乏毛症ってどんな病気?遺伝が関係刷る?症状や治療方法を知ろう!

乏毛(ぼうもう)症をご存知ですか。乏毛症は、無毛症の一種で、髪の一部または全部が生まれつき生えてこない疾患です。日本には1万人から2万人に1人の割合で患者がいると言われています。

今回は、乏毛症がどのようなものであるのか、原因は何であるのか、治療法はあるのかなどについて詳しく見ていきたいと思います。

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遺伝が原因の乏毛症とは?

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乏毛症は、生まれつき、頭髪や体毛の生える量が少なかったり、まったく生えてこない症状を指します。乏毛症は一部分だけ生えてこない(限局性)、頭全体で毛が生えてこない(全頭)、体全身に毛が生えない(全身性)など症状が起きる部位も多様ですが、遺伝性の病気であるということは共通しています。

この症状は赤ちゃんの出生時に気づく場合もありますが、後から髪の毛の生え方が違うことに気づく場合もあります。気になった場合は小児科医や皮膚科専門医に相談してみましょう。

乏毛症は原因を大別すると「遺伝性症候群」と「先天性乏毛症」の2つであると考えられます。この2つにはどのような違いがあるか、確認していきます。

なお、もともと髪が正常に生えている人に男性ホルモンが起因して起こるAGA、女性ホルモン低下による抜け毛、その他代謝的な異常によって起きる後天的な進行性の脱毛などは乏毛症には含みません。

遺伝性症候群

遺伝性症候群とは、他の遺伝性疾患が原因で起きる無毛症・乏毛症を指します。

日本人では外胚葉形成不全症、Tricho-rhino-phalangeal症候群、ウェルナー症候群、ネザートン症候群、脂腺母斑(しせんぼはん)、先天性皮膚形成不全症などが挙げられます。これらの特徴はどのようなものか、見ていきましょう。

外胚葉形成不全症

外肺葉形成不全症は、歯、爪、汗腺などの組織に形成異常がある遺伝病です。歯が生えなかったり(歯牙形成不全)、汗腺がないために発汗が低下し(発汗不全)肌が乾燥したり、病原菌に感染しやすく(免疫不全)、腸管の形成が不完全だったりするなど、症状は多岐にわたります。そのうち、毛髪については少なくて細くなる傾向があります。

Tricho-rhino-phalangeal症候群

Tricho-rhino-phalangeal症候群は、側頭部の乏毛をはじめとし、太い眉毛、西洋梨のような鼻、薄くなって飛び出る唇、指が曲がったまま伸びない屈指症などを伴います。常染色体優性遺伝性疾患とされています。

ウェルナー症候群

ウェルナー症候群は、早老症の一つであり、低身長、白髪、皮膚の硬化、骨粗しょう症その他、加齢が促進し、老化症状を呈する病気です。この一環として、毛髪が失われやすくなると言われています。

ネザートン症候群

ネザートン症候群は、魚鱗癬(ぎょりんせん)と言って、魚の鱗のような固い皮膚が剥がれ落ちていく病気で、アトピー性疾患や毛髪の異常を伴います。主に赤ちゃんの時に顔面から始まり、全身をに広がっていきます。毛が薄くなる症状が起こりやすいと言われています。

脂腺母斑(しせんぼはん)

脂腺母斑は、頭部から顔にかけてできるあざで、初めは黄色で平たく盛り上がった状態で確認されます。そのあざのある部分には髪が生えません。脂腺が発達してくる思春期頃に、黄色から褐色に変わり、体の成長に伴って、このあざも大きく顆粒状を呈してきます。

癌化する可能性があり、切除手術が行われるのが一般的です。精神発育遅滞、目や心血管、骨などに異常を伴うことがあります。

先天性皮膚形成不全症

先天性皮膚形成不全症は、頭皮が部分的に欠損する先天性の病気です。

症状は生誕後すぐに、頭頂部付近に認められることが多いのですが、顔、胴体、手足などに症状を伴うこともあるようです。

先天性乏毛症とは

先天性乏毛症は、常染色体劣性遺伝性縮毛症・乏毛症と呼ばれています。ふつう、乏毛症という場合は、この先天性乏毛症を指します。日本人には1万人~2万人に1人と言われています。

これは遺伝子に異常・欠損があって起こる疾患です。責任遺伝子は第3染色体長腕26-27にあるLIPHという遺伝子です。このLIPH遺伝子が異常を起こすために、必要なLPA(リゾホスファチジン酸)を生成できず、乏毛を生じます。日本人の先天性乏毛症の9割はこのLIPH遺伝子の異常(欠損)が原因と言われています。

LIPH遺伝子が正常なときは、ある酵素を媒介して、LPA(リゾホスファチジン酸)を合成します。このLPAは、髪表面の細胞に存在する受容体(LPA6受容体)に対して、カギの役割を果たしてくれます。

LPAがカギを開けて、その髪の表面にある細胞(内毛根鞘細胞)に入り込み、指令を出すことで正常な髪の毛をつくることができます。LIPH遺伝子が欠損していると、カギとなるLPA自体がつくられないため、乏毛症が発症するとされています。

