かゆいと思って頭を掻いたとき、どうもそのあたりに白髪が多く生えているみたい…そんな風に感じたことはありませんか。白髪が生えていることと、頭皮のかゆみを感じることの間には、なんとなく関係があるのでは、と考えている人もいるかもしれません。
そこで、今回は頭皮のかゆみの原因と白髪のメカニズムについてご紹介してみたいと思います。
目次
白髪のかゆみとメカニズム
白髪が生えてきたときの頭皮のかゆみがある、というのは本当でしょうか。また、そもそも白髪が生えてくるということはどういうことなのでしょうか。白髪のかゆみとメカニズムについて、ここではご説明してみたいと思います。
白髪とかゆみの関係
白髪が生えてくると頭皮がかゆくなる、とよく言われます。経験的に白髪が生えている部分の頭皮とかゆみの間には何か関係があると感じられても、医学的に原因は突き止められてはいないのです。
よく引き合いに出されるのが、髪の太さの違いです。白髪のほうが太いから、毛穴が刺激される、といった説明がなされることがあります。しかし、これは誤った俗説にすぎません。そもそも、白髪が太いという事実には誤解があるのです。
後で詳しく触れますが、白髪には黒髪のように細い毛が混じっていないため、平均すると黒髪より白髪のほうが太くなる、ということです。逆に言えば、白髪が太いのではなく、黒髪に細い毛が混じっているため、平均すると黒髪が細いという平均値が得られてしまうだけなのです。つまり、研究結果の意味を読み違えているのです。
白髪が太いから毛穴が刺激される、という言い回しだと、これまで黒髪が生えていた毛穴から、にょきにょき太い白髪が無理やり生えてくるようなイメージを持ちがちですが、これは事実に反する、ということですね。
次に、この流言の根拠になったと思われる、資生堂の白髪研究について触れてみたいと思います。
資生堂の白髪研究
2004年、日本研究皮膚科学会等で発表された、資生堂と北里大学の勝岡教授による共同研究によると、日本人37名の被験者から、32000本の毛髪を採取して解析を行いました。その結果、黒髪と白髪にはいくつかの違いがあることが分かりました。
白髪は発生しやすい場所があるが、後頭部では特に少なく、白髪は黒髪より太く、また白髪は黒髪より速く伸びる傾向があることがわかりました。しかし、白髪が太いことと成長速度が早いという点の理解には注意が必要です。
これは白髪そのものに細い毛が少ないことが原因であると考えられます。細い毛は成長速度も遅いため、その平均値を下げてしまうのですが、白髪にはそういった毛が混じっていないため、平均値上差が出るだけです。通常の太い黒髪と、白髪を比較したとき、白髪のほうが太い、という話ではないことに注意が必要です。
なおこれらに加えて、黒髪の断面は円形に近いのに対して白髪は扁平に近いこともわかりました。すなわち、白髪は細い毛が少なく、平べったい形をしているということが、この研究で示された成果なのです。
黒髪と白髪のメカニズム
そもそも、白髪が生えるということはどういうことなのでしょうか。それを理解するためには、まず黒い髪の毛が生えるまでのプロセスを知る必要があります。
まず頭皮の下のいわゆる毛根と呼ばれる場所に毛球部が存在し、これは植物の球根に該当します。
さらにそこには毛乳頭があり、毛細血管を通して運ばれてきた養分をたくわえています。この毛乳頭の周囲に、毛母細胞が存在しています。この毛母細胞が髪の毛を作り出してくれる細胞です。毛乳頭から栄養を得て、細胞分裂を繰り返して、髪の毛がつくられていくという仕組みになります。
しかし髪は、本来色がなく、白髪状態が自然なのです。毛母細胞がつくれるのは白髪だけだからです。そこに色を足していくのが、メラニン色素細胞(別名:色素幹細胞、メラニン細胞、メラノサイト)という細胞です。この色素細胞が、メラニン色素を出すことによって、私たちの髪の色がつくわけです。
髪の毛は一定サイクルの中で自然に抜けていきますが、このとき同時に色素細胞までも失われてしまいます。その後、通常であればふたたび補われて、次に生えてきた髪の毛もきちんと色がつくのです。
しかし、何かの加減で色素細胞が補われないままだと、白髪のまま生えるようになってしまいます。この色素細胞が失われてしまうメカニズムは完全には理解されていません。
かゆさの原因と対策
白髪の太さはかゆさにかかわりがない、ということがわかりました。ここでは、頭皮がかゆくなる原因を確認し、どのような方法があるののかご紹介します。
かゆさの原因
頭皮がかゆくなる理由は何があるのでしょうか。一般的な頭皮のかゆみの原因について、触れていきます。
皮脂と炎症
食事に脂質や炭水化物が多い場合などに皮脂が過剰に分泌されると、皮膚の常在菌であるマラセチア真菌が増加することと、皮脂を分解するときに発生させる脂肪酸が原因で炎症が起きます。これを脂漏性皮膚炎と言います。頭皮や顔、体にニキビのような湿疹を引き起こし、かゆみをもたらす原因になります。
