髪をブリーチする、つまり脱色をすると髪の毛は傷む。ブリーチで髪がダメージを受けるのは避けられない。ほとんどの人はそう思っています。おそらくそれは本当でしょう。そして、髪はカラーリングしているだけでブリーチはしていないから大丈夫、と思っている人も多いようです。
では、ブリーチによる髪のダメージとはどの程度なのでしょう。切り離すことのできないカラーリングと合わせてブリーチの、髪へのダメージについて検証してみましょう。
ブリーチとヘアカラーの違い
言葉の意味からいえば、ブリーチは脱色という意味です。
髪をブリーチするといったら、髪の色を抜くこと。それに対して、へカラーは髪の毛を染めることです。
カラーリングの種類と特徴と注意
カラーリング、髪を染めることはいうまでもなく髪の美容施術です。薬剤を使用するため、とくに美容師にしてもらうのではなく自分で行う場合は注意が必要です。
カラーリングは、ヘアマニキュア、ヘアカラー、ブリーチの3つの方法があります。
へマニキュアは半永久染毛剤で髪の表面のキューティクルを染める、ヘアカラーは永久染毛剤で髪の内部のメラニン色素が含まれているコルテックスを染める、ブリーチは脱色剤でコルテックス内のメラニン色素を分解して色を抜いて明るくすることです。
パッチテストは染めるたびに
カラーリングは3種とも、それぞれ使用されている薬剤の中に危険性を指摘されているものがあります。
ヘアマニキュア剤に使われているタール系色素は表示指定成分の一つで、発ガン性が疑われています。
ヘアカラー剤の染毛剤の一つ、パラフェレンジアミンはアレルギー反応のアナフィラキシーを起こす可能性があるとされています。
パッチテストは、以上のような薬剤による影響がカラーリング剤を使用した際に出るかどうかを知るために行います。カラーリング剤を使う前に二の腕などに薬剤を塗って、肌に変化が起きるかどうかを確認します。
実際にカラーリング剤を使用するときは、髪の生え際にワセリンなどを塗って薬剤が直接皮膚に付着するのを防ぎます。
女性は、生理前は黄体ホルモンの影響で肌が敏感になっています。この時期に限ってカラーリング剤に反応することもあるので、生理前のカラーリング剤の使用は避けた方がいいでしょう。
セルフカラーリングのデメリット
美容室でのカラーリングは、新しく伸びてきた髪の根元部分はしっかり染まるようにカラーリング剤を強めに調合し、前回染めた色が残っている部分の髪はダメージを抑えるためにカラーリング剤を弱めにするなど、さまざまなテクニックを使います。
自分でカラーリングを行う場合は、こうした薬剤の使い分けやプロのテクニックを使えません。新しく生えてきた髪の根元も、すでに染まっている髪も同じカラーリング剤を使います。髪へのダメージは避けられず、カラーリングの効果もいい結果は得られません。
髪へのダメージを減らし、カラーリング後も健康で美しい髪でいるため、美容院でのカラーリングをおすすめします。
ブリーチもヘアカラーも目的は髪を染めること
ブリーチは、色を抜くというより髪の毛の色を薄くするという意味で使われることが多く、カラーリングと同様に髪の色を変える美容施術とされます。
美容室では、使用する薬剤をブリーチ剤にするかヘアカラー剤にするか、仕上がりの色で選ぶこともあります。
また、ブリーチ剤とヘアカラー剤の両方を使って染めることもあります。
市販のヘアカラー剤を使う場合は、ヘアカラー剤のみの使用ということになりますが、これで髪を染める過程には、一般的に髪をブリーチ(脱色)するというプロセスが含まれます。
ヘアカラー剤でもブリーチできますが、ヘアカラー剤はあくまでも染色が目的なので脱色力はそれほど強くありません。
一方、ブリーチ剤は色を抜くための薬剤ですから、ヘアカラー剤よりも脱色効果が高く、髪の毛をもとの色よりずっと明るくできます。
ヘアカラー剤だけで髪の色を明るくするには限界があります。日本人の黒髪を、金髪や透明感のある明るい色味にしたい場合、ブリーチ剤でもとの黒色を抜いてからでないと希望の色には染まりません。
ヘアカラー剤で髪が染まる仕組み
私たち日本人の髪の色は黒が標準ですが、ヘアカラー剤で自由に好みの色に変えることができます。
髪の色がヘアカラー剤で染まっていくプロセスをみてみましょう。
一般的なヘアカラー剤は、1剤と2剤の2種類の組み合わせでできています。
それぞれの薬剤の内容は、1剤は酸化染料(パラフェニレンジアミンなど)とアルカリ剤(アンモニアなど)で、2剤は酸化剤(過酸化水素水)です。
髪が染まるプロセス
- 1剤と2剤を混ぜて混合液を作り、髪に塗ります。このとき髪は乾いている方がいいとされますが、濡れているより乾燥している髪の方が発色がよく、短時間で染まるからです。
- カラー剤を髪に塗ると、1剤のアルカリ剤が髪のキューティクルを開き、混合液が髪の内部に浸透していきます。
