薄毛といえば、男性特有の悩み、というのはもう過去の常識になったようです。最近は女性でも年齢に関わらず薄毛に悩まされる方が増えてきました。
いつものように鏡の前に立った時に、ふと「髪の毛が薄くなったような・・・このままはげてしまうの?」と、心配される方も多いのではないでしょうか。
今回は、髪の毛の仕組みから、薄毛になる理由、そして対策について紹介いたします。
髪の毛の仕組みを知ることが薄毛予防の第一歩
薄毛を予防するためには、髪の毛が生えてくる仕組みが知らないと誤った対策をしてしまうことにもなりかねません。
まずは、髪の毛の仕組みについて知ることから始めましょう。
新生毛を生み出す毛母細胞
髪の毛を生み出すのは頭皮の奥にある毛球という組織です。毛球は言ってみれば髪の毛の工場で、内部では毛細血管から取り込まれた髪の毛の減量となる血液が毛母細胞に受け渡され、毛母細胞は細胞分裂を繰り返して髪の毛を生産していきます。
一日あたり100本程度の髪の毛が自然に抜け落ちていきますが、毛球が活動を続けている限り、毎日新しい髪の毛が次々に生産されていくので全く問題はありません。
ところがなんらかの理由で毛球の活動に障害が発生すると、どんどん髪の毛の生産量が低下していき、最悪の場合は停止してしまうこともあります。
これが薄毛やはげと呼ばれる状態です。ただし毛球自体は死んでしまったわけではなく、休止状態になっているだけなので、必要な処置を行えば、再度稼動させることは可能です。
ヘアサイクル
髪の毛には、生まれて、伸びて抜け落ちていくまでのサイクルがあり、これをヘアサイクル(毛周期)と呼んでいます。
ヘアサイクルは大きくわけると、毛母細胞の分裂が盛んな成長期、毛母細胞の分裂が減少する退行期、毛母細胞の分裂が停止し、自然に髪の毛が抜けて行く休止期の3段階です。
ヘアサイクルは一般的には女性では4年〜6年、男性は2年〜5年と言われています。このサイクルをとめないことが薄毛対策のためには必要です。
女性の薄毛が発生する理由
では、ヘアサイクルが滞って女性の薄毛が発生する原因は何でしょうか。まず考えられるのはホルモンバランスの乱れです。
ホルモンバランスについては、髪を生み出す女性ホルモンが加齢により減少することと、それにより相対的に男性ホルモンの割合が増えることの2つの要因が影響しています。
女性ホルモンは毛量を増やす働き
女性のヘアサイクルが男性より長いのは、エストロゲンという女性ホルモンの働きによるものと考えられています。
エストロゲンの分泌には周期があり、10代後半から増加し、20代前半までに妊娠にそなえて安定し、ピークを迎えるのは30歳頃と言われています。個人差はありますが、この頃には太く丈夫な髪質となり、枝毛や切れ毛もなく、つやのある美しい状態になります。
このエストロゲンがが不足してくるとつやがなくなったり、抜け毛が増えたりするのです。なお、出産により一時的に抜毛が増えるのは、大量に分泌されてきたエストロゲンを消費することによるものと言われています。
男性ホルモンは発毛を妨げる働き
一方、男性のヘアサイクルが女性より短いのはテストステロンという男性ホルモンの影響によるものです。
テストステロンとは、エストロゲンとは逆に、男性をより男性らしくするホルモンです。大きな体格を作ったり、外敵に闘争心を燃やしたりなど、「オス」であるためには必要なホルモンです。
テストステロンには毛母細胞の分裂を促進させ、髪の毛の成長を早くするのでヘアサイクルも短くなるのです。このテストステロンの影響による脱毛症がいわゆるAGA(男性型脱毛症)と呼ばれる男性特有の脱毛です。
女性にも男性ホルモンは分泌される
女性も男性も、メス性(女性)・オス性(男性)両方の性ホルモンを体内で分泌していますが、その分泌量が男女によって異なることから、それが「女らしさ」「男らしさ」となって心身に表れるのです。
女性も男性同様にテストステロンを分泌するのですが、分泌量が男性の10%以下と少ないことから、男性のように頭髪が抜け落ちる全頭薄毛、いわゆるはげになることは非常にまれです。
ホルモンバランスの変化によるびまんせい脱毛症
更年期に入ってしまうと女性ホルモンの分泌が減少することに加え、結果的に男性ホルモンの割合も増えてしまうことで新しい毛の生産が追いつかず、薄毛になることがあります。
男性のAGAに該当するのでFAGAといい、別名をびまんせい脱毛症といいます。
薄毛は更年期特有の症状ではなくなった
このように女性の薄毛は加齢による女性ホルモンの減少、いわゆる更年期に特有のものというのが常識でしたが、最近は20代や30代といって若い世代でも薄毛に悩む方が増えてきています。