地肌の乾燥
肌の乾燥によって、皮膚の保護機能が低下してしまえば少しの刺激でかゆさを感じてしまいます。日に何度も洗髪したり、ドライヤーを当てすぎて肌を乾燥させるとかゆみの原因になります。
シャンプー剤の洗い残し
シャンプー自体に含まれる界面活性剤は皮脂を落とす洗浄力に優れていますが、地肌に残るとそれが刺激になってしまいます。すすぎの残しのないようしっかり洗う必要があります。
かゆさ対策
頭皮の痒さの原因がわかったところで、それに対してどのような対処法があるのか、確認してみたいと思います。
シャンプー剤やカラーリング剤などを変える
シャンプーやリンス、ヘアカラー剤などを低刺激性のものに変えるだけで症状が緩和することもあるようですので、試しにべつのものを利用するのもよいでしょう。
美容室や美容室でカラーリングをされる方はパッチテストはお済だと思いますが、頭皮のかゆみがあることを伝えて、美容師に相談するのもありかもしれませんね。
育毛シャンプーやローションなどを使う
地肌のかゆみを抑える成分を配合した育毛シャンプー、育毛ローションを使用することでかゆみを防ぐことができます。ローションであれば頭皮の乾燥や薄毛対策にもなります。
お風呂場では頭皮に対してシャンプーマッサージを行い、お風呂上りに頭皮ケア・ヘアケアやを行う習慣を身につけると血行・血流が良くなって、頭皮環境の改善が期待できます。
専門家に相談する
頭皮が赤くなっていたり、湿疹が出ていた場合は市販の薬を利用するよりも、皮膚科などの専門医に相談するほうがいいかもしれません。たとえば脂漏性皮膚炎だった場合には抗菌薬などを処方してくれる場合もあるようです。
また、その炎症やかゆみが他の病気に起因する可能性もありますので、心配な方は病院で検査してもらいましょう。
白髪の原因と対策
頭皮に黒髪と白髪が生えるメカニズムはすでにお話しました。しかし、なぜ白髪は生えてきてしまうのでしょうか。なぜ、黒髪になってくれないのか、その原因と生活上で可能な対策法をここでは紹介してみたいと思います。
白髪の原因
白髪のメカニズムのところでは、白髪が生えてくるのは、色素細胞が補われないことが理由であると述べました。髪に備わっている色素細胞が働かなくなってしまう理由には何が考えられるのでしょうか。それに触れていきたいと思います。
メラニン色素の材料不足
髪の色を保つメラニン色素の材料となる物質が足りないのであれば、髪の色を保つことはもちろんできません。その物質は、チロシンというアミノ酸で、色素細胞がこのチロシンを酵素に変えることでメラニン色素を作り出していく仕組みです。
食事摂取などがおろそかになって、チロシンが足りていなければ白髪の原因になりかねません。ちなみにチロシンは肉や魚やチーズなどの動物性タンパク質に豊富に含まれます。
メラノサイトの機能不全
ただし、チロシンは非必須アミノ酸で、体内で合成が可能です。普段の食生活が、著しく偏らなければ、チロシンが不足は考えにくいでしょうメラニン色素をつくれない最大の理由は、色素細胞の機能不全です。
刺激の強いシャンプーや整髪料、毛穴の詰まり、乾燥、紫外線などによる物理的なストレスは頭皮環境へのダメージをもたらし、細胞の正常な働きを阻害してしまいます。
睡眠不足もまた、白髪を悪化させかねません。夜の21時以降は髪が成長する時間帯でもあります。就寝時間が遅くにずれたり、不規則になってしまう場合は改善する必要があります。
さらに過酸化水素は、メラニン色素を壊し、メラニン色素のもとであるチロシナーゼの形成を阻害するため、黒髪を作り出せなくなります。過酸化水素は、ホワイトニング剤の入ったのはみがき粉や、髪を脱色するブリーチ剤、白髪染めヘアカラーなどに含まれます。
外から取り込んでしまえば体の中に蓄積される危険性があるため、これら過酸化水素を含む製品の使用は避けたほうがいいでしょう。白髪染めには過酸化水素の含まれないカラーリングシャンプーやヘアマニキュア、天然成分のヘナカラー(ヘナマニキュア)を利用するとよいでしょう。
遺伝子との関係
白髪については遺伝子レベルの研究もおこなわれています。少し古い研究ですが、2002年に花王は白髪の発生に対しての研究を発表しています。FGF(線維芽細胞成長因子)を生成する遺伝子の量が減ることが、メラノサイトの増殖や髪の毛をつくる細胞の細胞死と関連性があることを示唆しました。
花王は白髪予防剤などの開発に余念がないようですが、今のところ製品化には至っていないようです。
また、比較的最近の研究では興味深いことが分かっています。イギリスのロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の遺伝学研究所が2016年に発表した研究結果によると、白髪化の初期段階にIRF4という遺伝子が関与していることがわかったそうです。
