重曹をお湯で溶かし、それで頭皮や髪の毛を洗うのが重曹シャンプーです。
ナチュラル志向の人や、頭皮や髪の毛によけいなダメージを与えたくないという人に注目されているシャンプー方法の1つで、実践している人も多いといいます。
シャンプーの材料は自然由来である重曹だけ、合成成分は一切なし。そのうえ食用グレードの重曹なら安心感は絶大です。
これからは、重曹をはじめ、塩やクエン酸など自然由来の素材を使ってシャンプーやリンスをする人がさらに多くなることでしょう。
目次
重曹についての基礎知識
重曹は、塩化ナトリウム溶液を電気分解することでできる水酸化ナトリウム溶液に、二酸化炭素を反応させて製造します。
重曹がシャンプー剤の材料としてなぜ注目されているのか知るために、まず基礎的な知識を仕入れることにしましょう。重曹の化学的な背景も含めてみていくことにします。
重曹は自然由来なので安心・安全
重曹の化学名は「炭酸水素ナトリウム」(重炭酸ソーダ)、化学式は「NaHCO3」です。
白い粉末状で、常温で安定して、長期保存が可能です。
水に溶かした重曹の水溶液はごく弱いアルカリ性で、人体には無害です。
pH数値
ここで、アルカリ性についての豆知識を1つご紹介。
ご存知のように、アルカリ性の強さはpH(ペーハー)であらわされます。
pH数値は0〜14の段階があり、pHが7前後は「中性」、pHが7より低くなると「酸性」になります。
そして、pHが11以上なら「アルカリ性」、pHが8以上11 以下なら「弱アルカリ性」となります。重曹はpH8くらいです。
ちなみに殺菌作用にはpH12くらいが必要とされます。
重曹の様々な使用用途
重曹には様々な使用方法があり、一般家庭の生活の中でも複数の目的で使用される便利な素材になります。具体的な使用用途を紹介します。
食用
重曹は、水質汚染で問題とされるBOD・ COD(ともに水質汚染の指標の1つ)がなく、ダイオキシンやPCBといった環境ホルモンも含まれていないため、環境にやさしい物質とされています。
食品添加物として使用することも可能なくらい、人体に対して安全です。
もちろん、常識の範囲を超えるほど大量に摂取すればナトリウムの過剰摂取となり、副作用を発症することもあります。
重曹は、加熱することで二酸化炭素を発生し、小麦粉などに練りこんで加熱すると、多孔質でふわふわサクサクの生地になります。
この加熱すると膨張するという性質を利用したのが、パンやケーキ、どら焼きなどに欠かせない膨らし粉(ベーキングパウダー)です。あの昔懐かしいカルメ焼きは、砂糖(三温糖)と重曹だけでつくられます。
また重曹は、ワラビなどの山菜のアク抜き、松の実などの臭み取り、豆や肉を柔らかくするための下ごしらえ、夏みかんなどの酸味の中和、中華めんのめん打ち等々、さまざまな料理の下ごしらえや味つけに広く使われています。
洗剤
重曹には研磨作用や乳化作用があり、これらの作用を利用した商品が洗剤や洗剤です。
アルカリ性洗剤というと、トイレ洗剤のドメストやカビキラーといった強力な洗浄力の洗剤が思い浮かびます。
アルカリ性洗剤は、湯のみ茶碗にこびりついた茶渋や、換気扇やグリルの油汚れ、焦げつきなど、一般的な中性洗剤ではなかなか落ちないガンコな汚れを簡単に落とします。
重曹を溶かした重曹水は石けん水より弱いアルカリ性で、油脂に対しての洗浄力は弱く、十分に撹拌して重曹を水にしっかり溶かさなければ洗浄力はさらに低下します。
ただ、携帯用のポットなどの口が狭くて細長い容器は洗いにくく、よくすすいだつもりでも洗剤が容器内に残りやすいものです。かといって、子どもが使うポットはアルカリ性洗剤で洗うのは不安です。そんな場合、重曹の洗剤なら、容器内に多少洗剤が残っても安心です。