日本人の場合の9割がこのLIPH遺伝子の異常によるものですが、まれにLPAR6遺伝子の欠損によって引き起こさる場合もあるようです。LPA6受容体はカギであるLPAに対するカギ穴の役割を果たしてくれているのですが、LPAR6遺伝子に異常を来せば、カギはあるが、カギ穴がなく、LPAが内毛根鞘細胞に入り込めず、結果的に乏毛となってしまいます。

このLPAR6遺伝子が原因である可能性も0ではないのですが、日本でこの症例はあまり確認されおらず、ほぼLIPH遺伝子が原因と考えてよいでしょう。

先天性乏毛症の検査

遺伝子検査を行います。検査方法として血液や唾液をわずかに採取し、責任遺伝子を特定します。採取量が少ないため子供にとって負担が少なくて済みます。診断結果が出るまでには数週間ほどかかるようです。

先天性乏毛症の研究

先天性乏毛症の発生メカニズムはおおむねわかっているのですが、現時点で治療薬がありません。そのため、平成25年より創薬支援ネットワークの支援対象に、この先天性乏毛症が指定されました。

日本医療研究開発機構によるこのプロジェクトは、理化学研究所や医療基盤・健康・栄養研究所、産業技術総合研究所、そして大学などの研究成果とともに、日本をあげて薬開発を行っていくものです。

この治療に対して効果のある物質を探し、選び出す作業を支援してくれているようです。数年後に薬となるものが出来上がる可能性があります。

またこの創薬支援ネットワークとは別に、LIPH遺伝子変異のある先天性乏毛症に対して、ミノキシジルが効果があるかの臨床研究なども行われていて、様々な角度から改善のためのアプローチがなされています。

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乏毛症当事者の生活

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生まれつき髪の毛などが生えてこないことによって、人と自分が違うことを、幼いころから突き付けられます。そのような環境の中で、乏毛症を受け入れていける方もいれば、長い間悩み続ける方もいます。

病気として捉えるのか、個性として捉えるべきなのか難しい問題ですが、どのような視点で乏毛症は認識されているのか、ウィッグなどを利用についてはどのように捉えられているのかについて、触れてみたいと思います。

乏毛症の当事者であること

乏毛症の方たちは、幼稚園や小学校などでからかわれたりばかにされたりする経験を通して、髪の毛がないことに対する劣等感を抱いてしまうケースが多いようです。

男性の場合ももちろんですが、乏毛症は女性にも発症しやすいため、ウィッグをつけていることが周囲に知られてしまったり、ウィッグなしで街頭を行き来することが強いストレスになることは想像に難くありません。

髪の毛がない、それだけで嘲笑の対象にされてしまうのです。それは男性型脱毛症(AGA)や円形脱毛症をはじめとする、後天的な脱毛についても同じでしょう。

髪の毛がないというだけで遠巻きにバカにされたり、面白半分でからかわれたり、ときには大病を患っているのではという的外れな同情をかけられる、それが気持ちがいいはずがありません。やがて当事者は、人の視線が気になり、人との関係が怖くなり、中には社会に参加することが難しくなる方もいらっしゃるようです。

私たちの社会では「頭を丸める」ことが、反省すること、咎を背負っていることを意味します。また、髪の毛が薄くなった人、髪の生えていない人を笑い飛ばす傾向があります。髪の毛がないことは、罪深いことであり、あるいは滑稽なことだと、認識してしまっているのです。

髪の毛がないことは、それほど悪いことでしょうか。悩み苦しんでいる人がいることを忘れて、心ない言葉を投げてしまう無神経さが、その方々を必要以上に追い込んでしまうことを忘れてはなりません。

ウィッグの利用

乏毛症によって目立ってしまうことを防ぐためにウィッグ(かつら)を使って、補うことができます。ウィッグは、ただ「隠す」だめだけはありません。積極的にファッションとして楽しむことができるものが増えてきています。

ショートヘア、ロング、ミディアム、前髪ウィッグ、自分でスタイリングしやすいものもあれば、ウェーブやカールありのウィッグなど、選ぶのには事欠きません。

ウィッグは大きく分けて、医療用ウィッグとファッションフィッグとに分かれますが、通気性や伸縮性、見た目の自然さが良いものが医療用ウィッグとされます。医療用ウィッグであれば、数十万もするような高額なものももちろんありますが、数万円のものも販売されています。また1万円前後のファッションウィッグを利用することも可能です。

さらに利用する部位に応じて分類すると、頭をすべてカバーするフルウィッグ、頭の一部だけに利用する部分用ウィッグに分けられます。

毛の種類で分けるのであれば、人毛ウィッグと人工毛ウィッグに分かれます。人毛ウィッグは、本物の髪を使用しているため、質感が自然ですが、スタイリングが崩れやすいのがやや難点で、日光での色あせの可能性もあります。