IRF4遺伝子は、それ単体で影響を与えているわけではなく、そのほかの遺伝子との相互作用によって、白髪化が生じさせていることが考えられます。分析が進めば、その結果を応用して白髪化を抑止する医薬品などの製品化が期待できます。
白髪対策
遺伝子レベルの原因に対しては対策のしようがありませんが、生活上の工夫によって白髪を改善するチャンスはあります。白髪対策に有効な方法をいくつかご紹介しましょう。
チロシンの摂取
メラニン色素の生成に欠かせないもっとも重要な栄養素が、アミノ酸の一種であるチロシンです。これを補って、髪の白髪化の原因を根本から防ぎましょう。
不眠対策や集中力を補うことを目的としてチロシンのサプリメント商品が販売されているようですが、白髪対策ではここまでは必要ないでしょう。通常の食事を摂取するとき、たらこ、しらす、大豆などのタンパク質が多く含まれているものを積極的に摂取しましょう。
栄養不足の改善
女性が白髪になってしまう原因として、女性ホルモンのエストロゲン減少が挙げられます。大豆イソフラボンが女性ホルモンと同等の働きをしてくれますので、大豆を積極的に摂取することには効果があるでしょう。大豆にはチロシンも含まれているのがうれしいところです。
白髪に効果のあるビタミンには、まずビタミンCがあります。抗酸化作用のおかげで過酸化水素や活性酸素を分解してくれます。ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、アセロラ、キュウイなど、野菜や果物に多く含まれています。
また、ビタミンBは頭皮の代謝を高め、チロシンの吸収を促進してくれます。また、過酸化脂質の分解や頭皮の炎症などにも効果があります。ビタミンBは8種類あり、すべてバランスよく摂取する必要があります。牛豚鶏のレバーや、卵、大豆、魚肉などタンパクなものに含まれています。
全体的には大豆を中心とした肉・野菜などにこれらの成分が含まれています。髪に良い栄養素ばかりですので食生活に取り入れていきたいですね。もし、食事からとれない場合はサプリメントも活用していきましょう。
成長ホルモンを促す
加齢が進行すると成長ホルモンの分泌が減少してきますが、これが原因で白髪が生じ始めると言われます。
そもそも、成長ホルモンは、思春期に分泌されて身長を伸ばしたり体をつくったりする作用がありますが、30歳を過ぎると体内で分泌される量が減少していきます。役割としては、疲れやすさを解消したり、脂肪を分解したり、筋肉や骨をつくり、免疫を強化してくれます。
それが不足する場合は、逆に疲れやすく、意欲がなくなり、肌や皮膚が老化し、白髪の原因にもなります。
それでは、成長ホルモンの量を高めたり、維持したりするにはどのうすればよいのでしょうか。
成長ホルモンは主に睡眠中に多く分泌されます。成長ホルモンのためにも、睡眠時間は確保していきましょう。
そしてより多くの成長ホルモンを分泌させるには、運動やスポーツが有効です。しっかり体を動かしてあげれば成長ホルモンが分泌され、白髪の改善につながるでしょう。
また、食事を摂る場合はお腹がすいてからとるようにしましょう。空腹がピークのときにはグレリンという物質が分泌されて、それがスイッチとなって成長ホルモンが分泌されるのです。
常に間食をしたり、3食取ることが健康に良い、という考え方ので、お腹がすいてもいないのに食事を摂るクセが身にについてしまっています。1食、もしくは2食、食事を抜くことで健康につながる可能性も指摘され、すでに実践している人も多いようです。
また、成長ホルモンを促すサプリメントもあります、IGF-1と呼ばれる成長因子を直接接種できるものや、アミノ酸の一種であるアルギニンなどにその効果があると言われています。
とは言え、生活習慣を改善することによる成長ホルモンの分泌のほうがはるかに効果が高いと言われていますので、睡眠や食習慣、運動習慣を見直し、健康を兼ねて、白髪改善に取り組んできましょう。
まとめ
今回は、白髪のかゆみについて取り上げてみました。いかがだったでしょうか。
もともと髪は白髪であり、黒髪より白髪のほうが太い、というのは迷信でした。同じ毛穴から毛が生えてくるとき、色がついて生えてくるか、そうではないか、という違いだけなので、当然と言えば当然ですね。そして、白髪とかゆみの関係は解明されておらず、まだまだ隠された仕組みがあるようです。
そもそも「なぜ白髪が生えるのか」ということ自体に答えが出されていません。できれば白髪染めを使わず、白髪自体をなくしたいものですが、遺伝子レベルの研究がこれから進んで、それを抑止してくれる製品が誕生することを期待してきたいものです。
日ごろの生活で見直せるところを見直し、頭皮環境を整えて、かゆみのない地肌と白髪の少ない健康な髪を手に入れましょう。
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