円形脱毛症、俗に言う10円はげに悩まされている人は少なくないようです。大人だけでなくお子さんでもこの脱毛症にかかることもよく聞かれます。芸能人の方でも10円はげになった、とブログで報告している方もいらしたようですね。ストレスが原因だったり、また何らかの病気にかかっているケースもあるようです。
この10円はげは引き起こされる原因にはどんなものがあるのでしょうか。またその種類や日常生活で気をつけることは何なのか。10円はげの予防・対策法などについて紹介していきます。
10円はげ(円形脱毛症）とは
ストレスで10円はげになった、なんて話はよく聞きます。
それぐらい身近に起こりやすいことかもしれませんが、いったい10円はげ（円形脱毛症）ってどんな症状なのでしょうか。
10円はげの症状って？
ある日朝起きて鏡をのぞいたら、よく見ると髪にハゲ部分があってビックリしたことがあるかもしれません。また美容院で美容師さんに言われて気がついた人もいるのではないでしょうか。頭髪に隠れていると自分では気づきにくいかもしれません。また10円はげがあると美容院に行くのも恥ずかしくて、行きづらく思う女性もいるでしょう。
芸能人ではダレノガレ明美さんが、子どもの頃円形脱毛症でかつらをかぶっていた話をカミングアウト、また更新頻度の高いブログも人気な辻希美さんは、堂々と円形脱毛のハゲた部分の写真をブログ記事に掲載していました。
また女性セブンに、戸田恵梨香さんの円形脱毛に関する記事が掲載されていたことがあります。タレントさんが体験談をカミングアウトすると、身近な問題のように感じられます。
10円はげという名前から、脱毛部分が小さな円形のイメージがありますが、中にはダレノガレさんのように脱毛部分が大きくなってしまうこともあります。
AGA（男性型脱毛症）と円形脱毛症との違い
AGAは薄毛や抜け毛に悩みを持つ男性はよく聞く症状かもしれません。AGAは男性ホルモンであるテストステロンが、DHT（ジヒドロテストステロン）という物質に変化し、このDHT が毛乳頭にある受容体と結合することで細胞に悪影響を及ぼし、脱毛に至ると言われています。
円形脱毛症の原因は男性ホルモンではなく、別の原因があるそうです。実際子どもや女性にも現れるのと、ストレスが引き金になるとも聞きます。髪の短い男性には目立ちますし、髪の毛に気を使う女性にとっては髪の脱毛部分を見たらかなりショックです。
脱毛症といってもいろいろな種類がありますので、自分の症状をよく把握した上で、対策をとらないといけません。
円形脱毛症（10円はげ）の症状と種類
円形脱毛症とはどのような症状なのか、どんな種類があるのかをまとめました。
円形脱毛症の特徴
円形脱毛症にもいろいろなケースがありますが、突然髪の毛が減り始め、地肌の見えるところがあること、形は円形または楕円形、脱毛周辺の毛髪を引っ張ると簡単に抜けて痛みもないのが特徴です。
ストレス、脱毛症関連遺伝子、内分泌異常による自己免疫疾患が原因としてあげられています。永久脱毛にはならないケースもあれば、また永久脱毛に至るものもあります。
軽度のものは単発性型、重度になると多発性型、脱毛巣が全頭部や体にも及ぶ汎発性型となります。
単発型円形脱毛症
単発型円形脱毛症はいわゆる10円はげのイメージに最も近いもので10円玉、もう少し大きなサイズの円形の状態の脱毛が1，2か所できるものです。はげ部分は脱毛斑（脱毛班）といわれますが、円形だけでなく楕円型の脱毛斑になることもあります。
円形脱毛症にもいろいろ症状がありますが、比較的軽い方の円形脱毛症で、ある日突然10円玉サイズのハゲがあることに気づきます。特に頭部のどこにできるかというと、側頭部だったり後頭部だったりと場所は決まっていません。
半年から1年で自然と治癒していくことも多いようですが、まれに多発型円形脱毛症になっていく可能性もあるので、治りが悪い場合は適切な治療を受けるのがおすすめです。