人工毛ウィッグは、形状記憶性や耐久性に優れていますが、人毛と異なる質感であること、また手入れの仕方が人毛とは異なる点に注意です。なお、人毛と人工毛をミックスしたウィッグもあるようです。

髪の毛がないことが問題である、欠点である、ということは決してありません。ですが、ウィッグをファッションととらえて日々使っていくことで、より前向きに乏毛症と向き合っていくことができるに違いありません。

乏毛症ネットワーク

先天性乏毛症、先天性縮毛症の当事者でつくる乏毛症ネットワーク「冠花(かんな)の会」というものがあります。当事者同士の情報交換、社会に対する情報の発信、研究者や医師たちとの関係づくり、研究開発などへの協力などを目的として活動されています。

個人や家族だけで悩みを抱えるよりも、同じ当事者同士で悩みや不安を相談して打ち明け、新しい情報交換が随時できればきっと心強いことでしょう。

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乏毛症に関連する治療法

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現時点で、乏毛症を改善するための治療法は確立していません。薬の開発にもまだしばらくの時間がかかることになります。ここでは、乏毛症に関連した、脱毛症などに関して、世間的に育毛効果や発毛効果があると言われている対策や方法を見ていきましょう。

ホルモン治療

女性の薄毛は、女性ホルモンの減少が原因だと言われます。とくに更年期(閉経を挟んだ10年間)を迎えると、女性ホルモンが減少し、自律神経の調整がうまくいかなくなり、心身の調子が悪くなります。この女性ホルモンを充填するのが、ホルモン療法(ホルモン充填療法)です。

飲み薬だけでなく、外用薬も利用し、エストロゲン、プロゲステロンを補います。ただし、これは更年期障害に用いられる治療で、薄毛の治療に対しての方法としては確立していません。現時点では、髪を取り戻すことができるという科学的なデータは出てきていないのが現状のようです。

HARG療法

ハーグ(HARG)療法は毛髪再生医療で、ビタミンやアミノ酸、成長因子を患者ごとにブレンドし、それを頭皮に注入することで発毛と育毛を促します。育毛剤、養毛剤、発毛剤などを使い分けてきた薬剤治療とは全く異なる新しい治療法として注目を集めています。

このハーグ療法は日本医療毛髪再生研究会に認定された施設で施術を受けられるようです。施術は頭皮にカクテルと呼ばれる成長因子を注射します。発毛率が高く、半年ほどで効果を実感できるようですが、治療費は高額になってしまうようです。

鍼灸治療

鍼灸、電気針治療法、電気針療法など針をつかったツボ刺激が発毛に有効だと言われています。主には血流を改善することで効果が得られるようです。これは東洋医学に基づいていて、西洋医学治療とは異なりますが、大学などで実験研究が行われ、ヒトやマウスなどで発毛効果が認められたという結果もあるようです。

養命酒

養命酒製造株式会社が製造する薬用酒で、滋養強壮効果があると言われています。養命酒はテレビCMも放送されていますし、広く知られていると思います。養命酒が育毛などに効果があると言われることがありますが、これは養命酒が体を温め、血行と代謝を高めてくれる効果によるものでしょう。

ただし、発毛効果までは期待するのは難しいそうです。あくまで血行が良くなったために、薄毛の改善に至る、というところです。

遺伝子治療

特定の遺伝子が欠損している患者に対して、正常な遺伝子を入れることによって、効果が見込める治療法です。治療法が確立されていない病気や、先天性・遺伝性の病気に対して、利用されることが期待されます。たとえば、神経伝達物質の生成ができない難病患者が、遺伝治療によって改善したというニュースが話題になりました。

遺伝子治療では運び屋を意味するベクターという核酸分子を利用して体内に正常な遺伝子を取り入れる手法がとられます。このベクター利用の安全性が高まったことで、飛躍的に普及していくことが見込まれています。

アルツハイマーやパーキンソン病、血友病などに対する新薬の開発は現在進んでいるところで、また皮膚がんに対する新薬はすでに海外で承認されたようです。この遺伝子治療という分野がまた、乏毛症の治療に応用されることを期待したいものです。

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まとめ

乏毛症は先天性・遺伝性の疾患であり、そのメカニズムは解明されてきているため、近い将来は薬によって改善が可能になることが期待されています。遺伝子に対してアプローチする方法、LPA(リゾホスファチジン酸)と同じ働きをする物質を探ること、あるいは既存の薄毛や抜け毛対策の中で乏毛症に有効なものはないのかを探ること、あらゆる面で多角的にその治療法が模索されているさなかです。

髪の毛がないことで肉体的・精神的に不利であるということはそれほどなくても、社会的には生活が難しかったり、人との関係に悩みが生じてしまったりします。脱毛症や乏毛症の当事者でない人たちにとっても、髪の毛のトラブルによって失われうることを考えれば、他人事ではありません。

多くの人たちに理解され、この疾患が改善される方法が登場することが望まれます。生活していきやすい社会環境が整いながらも、ウィッグなどを利用して乏毛症の当事者の方が明るく楽しく生活していけることが期待されます。

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