抜け毛にはいろいろな原因が考えられますが、その一つに栄養不足が考えられます。髪の毛は私たちが食べた物が体内で分解され、そして再合成されて作られます。体内で合成される栄養もありますが、栄養が不十分だと髪の毛の成長がスムーズにいかないようです。
栄養不足は抜け毛以外にも髪への悪い影響があり得ます。栄養不足になりやすい人、髪の成長に良い栄養素や食品、栄養不足による抜け毛が起きた時の対処法について確認しましょう。
抜け毛が増える原因
毎日自然と50~100本の髪の毛が抜けるそうですが、抜け毛の本数がいつもよりも増えてきたら心配になりますよね。抜け毛が増える原因にはどのようなことが考えられるのでしょうか。遺伝性の原因、栄養不足など日頃の生活習慣が関わる原因についても見てみましょう。
男性ホルモンDHTの影響
男性の抜け毛・薄毛の症状は、男性ホルモンDHTによって起きる男性型脱毛症(AGA)のケースが非常に多いです。
男性ホルモンのほとんどはテストステロンというホルモンですが、5αリダクターゼという毛乳頭の還元酵素と結びつくとDHTになります。DHTは髪のヘアサイクルの成長期を短縮して、抜け毛を増やします。
DHTの影響は遺伝による要因が大きく、AGAは治療薬・成長因子の服用、投与などでも改善が可能です。しかし薬の使用や服用をやめると、また脱毛が進行してしまいます。
女性ホルモンの減少
女性は加齢により女性ホルモン量が減少していきます。女性ホルモンは髪の毛の成長を促す作用があるので、減少することで抜け毛や薄毛が起きやすくなります。出産後の女性も妊娠中より減少することで一時的な脱毛が起きることがあります。
男性のAGAではおでこの髪が後退したり、頭頂部の髪の毛が抜けて生えなくなったりしますが、女性の場合は分け目を中心に全体的に髪が薄くなっていくびまん性脱毛症の症状になることが多いです。
食生活
髪の毛だけでなく、皮膚、骨、内臓などは食事から得られたたんぱく質からできています。またたんぱく質から体の器官が作られるのには他の栄養素も必要です。
栄養不足で身体に必要な栄養素が摂取できないと抜け毛をはじめ、身体にさまざまな症状を引き起こします。
また栄養が多くても動物性脂肪が多い食事は血流を悪くし、糖質の多い食事は体内のたんぱく質を減少させ、抜け毛につながる可能性があります。摂取カロリーが多くても髪の健康には良くないこともあるようです。
睡眠不足
睡眠中は身体の細胞を修復し、髪の毛や身体の器官を健康に保つ成長ホルモンが分泌されますが、睡眠不足や浅い眠りだと十分な成長ホルモンが分泌されません。血流も悪くなり、ストレスもたまりやすく、栄養不足でなくても栄養が身体に行き渡りにくくなります。
ストレス
ストレスが原因でホルモンバランスが乱れ、男性ホルモンの分泌量が増えて男性ホルモン優位になり、髪を育てる女性ホルモンの作用が弱められてしまうことがあります。
また血流を悪くして栄養が行き渡らず、寝つきが悪くなることで睡眠不足で成長ホルモンの分泌量が不足することもあります。
頭皮トラブル
頭皮トラブルによって頭皮の炎症が悪化すると、抜け毛が増えることがあります。頭皮の湿疹(皮膚炎)には乾燥性湿疹や脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎などがあります。頭皮に異常を感じたらすぐに皮膚科で診てもらい、早い段階で対策しておくと良いでしょう。
栄養不足で抜け毛が起きる理由
栄養不足で髪に必要な栄養が行き渡らないと、抜け毛や薄毛などが起こるそうです。髪の毛が生成されるメカニズムを確認しつつ、栄養不足や栄養過剰で抜け毛などの髪のトラブルが起こる理由についても、詳しく見ていきましょう。
髪の主成分ケラチンの成分が不足