小さな子どもがいたり敏感肌などで強力なアルカリ性洗剤を使用したくないときには、重曹やセスキ炭酸ソーダを使うといいといわれます。
そのときは、重曹は粉のまま水と混ぜてペースト状にして使います。
重曹と石けん素地100%の純石けんと合わせ、重曹石けんを手づくりして使うのもいいでしょう。
セスキ炭酸ソーダは、重曹と炭酸ソーダの中間のようなものです。さらさらした結晶で、重曹より水に溶けやすく、常温で保存しても変質しません。洗浄力があり、手荒れしにくいのが特徴で、使いやすい素材です。
消臭剤
重曹には臭いを中和する作用があります。それを利用して、シューズボックスや冷蔵庫に入れて消臭剤の代わりに使います。
入浴剤
重曹を溶かして加熱すると、重曹より強いアルカリ性の炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)ができます。
炭酸ナトリウムが含まれている天然温泉は重曹泉といわれ、さまざまな効果効能が知られています。
市販されている家庭用の入浴剤の多くに、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムが使われています。また、重曹をそのまま入浴剤として使用している人もいます。
重曹水で得られる医薬的な効果
医薬品では、胃酸過多の症状に対する制酸剤として使われています。
重曹を溶かした水を飲むだけで、体調不良やさまざまな疾患の改善に役立つともいわれています。
慢性病を発症するのは、体や血液が酸性に傾いているためという説があります。重曹で体や血液を中和すると、ガンや腎臓病、肝臓病、通風などが改善に向かうというのです。
医療的な効果がみられる重曹の利用法を、いくつかあげてみましょう。
・重曹の尿酸を排出する働きを利用して通風の防止に利用する
・口内細菌によって酸性になった口内は、重曹のうがい薬を使うことで中和され、殺菌や口臭を予防し、インフルエンザの予防にもなる
・重曹を使った歯磨き粉で歯を磨いたり、歯磨き後に重曹を加えた水で口をすすぐと、虫歯や歯周病の予防になる
美容効果にも大きく貢献
重曹の美容面や健康面での効果として期待されているものを紹介します。
便秘の解消
重曹が胃に入ると炭酸ガスが発生します。その炭酸ガスによって胃が膨らみ、脳は食べ物が体内に入ってきたと錯覚します。そして、脳から出された指令によって大腸は活発に働き出し、排便を促進するというわけです。
便秘は吹き出物の原因になり、女性の美肌の大敵です。効果があるといわれる方法は、とにかく試してみてはいかがでしょう。
肌の黒ずみを軽減
重曹のタンパク質を溶かす作用を利用して、通常の洗顔では落ちにくい、毛穴に詰まっている皮脂を浮き上がらせて洗い流します。
また、重曹で洗顔をすると研磨作用で、スクラブ洗顔と同じ効果を得られます。
皮膚表面の古い角質を重曹のスクラブ作用で落とし、皮膚組織の新陳代謝(ターンオーバー)を促進します。皮膚組織の新陳代謝が活発になると、組織内のメラニン色素が古い角質とともに剥がれ落ちます。
重曹で洗顔を続けるとスクラブ効果でメラニン色素が減少し、肌の黒ずみが徐々に解消されていきます。
脇の下の臭いと黒ずみを軽減
石けんやボディソープを適量、手のひらで泡立てて、重曹を少量(ひとつまみくらい)混ぜます。それで、顔や体を洗います。
脇の下も念入りに、マッサージするように洗いましょう。
工業用の粒子の粗い重曹を使うときは、肌を傷つけないように注意しましょう。指の腹で、力を入れず、優しく洗います。
重曹の消臭効果で脇の下の臭いが軽減し、研磨効果によって黒ずみの解消にもつながります。
重曹シャンプーを実践する
最近は、頭皮や髪の毛に与えるダメージが大きいとされる石油系の界面活性剤を使用したシャンプーより、洗浄力が弱くてもダメージの少ない植物性のアミノ酸系シャンプーを選ぶ人が増えています。
