薄毛やハゲで悩んでいる男性の7割は、AGA(男性型脱毛症)であるといわれます。
そして、そのほとんどの人が、自分のハゲはどのくらいの早さで進行し、できたらその進行を止めたいと考えているのではないでしょうか。
ハゲる前のフサフサの髪の毛に戻ることはおそらく不可能ですが、ハゲの進行を遅らせる、あるいはくい止めることは可能です。
ハゲの進行を止めるには、ハゲる原因を知り、自分のハゲ方の特徴を確認したうえで対策を考える必要があります。
目次
薄毛の進行の原因と経過について
ハゲ方の特徴や、ハゲる速度は人それぞれです。
ハゲ始めたらもとには戻らないとあきらめる前に、ハゲる原因やハゲ方の特徴など、AGAの基本的な知識を得ることから始めましょう。
薄毛を進行させるのは男性ホルモン
男性ホルモン(テストステロン)は、一般的には筋肉の発達を促進し、ひげや胸毛などを濃くする働きや、男性的な行動や気質の源であることが知られています。
しかし、テストステロンは変化することで、髪の毛に関しては逆の働き、つまり脱毛につながるような働きもするのです。
分泌されたテストステロンは血流にのって、あご、胸、頭部ほか体中の皮下組織に存在する毛乳頭細胞に運ばれます。
毛乳頭細胞に運ばれたテストステロンは、5αリダクターゼという還元酵素によって、強力な男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。
そしてジヒドロテストステロンは、そこに存在する男性ホルモン受容体と結合すると、毛母細胞の活動を抑制します。これが、男性ホルモンがハゲの元凶になるといわれる所以です。
ただし、男性ホルモンが全身の毛母細胞に対して同じように作用するわけではありません。
テストステロンがジヒドロステロンになって毛母細胞に作用するには、還元酵素の5αリダクターゼと男性ホルモン受容体の両方が必要で、どちらか一方しか存在しない環境では不可能なのです。
男性ホルモン受容体は、体の部位によって多いところと少ないところがあります。もちろん個人差もありますが、一般的にあごや脇の下などには少なく、前頭部や頭頂部には多く存在します。
薄毛進行に好環境の前頭部と頭頂部
前頭部と頭頂部には、還元酵素の5αリダクターゼと男性ホルモン受容体がともに存在するため、ジヒドロテストステロンが大量に生成されます。
そして、ジヒドロテストステロンの作用で毛母細胞の働きは緩慢になり、薄毛が進行します。
AGAの多くがこの部位からスタートして進行していくのは、そういった理由からです。
前頭部から始まるM字ハゲ
最近抜け毛が多くなった、地肌が透けて見えるようになったと感じたら、薄毛の進行が始まっていると考えていいでしょう。
前頭部の生え際で抜け毛が始まっている、そして新しい髪の毛が生えるのは滞っている…。ここから着実に薄毛が進行し、M字型にハゲあがっていくのですが、本人も周りの人もほとんど気づきません。
このレベルではスタイリングする際に抜ける髪の毛や、シャンプーのときの抜け毛の本数はそれほど多くはありません。抜け毛に目立った変化がないことも、進行が始まっていることに気づかない理由です。
でも、その抜け毛をしっかり観察すれば異変に気づくはずです。
抜けた髪の毛の状態から、頭皮を髪の毛に何が起きているのかがわかります。その判断のしかたは後述します。
前頭部の左右の生え際から薄毛が進み、生え際のラインは次第にアルファベットのM字型になってきます。このM字が鮮明になってくると、ようやく「ハゲているのでは…」とい認識が生まれます。
頭頂部からハゲるO字ハゲ
M字型と並んで、薄毛の多くをしめているのがO字型です。頭頂部を中心に、円形に進行し、その形状や場所からてっぺんハゲともいわれます。