髪の主成分はケラチンというタンパク質でできています。ケラチンは18種類のアミノ酸から構成され、そのうち9種類はフェニルアラニン、ヒスチジン、スレオニンなどの必須アミノ酸です。必須アミノ酸は体内で合成されないので、食事から摂取しないといけません。
ケラチンは髪の毛以外にも肌の角質、爪を作っています。ケラチンの成分であるアミノ酸(たんぱく質)が不足すると、健康な髪や爪が育ちにくくなります。
ケラチンの生成に必要な栄養素が不足
ケラチンが生成されるにはビタミンやミネラルの力も必要です。ビタミンやミネラルには血流を良くしたり、皮膚や粘膜を正常にする働きがあります。そして体内のアミノ酸からケラチンが合成されるのをサポートする働きがあります。
ビタミン、ミネラルの中でもビタミンB群、亜鉛が特に髪に必要な栄養素とされています。ビタミンB群はいろんな食品に含まれていますが、各ビタミンBが働くのを互いに補う作用があり、B群全体と摂取する必要があります。単調な食生活だと不足するビタミンも出てきます。
亜鉛は不足しやすい栄養素だと言われています。牡蠣には亜鉛が豊富に含まれていますが、毎日食卓に上るような食材ではないでしょう。亜鉛を含む食品をいくつか摂取しないと、1日の必要量が得られません。
生命維持に必要な器官が優先
毛根の根元にある毛球部先端に、毛乳頭細胞があります。頭皮の毛細血管から毛乳頭細胞が栄養を受け取り、毛母細胞へ栄養を受け渡します。栄養を受け取った毛母細胞が分裂することによって髪の毛が生まれ、さらにメラノサイトが髪へ色をつけて黒い髪が生まれます。
ところが髪の毛が生成されるのに必要な栄養素が不足すると、内臓など人間の身体の生命維持に関係が深い部分から優先的に栄養が使われ、毛髪や肌、爪などへの栄養が後回しになりやすいです。
毛乳頭、メラノサイトに栄養が行き渡らない結果、抜け毛や薄毛、切れ毛や枝毛、しなやかだった髪がパサついたりごわつくなどの髪質の変化が起きたり、白髪になることもあります。
栄養不足になりやすい人
最近抜け毛が増えたなあと育毛剤を使っている人もいるかもしれませんが、栄養不足だとその効果も今一つかもしれません。栄養不足になりやい生活を送っていないか、日頃の生活を振り返り、自分が下記のタイプに当てはまらないかチェックしておきましょう。
ダイエット中の人
ダイエットも健康的なダイエットなら良いのですが、早く体重を落としたいからとカロリーを気にして、無理な食事制限をしている人もいるかもしれません。
食事のみでダイエットをすると栄養不足で身体に必要な筋肉まで落としてしまい、血行も悪くなる恐れがあります。単品ダイエットや過度な糖質制限は危険なので、運動を取り入れつつ健康的なダイエットをするようにしてください。
偏った食事をしている人
栄養バランスの悪い食生活だと、カロリーは足りていても髪や肌の調子が悪くなってしまいます。糖質や脂質が不足することは少ないですが、タンパク質、ビタミン、ミネラルは好き嫌いがあると不足することがよくあります。
日頃の食事内容が単調になりがちな人はメニューを日々替えることを意識して、いろんな食品からバランスよく栄養素が摂取できるようにしましょう。
授乳期間中の女性
母乳で赤ちゃんを育てているママさんは、しっかり食事を摂っているつもりでも、赤ちゃんに栄養を与えることで栄養不足になるケースもあります。また産後の脱毛期間で悩みを抱えやすい時期でもあるので、授乳中の女性に必要な量の栄養が摂れるように注意しましょう。
胃腸が悪い人
胃腸が悪いと栄養の吸収が悪くなりがちです。食事をきちんと摂っているつもりでも、栄養の吸収が悪ければ体に必要な栄養素が足りなくなります。しっかり食べているつもりでも栄養不足状態になってしまい、髪にも抜け毛や薄毛などの悪い影響が起きやすくなります。
栄養不足で抜け毛になった人の体験談