多発型円形脱毛症
単発型円形脱毛症が多発性になったもので、何か所も円形脱毛症があったり、頻繁に頭のどこかに円形脱毛症が多発してしまう脱毛症です。
また脱毛部分同士がつながってしまい、大きな脱毛面積になることもあります。治るのに2年くらいといわれ、自然に治るのを待たず、医療機関に診てもらった方がいいレベルです。
汎発性脱毛症
多発性の円形脱毛症がさらに進んで、脱毛部分同士がつながってしまい、頭全体の毛が抜けてしまう症状です。全頭脱毛症とも言われます。
また髪の毛だけでなく、全身の毛が抜けてしまう全身脱毛症もあります。全身脱毛症は髪の毛だけでなく眉毛やまつ毛、体毛も抜けていく、難治性のものです。
その他の脱毛症——びまん性脱毛症・蛇行性脱毛症・牽引性脱毛症
びまん性脱毛症は女性に多い急性脱毛症で、部分的でなく頭髪全体で平均的に脱毛する症状で、汎発性脱毛症に進むことがあります。
蛇行性脱毛症は蛇のように細長く脱毛する症状で、後頭部や側頭部の毛の生え際で脱毛症状が見られ、子供に多く発症します。
牽引性脱毛症はポニーテールやエクステンションなどのヘアスタイルで髪を引っ張り続け、頭皮に負担がかかることが原因で起こる脱毛症です。
脱毛症状にあったケアを
円形脱毛症はストレス症状が体に現れた突発性脱毛、というイメージがありますが、実際にはさまざまな要因があります。
脱毛症患者さんによって症状、原因はさまざまですし、ストレスだけでなく内臓疾患、婦人科疾患であることも。症状、原因にあったケアが必要です
円形脱毛症（10円はげ）の原因
円形脱毛症の原因はストレスだけでなく、さまざまあります。原因を知って正しい対策と治療をしましょう。
精神的なストレス
円形脱毛症といえばすぐにその原因として思い浮かぶのが、精神的ストレスでしょう。ストレスで円形脱毛症になった、というのはよく聞く話だからです。
ストレスがきっかけの円形脱毛症は、4月や5月など、環境の変化がきっかけで起こる可能性が高い時期に多いともいわれています。また大きなストレスを感じて3，4カ月後に症状が出るとも言われています。ストレスが原因であれば、ストレス解消の方法を見つけなくてはならないでしょう。
円形脱毛症に限らず、強いストレスが原因で抜け毛を引き起こすことはあります。しかしストレスのみが原因かというと決してそうではないので、長引いているときは症状が悪化する前に早めの受診が必要です。
遺伝的疾患
円形脱毛症には遺伝的要因が関わっていると言われています。円形脱毛症患者の方の家族に同じ病気を抱えている家族がいるケースが少なくなく、また親等が近いほど発症率が高いという調査結果が出ています。
遺伝子が関連しているとも言われていますが、遺伝率は20～30％と決して高いものではないという説もあります。
アトピー性疾患
円形脱毛症がアトピー性皮膚炎の合併症として起こることがあります。円形脱毛症の患者の方の40%以上はアトピーを持っていると言われています。
アトピー皮膚炎で頭皮が乾燥して赤みや痒みを伴い、フケや抜け毛が出るケースがあり、中には円形脱毛症を発症するケースがあります。
自己免疫疾患
最近最も円形脱毛症の原因としてあげられているもので、自己免疫系の機能に異常が起きて、自分の体の一部を攻撃してしまう病気です。
自己免疫は自分の体内ある異物または危険な物質を排除しようとする免疫現象です。リンパの大きな役割として、その免疫機能と排泄機能があげられます。
円形脱毛症はリンパ球（白血球）の一種であるTリンパ球（T細胞）という免疫細胞が、毛根の毛乳頭や毛母細胞を異物とみなして攻撃してしまうことで発症すると言われています。毛根部分を誤って攻撃してしまうこの自己免疫反応では、毛包の周囲に顕著なリンパ球の湿潤が認められています。