加齢以外でホルモンバランスが変化する要因
女性の社会進出に伴い、仕事や人間関係で過大なストレスがかる機会が増えています。
テストステロンはもともとオスとして、外敵から身を守るために分泌すホルモンですが、様々なストレスに対抗するためにテストステロンの力を借りて身を守るよう本能が働くことがあると言われています。
テストステロンを分泌する機会が増えることにより、ヘアサイクルが早くなり、毛髪の悩みを訴える女性が増えることになっている可能性が高いものです。
ピルもホルモンバランスに影響します
低用量のものでも、ピルは女性ホルモンに影響を与えるため、抜け毛が増え薄毛になるという副作用をもたらすことがあります。
一時的なものですが、ピルの使用による薄毛は年齢を問わず起こる可能性があるものです。
ヘアカラーによるダメージ
髪を好みの色に染めるのは自己表現のひとつです。また、白髪が気になって染めている、という場合もあるでしょう。
ヘアカラーを行う際には、髪の毛の内部のメラニンを分解することで一旦脱色し、その上に好みのカラーリングを行います。
当然ですが、分解されたメラニンが元に戻ることはないため、髪の毛の栄養分が不足する上、ヘアカラーに使用されているのはほとんどが化学物質のためダメージが大きく、薄毛が気になるのであれば避けた方が賢明です。
女性の薄毛のタイプ
女性の薄毛にも様々なタイプがあり、原因についても一つとは限りません。
例えば、更年期に仕事や家庭内でのストレスが重なるなど複数の原因がからみあっていることの方が多いので、それらを一つ一つ解きほぐして行くことが大事です。
つむじはげ
特に、頭頂部や分け目部分が薄くなるものです。
これは先に述べたびまん性脱毛症でよくみられるタイプですが、男性のように一部が完全に脱毛することは非常にまれです。
円形脱毛症
円形脱毛症はよく知られているように、突然、円形をした脱毛が起こる症状です。年齢や性別に関係なく誰にでも起こる可能性があります。
一般的にはストレスが影響して起こると言われることが多いのですが、はっきりとした因果関係までは証明されていません。
詳しくは、10円はげ(円形脱毛症)の原因と対策、治し方について!どんな種類がある?を参考にしてください。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症とは、髪が引っ張られることによって生じる薄毛の症状です。ポニーテールなど髪の毛を引っ張るヘアスタイルや、ヘアアイロン、エクステ等もよくないと言われています。
特定の髪や頭皮の同じ位置に長期間に渡って圧力をかけ続けた結果、血液の流れが阻害されて充分な栄養が毛髪に行き届かなくなるのが原因です。
牽引性脱毛症を改善するには、当然ですが、ヘアスタイルを変えてみましょう。薄毛が気にならないよう、アップスタイルで結っている方も多いですが、結う位置を時々かえたりするだけでも効果は違ってきます。
休止期脱毛症
もともと、毛根の9割は成長期なのですが、何らかの原因で休止期に入ってしまう毛根が増えることで脱毛が起きる症状です。
女性の場合で考えられるのはまず様々なストレス、それから極端な食事制限によるダイエットにそこから引き起こされる貧血などがあります。
また、直前に手術等の外科処置を受けた場合にも起こることがあります。
ただし、毛根は死んでしまったわけではなく、休止しているだけなので原因が取り除かれれば回復する可能性はあります。
実は薄毛ではない場合も
髪が生えている頭皮は身体の中でも特に新陳代謝が激しいところです。毎日古い髪の毛が抜けますが、新しい髪もかわりに毎日生まれています。1日100本程度の抜け毛であれば基準内と言われています。
髪の毛の太さは毛穴の大きさが関係しているので、生まれつきのものです。よって、毛穴を大きくするのは難しいのですが、逆に毛穴が小さくなることはよくあることなのです。
たとえば毛穴が汚れや老廃物でつまってしまえば、髪の出口が小さくなるので、当然そこを通って出てくる髪の毛も細くなります。
髪の毛の数が同じでも、1本1本が細くなってしまうと、見た目には髪の量が減ったように見えてしまうため、薄毛になったように感じる場合があるのです。また、一般に35歳を超えると卵巣の機能が低下すると言われているので、エストロゲンの分泌量も落ちて行き、1本1本の髪のボリュームがなくなってしまう場合があります。
なお、頭皮には実に約4万の毛穴がありますが、健康な毛穴であれば、一つの毛穴から3〜4本の髪が生えています。毛穴が塞がっていると、本来は3本生えてくるはずなのに1本だけになってしまえば、実際にも毛が減っていることになるので要注意です。