頭頂部は鏡で見えにくく、もともと毛髪量の少ないつむじに近いということもあり、短髪だったらなおさら、初期段階では気づかないようです。
ただ、薄毛が進行して地肌が見えてくると、頭を下げたときなどに目立ちます。O字型は、家族や親しい人に指摘されて気づくというケースも多く見られます。
やっかいなU字に進行する薄毛
U字型は、前頭部の生え際の真ん中が薄くなっていきます。症状が進行すると、前から見るとアルファベットのUが逆向きになったようになります。
症状の進み方によってはAに見えることもあり、その場合はA字型ハゲといわれます。
おでこの真ん中あたりの髪の毛が後退していると感じたら、U字型ハゲを疑ってください。
U字型の薄毛症状はやっかいだといわれることがあります。M字型やO字型と比べると進行が早いことが多く、初期段階から症状の範囲が比較的広いために帽子などで隠しにくいなどの理由からです。
また、M字型が進行していく過程で、前頭部の真ん中部分も薄毛が進み、U字型に発展することもあるようです。
いずれのハゲも最終型はほぼ同じ
前頭部の生え際から始まったM字型ハゲの症状は、頭頂部に向かって進行します。
症状が進むにつれ、頭頂部の生え際以外にも薄毛が広がり、M字の形は崩れていきます。
頭頂部から円形に進行していくO字型も、ハゲの範囲が広がっていくにつれ、Oという文字には見えなくなっていきます。
M字型の場合は症状が頭頂部にまで到達し、O字型の場合は円形の前方が前頭部の生え際に近いところまで到達したら、飛び地のように多少髪の毛が残っていたとしても、進行したU字型と同じパターンになるでしょう。
つまり、M字、O字、U字、いずれのパターンも、症状が進むと前頭部から頭頂部、左右は耳の上あたりまでの毛がすっかりなくなる、ほぼ同じパターンのハゲ方になります。
老人性脱毛症、円形脱毛症とAGAの違い
老人性脱毛症は、60歳以上の高齢の人にみられる、加齢が原因の脱毛症です。
加齢によって新陳代謝がスムーズに行えないなどの理由で、髪の毛の成長のために必要な栄養や酸素が、毛根へ十分に送ることができなくなっているのです。
円形脱毛症は、10代から中高年まで、年齢に関係なく発症します。
コインの形のように丸く脱毛し、基本的に脱毛するのは1カ所ですが複数の場所で脱毛することもあります。頭全体、全身の体毛がすべて抜けてしまうこともあり、頭全体が脱毛すると前頭型、全身が脱毛するのを全身型といいます。希少ですが、頭部の生え際がぐるりと帯状に脱毛する蛇行型もあります。
円形脱毛症は、よくストレス性であるといわれます。しかし、この脱毛症は、成長期の毛包がリンパ球の攻撃を受けて壊されてしまうことで発症する、自己免疫病の一種と考えられています。
ただし、髪の毛の元である毛包は残っていますので、リンパ球の攻撃が抑えられれば再び髪の毛は生えてきます。
さらに、脱毛部分が少なければほとんど自然治癒し、広い範囲で脱毛していたり、脱毛期間が数年にもわたるような長期でも治療で効果が出れば治癒します。
このように、老人性脱毛症や円形脱毛症は、男性型脱毛症とは原因がまったく違うし、ハゲ方も異なります。予防や治療などの対策もそれぞれ違いますので、注意してください。
頭皮や髪の毛に関する知識を得る
薄毛やハゲの進行を止める対策を実践するにあたって、髪の毛がどんな環境のもとに存在し、成長していくのかを知ることはとても重要です。
髪の毛が生えている頭の皮膚(頭皮環境)や、髪の毛が生えてきて抜け落ちるまでの毛周期(ヘアサイクル)について正しい知識をもちましょう。
また、抜け落ちた髪の毛を観察することで、その髪の毛が抜けた理由や、薄毛の進行についての情報も得ることができます。
皮膚組織の構造と髪の毛の関係