- 液が髪に浸透すると、アルカリ剤で2剤の過酸化水素水が分解されて酸素が発生し、その酸素がメラニン色素を脱色して、同時に酸化染料を発色させます。
- 発色した酸化染料は分子になってくっついて大きくなるため、キューティクルの隙間から出られなくなります。こうして、染料が髪の内部に閉じ込められて新しい色が髪に定着します。
ブリーチやヘアカラーによる髪の傷み方
髪を染めるには前述した3つの方法がありますが、それぞれ使用する薬剤が異なり、髪のダメージも違います。
ブリーチやヘアカラー方法による髪の傷み方を、具体的にみてみましょう。
ヘアカラーは髪へのダメージは少ない
一般に、ヘアカラー剤にはブリーチ剤が含まれています。それによって髪が明るく染まるのですが、ヘアカラーは時間が経つと退色してしまいます。
また、ヘアカラー剤に配合されているブリーチ剤の量はそれほど多くありません。
ヘアカラー剤の色素薬剤は髪の内部に浸透して髪にダメージを与えますが、このダメージは毛根への影響はあまり大きくなく、ヘアカラー剤が直接的に脱毛や発毛を妨げる原因にはなりません。
ブリーチは髪へのダメージが大きい
ブリーチ剤は、ヘアカラー剤のように髪の内部の色を変化させるのではなく、髪のメラニン色素を分解して色をなくすことで髪の色を明るくします。
ブリーチ剤で脱色すると、黒、茶、金、白の順に色が抜けていき、髪の色を完全になくしてしまうこともできます。
髪の色を抜いてしまうので、ヘアカラー剤で染めたときのように退色はしません。脱色した色は染めない限りそのままです。そして、ヘアカラー剤で染めたときより色持ちは長くなります。
ただし、髪の色素を抜くと同時に髪の栄養も一緒に抜けてしまうために、髪は大きなダメージを受けることになります。
髪の色をより明るくするには、ブリーチ剤を複数回使用して脱色する必要があるので、明るくするほどダメージは大きくなります。髪からたんぱく質や水分が失われ、乾燥毛になって、切れ毛や枝毛の多いダメージ毛になってしまいます。
色が出にくいビビッド系のカラーに染める際に使われる、ダブルカラーというカラーリング方法があります。
ブリーチとヘアカラーの両方を使って染める方法で、まずブリーチして髪の色を抜いて明るくした髪にヘアカラー剤をのせます。この場合の髪が受けるダメージは、ブリーチ剤の使用のときと同じかそれ以上になると思われます。
髪の毛の成分と構造
髪に毛の成分の80%はたんぱく質で、残りの20%は脂質や微量元素、メラニン、水分などです。髪の毛のたんぱく質は、とても硬いたんぱく質のケラチンという成分が主です。
髪の毛は円筒形の構造で、中心部には柔らかいたんぱく質が主成分の〝メデュラ〟があります。
その外側に、繊維状のたんぱく質が主成分の〝コルテックス〟があり、これが髪の85〜90%を占めます。ここのたんぱく質や脂質の構造、水分量などが柔軟性や太さといった髪の毛の質に影響します。さらに、髪の色はここに含まれているメラニンの種類と量で決まります。
一番外側が、硬いたんぱく質のケラチンを主成分とする〝キューティクル〟です。キューティクルは、半透明の鱗のような形をしていて、平らに上から下に4〜10枚重なって並び、髪の内部組織を保護しています。
キューティクルの最表面には、脂質成分のMFA(18ーメチルエイコサン酸)があってキューティクルを保護しています。しかし、MFAはこの最表面で常に外界と接しているので、さまざまものとの摩擦で破損しやすく、この傷み具合が髪のツヤや感触を大きく左右します。
弱酸性のキューティクルがアルカリの薬剤で傷む
健康な髪は弱酸性です。
健康な弱酸性のキューティクルはアルカリ性のヘアカラー剤によってこじ開けられ、内部に入り込んだブリーチ剤がメラニン色素を分解。そこに染料が侵入。キューティクルは閉じて染料はそこに留まり、色は定着して新色が発色。
このカラーリングサイクルで、キューティクルのダメージは明らかです。1回のヘアカラー剤使用で、キューティクル表面のMFAは8割くらい失われてしまうといわれます。
また、ヘアカラー剤が頭皮に付着すると、頭皮に炎症が起きることがあり、それがハゲる原因になる可能性があります。
さらに、毛穴に薬剤が詰まったまま放置されると、そこに細菌が発生して脱毛の原因になることもあります。
ダメージをひどくする合わせ技
ブリーチやヘアカラーは、髪の傷みやキューティクルへのダメージリスクが大きいことはよくわかりました。
でも、このダメージをさらにひどくしてしまうことがダブルで行われることもあります。
ブリーチと縮毛矯正、ストレートパーマ
ブリーチしてダメージ毛になってしまったところに、縮毛矯正やストレートパーマをかけるとダメージがさらに大きくなることは想像に難くありません。
ダメージの状態は最悪で、ビビリ毛になったり、そこまでひどくはないといってもパサパサ毛になります。