おすすめの育毛対策
薄毛に悩む方はともすれば、ボリュームアップして目立たなくするにはどうすればよいのか、といった見栄えの技術にたよりがちです。
しかし、髪の毛だけをいじっていても薄毛の根本的な解決にはなりません。
まずは頭皮の血行をよくすることが先決
髪の毛は頭皮にある毛穴から生えていますが、実際に髪が作られているのは毛球です。
髪の原材料となる血液をいかに毛球に供給するかがポイントとなるので、頭皮の血行を良くすることが健康的な髪を保つためには、なによりも重要なのです。
頭皮ケアの方法
肩こりや腰痛は血行不良の代表的な症状と言われ、マッサージにより血行を良くしてやると解消することがありますが、頭皮も同様に「コリ」をほぐしすことによって血行を良くすることが必要です。
頭皮マッサージ
頭皮へのマッサージは道具などもいらず、また仕事の合間や就寝前のちょっとした時間にできるので手軽に行えるのでおすすめです。
大事なのは、頭皮を指でこするのではなく、しっかりと頭皮全体を動かし、痛くならず気持ちよい程度の力加減を心がけることです。
マッサージまず周辺部から、そこから頭頂部に向かって徐々にほぐしてやると効果的です。
言うまでもないことですが、頭皮を傷つける可能性があるので爪を立てるのは厳禁です。
また、頭部にはたくさんのツボがあるので頭皮マッサージする時には、ツボをしっかり刺激することでより効果が高まります。
丁寧なブラッシング
ブラッシングをしすぎると髪が痛む、と思っている方もいますが、ちゃんとしてブラシで正しいブラッシングを心がけていれば髪が痛むことはありません。
むしろブラッシングにより、手や指では刺激できなかった部分もまんべんなく刺激することができます。
ブラッシングの目的は頭皮への刺激以外に、髪や頭皮についた汚れを浮かすこともあります。
特にシャンプーの前にブラッシングを行うと、余分にシャンプー剤を使うことなく髪や頭皮をきれいにすることができ、シャンプー後の仕上がりの違いが実感できるでしょう。
また、これらのケアの前に全身のストレッチを行っておくと、全身の血行がよくなり、効果が上がるので時間がある時にはおすすめです。
きちんとシャンプーする
シャンプーの目的は、髪の毛の汚れを流すものだと思っていませんか?
実は、シャンプーの主な目的は、毛穴をふさぐ汚れや皮脂をしっかりと落とすことにあります。髪の毛自体の汚れはぬるめのお湯でしっかりシャワーするだけでも充分に落ちます。
シャンプーの際も髪をこすったり爪をたてたりするとキューティクルを傷つけてしまうので、指の腹を使って、やさしくマッサージするイメージで行います。少量のシャンプー剤を手にとりなじませ、しっかりと泡立て、生え際から頭頂部に向かって洗い上げて汚れを落とすと同時に血行を促進します。
最後にシャンプーが毛穴につまって残ることのないよう、しっかりとお湯ですすいで洗い流します。
洗い上がりはしっかりと乾かす
洗い終わったら、まずタオルでしっかり水分をとりますが、その際、ごしごしこするのではなく、タオルで水分を吸い取るように行います。目安として半分位はタオルだけで乾かしてドライヤーに移るイメージで。
ドライヤーをかける時には20センチ程離した位置からかけ、頭皮を手早く乾かした後、髪の毛の根元から毛先に向かって風をあてます。
ただし、逆に髪の毛を痛めることにもなりかねない長時間のドライヤーの使用は絶対に禁物です。
正しい食生活で生活習慣の改善
頭皮環境が頭皮マッサージや正しいシャンプーにより改善されても、髪の毛のもととなるタンパク質(ケラチン)が生成されないと健康な髪が生えてくることはありません。
髪の栄養分を作り出すためにも、食生活を見直して行くことが大事です。
仕事が忙しいとつい、食生活も乱れがちになりますが、最近はコンビニエンスストアでもある程度バランスのとれたお弁当や総菜等が買えるようになったのでうまく活用していきましょう。
女性用育毛剤の選び方
薄毛で悩む女性が増えたことを受けて、以前は男性だけのものと思われていた育毛剤についても女性専用のものが販売されるようになりました。
様々な製品が発売されているので自分にあった製品を見つけるにはどうすれば良いでしょうか。
女性用育毛剤の効果
女性の薄毛になる原因として、女性ホルモンの減少が大きな理由のため、女性ホルモンの作用を補うことで薄毛を解消するというものです。
特に30代後半で女性ホルモンの減少により更年期の前兆のような症状が出ることがある場合、育毛剤でホルモンの減少を補うことにより改善される可能性があります。
男性用育毛剤は使える?