自己免疫性疾患である甲状腺疾患や尋常性白斑の患者さんの一部でも、円形脱毛症を併発していると報告されています。
アレルギー
女性の脱毛症はアレルギーと関わっていることが多いと言われています。アレルギーにもいろいろあり、食べ物や化粧品、上にあげたアトピーや喘息と関わっているケースもあります。金属アレルギーと円形脱毛症の関連も指摘されています。
栄養不足
一人暮らしになったり無理なダイエットで栄養不足、栄養の偏りが原因で円形脱毛症になることがあります。
髪を作る元となるたんぱく質などの不足により、髪に栄養が行き渡らないことで、髪が細くなったり脱毛症を引き起こしてしまうことがあります。
婦人科疾患 女性ホルモンとの関係
ホルモンバランスの崩れにより、円形脱毛症を引き起こすことがあります。
妊娠を機に女性ホルモンが通常よりずっと多くなっていたのが、出産後大きく減少することによって、産後の抜け毛が起きることがあります。
自律神経失調症
自律神経の乱れも指摘されています。交感神経の働きが強くなることが原因になり、頭皮の毛細血管が細くなって栄養が毛根にゆきわたらないことが原因と言われています。
10円はげの自分でできる対策は？
10円はげは自分で対策できるのでしょうか。あるとしたらどんなことをしたらよいのでしょうか。
10円はげに育毛剤は効果ある？
10円はげは頭皮の皮脂詰まりが原因ではなく、ストレスが引き金となり自己免疫反応やホルモンのバランスの乱れ、また何らかの疾患の合併症の可能性があります。
育毛剤、また育毛シャンプーや育毛サプリで育毛や発毛の大きな効果を見込めないでしょう。ただし栄養不足が引き金なら、育毛サプリが何らかの形で発毛効果につながるかもしれません。
誤った育毛ケアやヘアケアで悪化させないよう、医療機関に相談しましょう。
10円はげの対策に、ストレス解消、生活習慣の改善
ストレスが引き金となっている場合、ストレス解消や生活習慣の改善も治療とともに心がけましょう。
ストレス解消法としては、適度な運動やリラックスする時間を作ること、不規則な生活は心身ともに疲れをためてしまいがちです。マッサージや半身浴で血行を良くするのも気持ちが良いですね。
シャンプーやマッサージなどの頭皮ケアは直接症状の改善に作用しませんが、サロンで受けるスカルプマッサージはリラックスにもなるかもしれません。
10円はげの治療法
10円はげになってしまったら、病院のどの科に行ってどのような治療をしてもらったら良いのでしょうか。
病院の皮膚科か、脱毛症専門外来
円形脱毛症はストレスが原因、と軽く見られがちですが、すぐに自然治癒するものもあれば、治りにくいケース、また全身に広がることもあります。治りが悪いときは自己判断に頼らず、適切な機関で治療を受けましょう。
円形脱毛症は自己免疫系の疾患ということで、皮膚科で保険適用の治療が受けられます。一部の大学病院では、脱毛専用の外来が設置されているところもあります。
特殊な治療方法や対処方法ですと、保険治療の対象外とされてしまいます。また脱毛症専門のクリニックですと自由診療のため、費用が高額になることがあります。
円形脱毛症以外の他の薄毛治療、たとえば女性の多いびまん性脱毛症のような症状ですと、病院に行っても保険適用外になり、費用がかかります。
脱毛症が起きていても加齢、ストレス、不規則な生活習慣など、直接皮膚の疾患と関係ない理由での症状、自然な生理現象は、病院の皮膚科に行っても治療の必要がないと判断されることが多いようです。もちろんかぶれや皮膚の炎症が招じていたり、脱毛以外の頭皮の異常が見られる場合は対応してもらえるでしょう。婦人科も同様です。
皮膚の異常がない場合は、脱毛症・薄毛治療専門のクリニックで診てもらうのことになります。婦人科では治療対象外でも、女性向けの薄毛治療クリニックもありますので、そのようなところを選んで診てもらいましょう。