ところで、縮毛矯正とストレートパーマは混同されがちですが全く違うものです。
縮毛矯正は、強力な専用薬剤を使用し、アイロンなどの熱で髪を矯正します。髪へのダメージは大変大きくなります。
ストレートパーマは、通常のパーマに使われるパーマ液を使い、まっすぐなパーマをかけているようなものです。縮毛矯正に比べるとダメージは少なくなります。
ブリーチとヘアアイロン
ブリーチ剤で脱色した髪やダブルカラー(ブリーチしてから染める)をした髪に高温のヘアアイロンを使うと、髪の中の成分や水分とヘアカラー剤が一緒に溶けて、抜け出てしまいます。
アッシュカラーとヘアアイロン
アッシュカラーのヘアカラー剤は熱に弱く、アッシュカラーに染めた髪に高温のヘアアイロンを使い続けるとカラー色素が次第に抜けていき、髪のダメージは大きくなります。
ブリーチと黒染め
これはとくに要注意です。
美容師の方によると、黒染めをした髪は普通のヘアカラー剤での脱色は難しく、ブリーチ剤を使っても奥の方に色素が残っているために透明感が出ず、もとの髪の色に戻すことはなかなかできないそうです。髪のダメージも相当なものだそうです。
最近市販されるようになった、ダメージが少ないブリーチサプリや、普通のヘアカラー剤でも明るくしやすい黒染め剤などの利用をおすすめします。
ブリーチとヘアカラー後のケアの仕方
髪が傷んでしまったら、ダメージの回復を最優先にしてください。
トリートメントは重要で有効なケア手段です。欠かさず行いましょう。
いつもどおりのシャンプーをして、トリートメント剤を髪につけたら、必ず蒸しタオルで髪全体を覆って、そのまま10分くらい放置してトリートメント剤を髪に浸透させます。
髪を乾かすときはスタイリング剤を使い、ドライヤーの熱から髪を守ります。そして、美容院でトリートメントをしてもらうことも必要です。
外界の刺激やストレスから髪を守る
シャンプーをしたらトリートメントをして、ヘアパックで保湿します。
そして、UVカット効果のある流さないトリートメント剤でUVケアをして、紫外線などの外界からの刺激やストレスから髪を守ります。
髪や頭皮専用のローションを使って、頭皮や髪をマッサージをするのも効果があります。
カラーやツヤをキープするため、たんぱく質やオイルなどの美髪成分配合の市販のヘアケア用品を選び、日常のヘアケアを充実させましょう。
ビビリ毛はショートカットにするのが一番
ブリーチを繰り返したためにパサパサ毛やビビリ毛になってしまったら、もとの健康な髪には戻りません。
こうなったら、あきらめて美容院でカットしてもらうのがベストなケア方法です。
思い切ってショートカットにするか、少しずつ毛先をカットしながら、美容院と自宅でトリートメントなどのケアを続けましょう。
アミノ酸など配合のケア用品を使う
ダメージを進行させないために、ホームケアを怠ってはいけません。
髪にとって何より栄養になるたんぱく質のアミノ酸やケラチン、キューティクルを守るオイルなどを配合したシャンプーなど、適切なケア用品を使ってダメージの進行を抑えます。
トリートメントは、シャンプーで失った脂分を補う役目があるので流しすぎないようにしましょう。ぬるぬるした感じが少し残っているくらいがちょうどいいです。
お風呂上がりに、洗い流さないトリートメントを使うのも効果があります。
ヘアパックやヘアマスクを多用する
ダメージヘアのケアアイテムとして、ぜひおすすめしたいのがヘアパックやヘアマスクです。
トリートメントをしても効果がないほどのダメージがある髪にも、効果を発揮します。
お風呂で、シャンプー後にトリートメントと同じように使ってください。
とくに傷んで枝毛になっている毛先など中心に塗って、蒸しタオルやシャワーキャップなどで髪を覆い、そのまま10分ほど放置します。
まとめ
ブリーチとヘアカラーがどんな美容施術なのか、その薬剤が髪の中でどんな化学反応を起こし、どれほどのダメージを髪に与えているか、わかっていただけたでしょうか。
ブリーチの髪へのダメージが相当なものであることは、間違いありません。カラーリングだけならそう傷まないといわれるますが、ヘアカラー剤にはブリーチ剤が配合されているのが一般的なので、少ないとはいえダメージはあります。
少しでもダメージを減らすために、ブリーチやヘアカラーは美容院でしてもらうようにしましょう。とくにブリーチは美容院でして、美容院が変わる場合は、ブリーチしたことを申告して適切なケアをしてもらいましょう。
ヘアカラーだけはセルフでというなら、まずトリートメント剤配合のヘアカラー剤を選んでください。そして、ヘアカラー後のヘアケアを適切なケアグッズでしっかり継続してください。
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