お悩み相談サイトの「発言小町」で、体調不良で抜け毛に悩むトピ主さんへの回答に、ダイエットや拒食症で抜け毛の経験した方たちの体験談記事が掲載されています。
極端に体重を落とし栄養失調状態になると抜け毛の本数が極端に多くなったり、かつらも必要になったり、髪の色も変色したという体験談も寄せられていました。
特に極端なダイエットや摂食障害は生命にも関わりますので、無理はしないようにしましょう。(参考・関連記事はコチラ)
抜け毛を防ぐ、髪に良い食べ物
ダイエット、偏食などによる栄養不足で、抜け毛以外にも枝毛や切れ毛、髪が細くなってコシがなくなったなどの髪質の変化に悩みがある人は、食事改善で髪の毛も徐々に元気を取り戻せるでしょう。髪の毛に良いと言われる食べ物をいくつかご紹介します。
たんぱく質を多く含む食材
たんぱく質は髪の毛の主成分ケラチンの原料となります。たんぱく質によって血液、臓器、骨、皮膚が作られます。たんぱく質は私たちの体を構成する大事な栄養素ですので、不足しないようしっかり摂取しましょう。
たんぱく質を多く含む食材には、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉、あじ、まぐろ、さんまなどの魚、卵、牛乳、チーズ、大豆・大豆製品などがあります。
ビタミンB群を多く含む食材
ビタミンB群には血流や細胞分裂の促進作用、代謝を良くして皮膚や粘膜を健康に保つ作用、皮脂をコントロールする作用があり、髪を作る毛母細胞やメラノサイトの活性化、頭皮環境を整える作用があります。
またケラチンが作られるのにも必要な栄養素で、ビタミンB群はビタミンの中でも髪の毛にとって重要なビタミンです。
ビタミンB群はレバー、うなぎ、たらこ、卵黄、小松菜、玄米、納豆などに多く含まれています。魚全般、レバーに含まれていますが、摂り過ぎは脂質やビタミンAの過剰摂取になる恐れがあります。
ミネラルを多く含む食材
ミネラルは身体の調子を整え、骨や歯の原料になる栄養素です。亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウムなどがありますが、特に亜鉛は髪の生成に必要な栄養素であり、男性の脱毛症の原因になるDHTの生成を抑制する効果もあるとされています。
亜鉛が多く含まれる食材には牡蠣、豚レバー、卵、鶏肉、煮干しなどがあります。特に亜鉛が多いのは牡蠣で、男性で1日5個、女性で1日4個で1日の亜鉛の必要量を摂取できます。
緑黄色野菜
緑黄色野菜は各種ビタミンが含まれており、血流促進や肌を健康にする作用があります。緑黄色野菜に含まれているβカロチンは、体内で必要な量だけビタミンAに変換されます。
ビタミンAには肌や粘膜、髪を健やかにする作用があります。ビタミンAの過剰摂取は身体に悪い影響がありますが、緑黄色野菜のβカロチンは体内に必要な分のみビタミンAに変換されるので安心です。
大豆・大豆製品
大豆にはイソフラボンが含まれており、女性ホルモンのエストロゲンと似たような作用があります。エストロゲンは髪を健康に育てる作用があり、エストロゲンの分泌が減ると髪が抜けやすくなります。
イソフラボンにはエストロゲンの調整を行ったり、抜け毛の原因になる男性ホルモンの生成を抑制する作用もあると言われています。
大豆製品には豆乳、おから、豆腐、納豆などがありますが、特に納豆は優れた食品とされています。豆乳・豆腐にも栄養が多く含まれていますが、大豆を分離して作っているので、大豆より栄養が落ちてしまうそうです。
また大豆のたんぱく質は動物性たんぱく質より身体に吸収されにくいのですが、納豆は大豆よりたんぱく質の吸収率が高くなります。
たんぱく質、ビタミンB群、亜鉛を含み、さらにたんぱく質が吸収されやすく栄養価が高いということで、納豆は育毛対策としておすすめ度の高い食品とされています。