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織という3つの層で構成されています。
表皮は、皮膚組織を外部刺激から守るバリアで、表皮の状態が悪くなるとバリア機能が弱くなり、皮膚組織は外部からのダメージを受けます。
真皮は、コラーゲンやヒアルロン酸で構成され、神経や血管が張り巡らされ、髪の毛のもとになる細胞や皮脂腺や汗腺もここにあります。
皮下組織の主な成分は脂肪です。体温を調節したり、クッションのような役割をしています。
表皮には、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4つの層があります。皮膚のターンオーバーは、この4層の中で繰り返されています。
基底層で細胞分裂が進み、上の層へと押し上げられ、最終的に皮膚の外へ剥がれ落ちます。このターンオーバーは、正常なら1サイクル4週間(28日間)です。
皮脂膜は、皮脂や汗が皮膚の表面で混ざり合ってできる膜で、皮膚のターンオーバーを正常に保ち、皮膚の保湿をし、外部刺激から皮膚を守っています。
ただし、皮脂膜は外部の空気や紫外線とじかに接しているため、過酸化脂質に変わりやすいという問題があります。過酸化脂質は、皮膚に必要な皮脂膜や細菌を攻撃し、酸化を皮膚内部へ進めます。これが、髪の毛の成長を阻害するのです。
皮膚組織の中の毛根部は、栄養を皮膚組織内の毛細血管から取り込みます。栄養が十分であれば、毛母細胞の活動は活発になり、髪の毛は細胞分裂を繰り返しながら、皮膚組織の上の層へ進み、毛穴から頭皮の外へ伸びていきます。
髪の毛は問題がなければ成長を続け、4年から6年かけて寿命を全うします。これがヘアサイクルです。
抜け毛で頭皮やハゲの現状を知る
抜け毛で、頭皮がどうなっているか、ハゲは進行しているのかなどを判断できます。
ブラッシングなどで抜けた髪の毛を10本ほど白い紙の上に並べ、ルーペで観察します。
以下に、観察結果を紹介します。
・根元の毛根部が綿棒のように丸くなっている
自然脱毛した髪の毛です。いたって健康な髪の毛です。10本のうちの半分くらいがこの状態なら、ハゲは進行していません。頭皮環境もベストな状況でしょう。
・根元の毛根部が白くなっている
毛根部についているものが、白ければ皮脂、半透明な白だったら毛根鞘(もうこんしょう)です。
毛根に白い皮脂がついていたら、皮脂の分泌が過剰で脂漏性脱毛症かもしれません。治療をおすすめします。
毛根鞘とは、頭皮に髪の毛を固定する成分で、新しく髪の毛がつくられるときに必ず一緒につくられます。これが抜け毛の毛根についているのは髪の毛が健康である証拠で、薄毛やハゲはまだ心配しなくても大丈夫です。
・毛根に小さなヒゲがある
粃糠性(ひこうせい)脱毛症かもしれません。乾燥しがちな頭皮に多くみられます。早めに医療機関で診てもらうことをおすすめします。
・毛根の膨らみが貧弱
毛根部に膨らみがまったくない、あっても貧弱で先端にいくにしたがって尖っていたら、ストレスや内分泌異常、免疫疾患などが原因の脱毛症かもしれません。医療機関で診てもらうことも考えましょう。
・毛根がなく根元が裂けている
毛穴の中で髪の毛が切れて、髪の毛の繊維が裂けています。縮毛矯正などの強い薬剤が毛穴の中に入り込むなどが原因で、髪の毛が弱っている状態です。薄毛やハゲも深刻な状況になっていると思われます。
ハゲの進行を止める有効な育毛対策
薄毛やハゲの進行を止める対策と積極的な育毛対策は、同時に行えばより効果を発揮するはずです。
日常生活の中で行うセルフケアとともに、育毛効果を認められている成分配合の育毛剤を使ったり、専門の医療機関で治療をするなどの有効な対策を取り入れましょう。