育毛剤は高価なものもあることから、パートナーの男性が育毛剤を使用している場合など、共用で使えないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
男性用の育毛剤は薄毛の原因となるテストステロン等の男性ホルモンの働きを抑制する成分を含んでいます。
このため、男性用育毛剤を女性が使用しても育毛効果のある女性ホルモンの増加は期待できません。やはり女性専用の育毛剤を使うことをおすすめします。
女性用育毛剤の成分
薬局に行くと、たくさんの種類のものが発売されていてどれを選んだらいいのか、迷う人も多いのではないでしょうか。
女性用育毛剤には、抜け毛の予防・育毛促進・血行促進といった効果・効能をもたらす厚生労働省が効果を認めた有効成分を配合されています。
ただし、製品によって含まれる成分は様々です。
育毛剤選びは成分表の確認から
育毛剤に含まれる成分については法律で表記義務があります。
女性用育毛剤で人気のあるブランド、ベルタ育毛剤とマイ・ナチュレで含まれている成分を見てみましょう。
共通で含まれているのは、次の3つの成分です
- センブリエキス
- グリチルリチン酸ジカリウム
- 酢酸DL-α-トコフェロール
これらは女性の育毛を促進するためには必要な成分で ほとんどの育毛剤や化粧品にも含まれています。
また長春毛精のように積極的に漢方を取り入れ植物由来の和漢(生薬)で構成された成分を持つ、育毛剤もあります。
この他にも数十種類の成分が含まれて折、場合よってはアレルギーのもとになるなど体に合わない成分が含まれている可能性もあるので使用する際には確認が必要です。
発毛効果は長期的に考える
ヘアサイクルを考えると育毛剤の効果がでるませ数ヶ月はかかるので、すぐに髪の毛が生えて来ないからといって落胆することはありません。
むしろ、一ヶ月で効果があらわれます!などとうたった商品の方があれば、逆に効果を疑ってかかった方が良いかもしれません。
また、長期間にわたって使用するので、あまり高価な製品だと続けて行くのが難しい場合もあります。一定期間で効果がなければ返金を行うなどの対応を行っている会社もあるので購入する際には確認しておいた方が良いでしょう。
育毛剤だけでは薄毛は解消しない
育毛剤を使っても、頭皮のケアやマッサージに無頓着だったり、正しい方法で行わないでいると、育毛効果が上がりにくくなるばかりでなく、せっかく生えてきた髪を引き抜いたり、かえって抜け毛を増やすこともあります。
基本はヘアケアや生活環境の改善が主で、育毛剤はあくまで補助であることを理解しましょう。
利用に当たっては専門の医師に相談を
育毛剤は医薬品であり、含まれる成分の中には、血圧低下や頭痛などの副作用がある成分もあり、人によって合う、合わないがあることから利用に当たってはまず専門の医師に相談することをおすすめします。
病院は何科でみてもらえばいい?
薄毛の原因は様々なので、その原因や症状にあわせて病院を選ぶ必要があります。
妊娠・出産後であれば可能性があるなら、婦人科ですし、頭皮のかゆみなどの頭皮トラブルがあるなら、皮膚科です。
頭髪以外にも何かしらの異変を身体に感じている場合は、内臓疾患や甲状腺機能障害の疑いもあるので内科、強いストレスを受けるような、心理的要因に心当たりがあるなら精神科などが考えられます。
また、ヘアメディカルを始めとする頭髪治療の専門クリニックもあるので薄毛の状態よってはそういったクリニックに相談することも選択肢に入れてみても良いでしょう。
ホルモンバランス治療とは
減少した女性ホルモンを補充することにより、回復をはかるホルモン補充療法という治療法もあります。内服薬や貼り薬などに加え、病院では注射による補充も行なっているところもあります。
ただし、現在のところ、薄毛対策でホルモン補充療法を行っても保険の適用外となり治療費が高額になるので要注意です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。髪の毛は体の一部です。
薄毛になったということは、いつの間にか心や体のバランスが崩れてしまっていることをあなたに知らせるため、体から送られたメッセージなのかもしれません。
髪の状態はあなたの自身の状態を表すバロメーターなのです。繰り返しになりますが、男性に比べて女性は全頭脱毛、いわゆるはげになることはまれで、きちんと対策していけば回復する可能性も高いものです。
あきらめないことがなによりも大切です。
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