栄養不足による抜け毛の対策・対処法
栄養不足によって抜け毛になった人は、まず食生活の改善をして、髪に良い栄養を積極的に摂取しましょう。そして食生活の改善と併せておすすめな抜け毛予防・育毛対策法も紹介しますので、育毛対策の参考にしてください。
食生活の改善
栄養不足で抜け毛や髪の傷みなどの変化は、男性でも女性でも起こる可能性があります。抜け毛を予防し健康な髪を育てるためにも、日々の食事内容にバリエーションをつけるようにし、タンパク質、ビタミン、ミネラルをまんべんなく摂取できるようにしましょう。
サプリで栄養補給
食生活の改善をしたいと思っても、どうしても好き嫌いがあったり、仕事の日はゆっくり食事が摂れないなんていう人もいるでしょう。
日頃の食事だけで栄養をまんべんなく摂取するのが難しいという人は、サプリメントで不足しがちな栄養を補う方法もおすすめです。
育毛効果が期待できる育毛サプリもあります。サプリによって成分が異なりますが、マルチタイプのものだと髪の健康に良いアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素、ノコギリヤシやイソフラボンなどの抜け毛予防や育毛促進効果が期待できる成分が入っています。
たんぱく質を効率良く摂取できる粉末プロテインも運動をしている人におすすめです。プロテインにもビタミンやミネラルなど他の栄養素も入っているものもあります。
適度な運動
筋トレは髪や肌を育てる成長ホルモンの分泌を促します。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は血行・代謝を促進し、細胞分裂が活発に、健康な髪を育てるのにも効果が期待できます。
ヘアケア・頭皮ケア
頭皮環境を整え、頭皮の血行を促進させることは育毛対策にもなります。栄養不足で肌が弱っていることも考えられます、低刺激の肌に優しい洗浄成分のシャンプーや育毛用のシャンプーが良いでしょう。
またシャンプー前にオイルマッサージをすることで、頭皮の血行を良くして毛穴の汚れも落としやすくなります。週に1回ぐらいの自宅ヘッドスパ感覚で、頭皮ケアすることもおすすめです。
育毛剤で育毛対策
より積極的な育毛対策として、育毛剤とマッサージを毎日実践することもおすすめです。抜け毛予防、育毛、発毛促進効果のある育毛剤を毎日使うことで、健康な頭皮と髪に育てていくことが期待できます。
抜け毛がひどい時の注意・対処法
抜け毛がひどくなかなか収まらない時は、自己判断のケアで済ませず薄毛治療のクリニックなどで相談し、必要に応じて適切な抜け毛・薄毛対策の治療を受けるようにしましょう。薄毛の症状が進んでしまう前に早めに治療することで、症状も早く改善されるでしょう。
まとめ
抜け毛の原因には、ホルモンの影響、ストレス、睡眠不足以外に、栄養不足も考えられます。髪の毛はケラチンというタンパク質が主成分ですが、ケラチンが生成されるのに、また体が正常に機能するのにビタミンやミネラルの力も必要です。
ダイエットや偏食などの栄養バランスを欠いた食生活は、抜け毛や薄毛、白髪や髪のダメージにもつながります。
栄養不足による抜け毛が起きたら食生活を見直し、タンパク質、ビタミンB群、亜鉛などのミネラルをバランスよく摂取することで、抜け毛も改善されてくるでしょう。
タンパク質は肉や魚、卵、牛乳、大豆・大豆製品、ビタミンB群はレバーや玄米、緑黄色野菜、亜鉛は牡蠣、卵、納豆などに多く含まれています。食事のみで各栄養素を摂取するのが難しい場合は、サプリメントの摂取もおすすめです。
食生活の改善以外にも適度な運動、ヘアケア・頭皮ケアで頭皮環境改善、育毛剤での育毛対策も併せて行うのも良いでしょう。
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