頭皮環境をベストに保つ生活習慣を
頭皮環境を、髪の毛が生えにくくする要因のほとんどは日常生活の中にあります。日常生活を見直すことが、薄毛対策、ハゲ対策の第一歩です。
生活習慣でもっとも改めたいのは、乱れた食生活です。
エネルギー源である炭水化物を抜く、就寝前にスナック菓子を食べる、暴飲暴食やアルコールの過剰摂取、喫煙などはすぐににやめるべきです。
髪の毛の成長に欠かせない栄養素であるタンパク質を中心にした、栄養バランスのいい食事を規則正しくとりましょう。
毛母細胞の活動を促進する成長ホルモンは、就寝中に分泌されるメラトニンで形成されています。睡眠不足になるとメラトニンが不足し、成長ホルモンが正常に分泌されなくなります。
適度な運動はストレスを発散し、血行を促進します。また、新陳代謝が活発になり、毛母細胞へも十分な栄養が届きます。質のいい十分な睡眠をとるためにも、運動は有効です。
ハゲの進行抑止に有効なシャンプー法
髪の毛が健やかに成長するのも、途中で抜け落ちてしまうのも、ひとえに頭皮環境にかかっているといっていいでしょう。
頭皮環境をベストに保つ第一歩は、頭皮ケア効果のあるシャンプー法を実践することです。
髪の毛を洗うというより、頭皮マッサージをするという意識でシャンプーをしましょう。
シャンプー剤やトリートメント剤は、頭皮にいい影響のあるものを選びます。
シャンプー剤に配合されている洗浄成分、つまり界面活性剤は、洗浄力の強い高級アルコール系や石鹸系と、洗浄力の弱いアミノ酸系があります。
洗浄力の強いシャンプー剤は、洗った後にスッキリ感があって気持ちがいいのですが、強い洗浄力のため頭皮に必要な分の皮脂まで洗い流してしまいます。皮脂不足になると必要量を保つために皮脂は分泌量を増やします。そしてその結果、頭皮の皮脂が過剰になってしまいます。
洗浄力の弱いアミノ酸系のシャンプー剤は、髪の毛や頭皮の汚れと余分な皮脂だけを洗浄するので、正常な皮脂量の頭皮環境が維持できます。
シャンプー剤はアミノ酸系のものを選んで、頭皮マッサージをするようにシャンプーをしましょう。
育毛剤で発毛促進、医療機関でハゲ治療を
育毛剤は即効性は期待できませんが、継続して使うことで効果があらわれます。
医薬部外品の育毛剤には、育毛のほか、脱毛抑制、発毛促進、フケかゆみの予防などの効果が認められている成分が配合されています。薄毛や頭皮の状況に応じて、適切なものを選んでください。
ハゲの進行があまり進んでいない時期に、専門の医療機関を訪ねて治療相談をするのもいいでしょう。
医療機関は、皮膚科とAGA専門クリニックです。
ハゲがそれほど進行していない場合は皮膚科を、ハゲの症状が進行していたらAGA専門クリニックを訪ねるのがいいでしょう。
まとめ
男性型脱毛症(AGA)の症状は、一定の法則をもって進行するとされています。
現在その目安とされているのが、アメリカの皮膚科医ハミルトン氏がつくった薄毛の分類パターンを、後に医師のノーウッド氏が改定した「N-H分類」です。これは、薄毛が症状の進行状況でI〜Ⅶ型に分けられています。
この7つの症状の始まりは、前頭部の生え際から頭頂部へと進行するM字型と、頭頂部が丸く進行していくO字型の2つです。
そしてM字型が進行し、O字型と合体して、さらに後方へと進行してU字型になることもあるとされます。
いずれにせよ薄毛やハゲの症状は、一度始まったら、放っておけば待ったなしで進みます。そしてある時期からその速度は増します。
気づいたときが、ケアや治療の始めどきと考えるべきでしょう。進行状況に合わせた的確な対策を、躊躇せずに実践することをおすすめします。
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