皮脂の分泌量が多く頭皮がベタつくといった理由で、洗浄力の強いシャンプーを使用すると、皮脂を必要以上に落としてしまいます。そのために、皮脂の分泌はさらに多くなります。皮脂分泌を適正に保つには、洗浄力の弱い重曹シャンプーがいい場合もあります。
重曹シャンプーのメリット
重曹シャンプーを行うことで得られるメリットについて見ていきましょう。
シャンプー剤を手づくりする
重曹をシャンプー剤として使うメリットに、まずシャンプー剤を手づくりするということがあります。
材料は重曹だけです。しかも自分でつくるのですから、どんな成分が配合されているのかチェックしなくてはならない市販のシャンプー剤と比べると、安心感が格段に違います。
毛穴の奥の皮脂汚れも洗浄
重曹には乳化作用があります。水と油のように本来は混じり合うことのないものどうしが混ざり合うことを乳化作用といい、シャンプー剤に配合される界面活性剤と同じ働きをします。この重曹の乳化作用を利用するのが、重曹シャンプーです。
毛穴に詰まっている皮脂を重曹の乳化作用で浮き上がらせ、お湯で洗い流します。
この毛穴の汚れまで落とすことが、重曹シャンプーの最も大きなメリットです。
重曹でのシャンプーは一般のシャンプー剤と比べて泡立ちが悪く、シャンプー後のすっきり感もありません。これが、重曹シャンプーのデメリットといえるかもしれません。
頭皮の臭いやかゆみも改善
頭皮の表面や毛穴の中にとどまっている皮脂が酸化すると、臭いの原因になります。
また、皮脂が酸化することで頭皮に炎症が起き、かゆみの原因になることもあります。
重曹は弱いアルカリ性で、皮脂は酸性です。重曹でシャンプーして皮脂を中和し、重曹の研磨作用=スクラブ効果で洗い流して、臭いもかゆみも解消というわけです。
最初の数回はテスト的に使う
頭皮環境を左右する皮脂分泌の量は、個人差がかなりあります。また、頭皮の状態によっては、重曹シャンプーが頭皮に刺激を与えることも考えられます。
カラーリング剤を使用する際は、必ず事前にパッチテストを行って、皮膚にダメージがないことを確認します。それと同じように、最初の数回はテスト的にシャンプーをしましょう。
使用している市販のシャンプーと重曹シャンプーを合わせて使い、皮脂分泌や頭皮の状態を確認します。
テストシャンプー1
・シャンプー剤に重曹を少量混ぜてシャンプーする
いつも使っているシャンプー剤を適量、手のひらにとって、そこに重曹を少量(1つまみくらい)加えてよく泡立てます。
いつもと同様にシャンプーをします。
洗い終わったら、トリートメントまたはリンスをいつもと同じようにします。
いつもと同様に、乾かします。
数日の間、頭皮や髪の毛に問題が生じなければ、テストシャンプー2に進みます。
テストシャンプー2
・混ぜる重曹の量を増やしてシャンプーする
シャンプー剤を適量、手のひらにとったら、重曹を前回の2倍量加えてよく泡立てます。
いつものようにシャンプーをしますが、意識して頭皮マッサージをするようにしましょう。
洗い終わったら、トリートメントまたはリンスをいつもと同じようにします。
これで頭皮や髪の毛に問題がなかったら、次は重曹だけでシャンプーします。
重曹だけでシャンプーする
- まず予洗いをします。シャワーで、頭皮や髪の毛に付着している小さなゴミや埃を、しっかり落とします。
- 重曹でシャンプー剤をつくります。重曹を大さじ1杯、洗面器に入れます。そこにぬるま湯(37〜38℃)を少しずつ入れて、重曹を溶かします。重曹の塊がないように十分に溶かします。
- お湯の量を洗面器の半量くらいにします。
- 洗面器の重曹シャンプーをすくって、頭皮全体につけます。指の腹で頭皮をマッサージしながら、重曹シャンプーを頭皮にもみ込むようにして洗います。