日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドライン
日本皮膚科学会が作成した円形脱毛症診療ガイドラインによりますと、病気が始まってからの期間、そして脱毛面積でその治療方法が決められています。
1. 病気が始まってからの期間が短く、脱毛面積が小さい
外用薬ではステロイド、塩化カルブロニウムを、内服薬ではセファランチン、グリチルリチンなど、急速に症状が拡大するときはステロイド内服も選ばれますが、お子さんには使用できません。症状が改善しない単発型、多発型の円形脱毛症患者に対しては、脱毛斑にステロイド局所注射を、範囲が広い場合は冷却療法を施します。
2. 病気が始まってから6か月以上、脱毛面積が大きい
局所免疫療法といって、人工的にかぶれを引き起こす化学試薬を使って、発毛を促す治療方法です。化学試薬にはスクアレン酸ジブチルエステル（SADBE）やジフェニルシクロプロペノン（DPCP）が使われます。かぶれ療法とも呼ばれ、毛根を攻撃するリンパ球などの免疫反応を変化させる治療法です。こちらはお子さんにも治療可能な療法です。
なお、免疫抑制剤の一種であるシクロスポリンAは、円形脱毛症にも効果があるとされていますが、副作用が強いという報告もあり、日本皮膚科学会では推奨できない薬として判断されているようです。
その他の円形脱毛症の治療方法
その他の治療方法として、紫外線療法やスーパーライザー療法があります。
紫外線療法はアトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚病にも使われる治療法です。紫外線を照射してリンパ球が毛包を誤って攻撃するのを抑えます。自己免疫に影響を与えて発毛を促し、お子さんや妊婦さんにも可能と言われていますが、クリニックによって判断は異なりますので先生に相談してください。
スーパーライザー療法（直線偏光近赤外線照射療法）は筋肉や関節、自律神経の治療にも使われる療法で、スーパーライザーという機械を使って特殊な赤外線を脱毛斑に照射することで、脱毛症の改善に効果があります。単発型円形脱毛症のような、比較的軽度の症状に高い確率で効果がある方法とされています。
円形脱毛症の対処法に医療用かつら
髪で隠れる程度の単発性の円形脱毛症ならそのままでも良いですが、多発性や脱毛面積が広がった場合、隠すことが難しい場合があります。人の目が気になり、精神的にも苦痛を感じます。
全身治療が必要なほどの重い病気で、抗がん剤などを使用している方が副作用により円形脱毛症など抜け毛に悩まれることがあります。このような場合も医療用かつらが使われています。
病気、ケガなどのために作られた医療用かつらはよく売られているファッションウィッグより価格はかなり高い設定になっています。ファッションウィッグは安価で種類が豊富ですが、医療用の方が髪質も自然でかつ自然な分け目、通気性が良く、頭皮にも優しい素材になっています。
まとめ
円形脱毛症はすぐ治るケースも多いですが、多発性、さらに重くなると全頭や体にも広がることがあります。
他の脱毛症、特に男性に多いAGAでは男性ホルモン、頭皮の皮脂が原因ということがありますが、円形脱毛症の場合は発症の原因が異なります。
症状をよく見て、長引く場合は自己判断に頼ることはせず、専門の医療機関に相談し、適切な治療を受けましょう。皮膚の疾患が原因であれば、育毛剤がかえって頭皮を傷つけてしまう可能性もあります。
またいわゆる10円はげ程度の脱毛で済んで自然と治った人も、あまり事態を軽く見てはいけないと思われます。何らかの原因で脱毛症に至ったわけですので、生活習慣やストレス解消法を見直しておくと良いでしょう。
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