されます。また、パラフィン、ワセリンなども鉱物油です。
紫外線吸収剤や酸化防止剤の特徴とデメリット
化学的に吸収したエネルギーを熱などに変換し、紫外線が皮膚に浸透するのを防ぐのが紫外線吸収剤です。有機化合物なので、肌のタイプによっては刺激を感じることがあるようです。
日本で化粧品に使用されているのは主に、t−ブチルメトキシジベンジイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オキシベンゾン−3です。
紫外線吸収剤は、紫外線を浴びるている間は絶え間なく化学変化を起こしています。時間の経過とともに壊れる分子もあり、壊れたら紫外線吸収剤としての機能はなくなります。この壊れた分子の安全性や、環境への負荷が心配されています。
酸化防止剤として使われているのは食品添加物の、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やジブチルヒドロキシアニソール(BHA)です。
危険であるとされるのは、整髪料などに配合される量の数万倍も摂取した場合です。整髪料などに使用される量なら問題はないでしょう。ただ、気になるなら成分表記で確かめ、使用しないという選択もできます。
ワックスを正しく使ってハゲを予防
整髪料の成分が地肌に付着したり、シャンプーの際にすすぎ不足で洗い残しがあると、薄毛やハゲにつながる恐れがあります。
薄毛やハゲの予防のため、整髪料の種類とセット方法を見直しましょう。
使用量が多くなりがちで地肌にも付着しがちな、クリーム系、ジェル系、ムースなどより、ワックスを上手に使うことをおすすめします。
ワックスのタイプと特徴
ワックスは大きく分けるとライトとハードの2タイプがあり、ライトは適度な毛束感と軽くクセづけをし、ハードはシャープな毛束を長時間キープしてツヤ感を出します。
そしてさらに、以下のようなタイプに分けられます。
・ファイバー
繊維が含まれていてよく伸び、毛束をつくるのに向いています。ツヤ感も出て、セットしやすいのが特徴です。つけすぎるとボリュームが出にくくなります。ファイバー系はとくに、使用量には要注意です。
・クレイ
軟毛や細毛などでセットがなかなか決まらない髪質でも、ふんわりさせたり、動きのあるスタイルにできます。セット力やキープ力がありますが、ツヤはなく、伸びもよくすありません。ショートヘアにも向きます。マット系ワックス、ドライ系ワックスも同じタイプです。
・クリーム
ツヤ感、伸び具合、つけたときの質感などほどよい感じで、スタンダードタイプのワックスといえます。使い勝手がよく、ワックスに慣れていない人でも扱いやすいでしょう。
・ジェル
濡ているような質感を出し、髪の毛をパリッとした感じにキープします。ボリューム感を抑えるので、広がりやすい髪質に向いています。
ドライまたはウェット、どちらの髪にも使用できます。シャンプー後、タオルドライしてすぐにスタイリングできるので、時短の意味でもおすすめできます。
・ムース
泡タイプで、水分を多く含んでいます。ウェーブをつくりやすく、クセ毛のコントロールもしやすいワックスです。
髪の毛に水分が残っているとスタイリングしにくくなります。このタイプは、髪の毛が乾いている状態で使います。
・スプレー
スプレーで吹きかけて、乾くまでの間にスタイリングをします。スタイリングはワックスで、スタイルキープはスプレーで、と2つの特徴を使えるタイプです。
・グリース
ツヤとウェット感が出るところはジェルタイプと似ていますが、ジェルタイプほど髪の毛をパリッとホールドする感じはありません。ポマードも同タイプです。
・パウダー
粉状でノンオイルです。ほかのタイプのワックスのほとんどが、髪の毛を固めてスタイリングしますが、このタイプは、固めずにボリュームを出します。
毛量が少ない、細毛やコシのない髪質、つむじ周りや頭頂部だけをふんわりさせたいなどに向いています。
・ウォーター
ほかのタイプのワックスにあるベタつきは、ほとんどありません。髪の毛によくなじみ、軽さと適度な弾力を出して毛流れをつくります。
普通のシャンプー剤で洗浄可能です。
ワックスの正しい使い方
薄毛の進行やハゲの予防は、まず頭皮環境に悪い影響を与えないことです。ワックスの使う際にこれを実践する、いくつかのポイントをあげます。
ポイント1・ワックスを地肌につけない
毛先や前髪、トップ部分、つむじ周りなど、スタイリングしたい部分にのみワックスをつけます。髪の毛の根元や頭皮に近い部分にはつけないようにします。
ポイント2・必要量だけつける
髪型が思うように決まらないと、つい使用量が多くなってしまいます。つける量が多くなると地肌への付着はもちろん、髪の毛はベタつき、ホコリなどがつきやすくなります。頭皮環境の悪化は免れないでしょう。
ポイント3・その日のうちに洗浄する
ワックスをつけたまま寝ないこと。その日のうちに必ずシャンプーをして、ワックスを落とします。すすぎはとくに念入りにし、頭皮にワックスが残らないようにします。
ポイント4・シャンプー剤を選ぶ
ワックスをしっかり落とそうとして、洗浄力の強いシャンプー剤を使ったり、洗いすぎはよくありません。必要な皮脂まで洗い流し、頭皮を乾燥させ、フケや炎症の原因になります。
天然由来成分配合、石油系界面活性剤フリー、育毛シャンプーなどが謳われているものを選び、正しいシャンプーをしましょう。
まとめ
整髪料が直接、薄毛やハゲを引き起こすことはありません。そうだとしたら、使い方のどこかに間違いがあったり、頭皮が整髪料を受け入れない状況になっている、その整髪料との相性が悪いなど、何らかの理由があるはずです。
もし、整髪料で頭皮や髪の毛にトラブルが生じたら、皮膚科で治療を受けるなどの措置が必要です。
髪の毛、頭皮を健全に保ちながら整髪料を使ってスタイリングするためには、スプレーやミスト、ジェル、ムース、グリースなどは避け、ワックスを上手に使うのがいちばんいいでしょう。
ワックスには多くのタイプがあるので、スタイリングしたい形に応じてそれらを使い分ければいいのです。
また、薄毛やハゲの予防効果を持っているワックスもありますので、それを使うのもいいでしょう。
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