- 髪の毛は、両手で挟んで、力を入れないでやさしくもむようにします。
- 洗面器の重曹シャンプーがなくなるまで繰り返します。
- 洗い終わったら、シャワーですすいで重曹分をしっかり洗い流します。洗い上がりのごわつきは、クエン酸リンスでするするの指通りになります。
- 毛先のパサつ気が気になったら、これまで使っていたリンスを毛先だけにします。
クエン酸リンスをする
- 重曹で弱アルカリ性になった頭皮や髪の毛を、クエン酸でリンスをして弱酸性に戻ししましょう。
- 料理用の酢を使って、酢リンスをすることもできます。ただ、酢独特の強い匂いがあるので、あらかじめ好みのハーブなどを酢に漬け込んで、匂いを抑えてから使用するといいでしょう。
- クエン酸リンス原液は、水500㎖にクエン酸大さじ2杯(30㎖)をペットボトルなどに入れて、上下に振ったりしてよく混ぜ合わせて作ります。
- 使うときは、クエン酸リンス原液を大さじ1〜2杯、1ℓ程度のお湯に溶かします。好みのアロマオイルを数滴加えてもいいでしょう。使い方は通常のリンスと同じです。
- リンス後はしっかり洗い流しましょう。
- 重曹シャンプーやクエン酸リンスは、頭皮を柔軟にして血行をよくし、薄毛や抜け毛、枝毛や切れ毛の予防につながり、美髪効果も期待できます。
重曹やクエン酸を使う時の注意点
- 使用量を守る
重曹やクエン酸の量が多ければ、洗浄力などの効果が上がるわけではありません。人体に害がないとはいえ、そのときの頭皮環境によっては濃度が高いと頭皮や髪の毛を傷め、炎症などを起こす可能性もあります。
- すすぎは十分に
重曹シャンプーですすぎが足りないと、頭皮や髪の毛の表面に重曹文が残り、頭皮乾燥や髪質を変えてしまうことにもなりかねません。
- クエン酸リンスは素早くする
クエン酸リンスはリンス液をつけて時間をおくと、髪の毛が乾燥することがあります。
塩洗髪
塩のシャンプーにも、触れておきましょう。
タンパク質を溶かす作用がある、塩のナトリウムイオンを利用するシャンプー法です。とくに頭皮の臭いが気になる人におすすめです。
重曹が塩に代わっただけで、シャンプーの仕方は重曹シャンプーと同じです。
お湯をたっぷり使って予洗いし、頭皮や髪の毛の小さなゴミや埃を落とします。
洗面器にお湯をたっぷり入れ、粗塩を小さじ1杯強溶かし、その塩湯で頭皮と髪の毛を洗います。要領は前述の重曹シャンプーを参照してください。
頭皮や髪の毛に塩分が残らないようにしっかりすすぎます。
塩分が残っている状態で紫外線を浴びると、頭皮や髪の毛がダメージを受けますのですすぎは十分にします。
シャンプー後の髪の毛のごわつきは、クエン酸リンスで解消します。
まとめ
重曹は精製の違いで「医薬品」「食品添加物」「工業用」の3つのグレードがあります。
「医薬品」は、過剰に分泌した胃酸を中和する胃薬として使われています。「炭酸水素ナトリウム」「重炭酸ナトリウム」という商品名で、ドラッグストアや薬局薬店で売っています。
「食品添加物」は、パンやお菓子などをつくるときの膨らし粉(ベーキングパウダー)や、アク抜きなどの料理の下ごしらえ用としてスーパーなどで売っています。
高純度できめが細かく、水に溶けやすくできています。シャンプーや入浴剤のほか家庭で使用する重曹は「食品添加物」グレードのものを使用しましょう。
クエン酸もドラッグストアで購入できます。
ワックスやムースなどのヘアケア剤は、重曹シャンプーでは落とせません。重曹シャンプーを日常のシャンプー法にする際は、ヘアケア剤は、椿油やオリーブオイル、グレープシードオイルなどを濡れた髪の毛に使いましょう。
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