AGAで悩んでいる人にとって、発毛を目的にしたケアは重要な日常のテーマです。
頭皮マッサージは、効果のある発毛目的のケアとしてあげられることが多いのですが、本当に有効な対策なのでしょうか。
また、発毛ケアに限らず、効果があるといわれてもやり方を間違えれば逆効果ということもあります。
頭皮マッサージが、薄毛やAGAの改善に有効かどうかをもう一度見直してみましょう。
また、本当に効果のあるマッサージとはとんなものなのかを検証してみたいと思います。
目次
発毛のメカニズム
発毛を促進する対策を実践する前に、なぜ薄毛になりハゲたりするのか、原因とメカニズムを知ることは大事です。まず、AGA(男性型脱毛症)の原因とされる男性ホルモンの働きについて理解しましょう。
AGA(男性型脱毛症)の原因
AGAは、症状が額や頭頂部にあらわれる大人の男性特有の脱毛症で、主な原因は男性ホルモンです。
男性ホルモンは一般的には、筋肉の発達を促進し、ヒゲや胸毛などを濃くします。
血流で前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞まで運ばれた男性ホルモンのテストステロンは、II型5αリダクターゼの働きで、強力な男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。
そして、DHTは毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体と結合し、ヒゲや胸毛では細胞成長因子などを誘導するために成長期が長くなり、前頭部や頭頂部では毛母細胞の活動が制限されて成長期が短くなります。
その結果、ヒゲや胸毛は成長して濃くなり、額や頭頂部は軟毛になったり成長の途中で抜けたりします。
頭皮の構造
頭皮、つまり頭の皮膚の構造をみてみましょう。
皮膚は、表面から皮膚内部に向かって、表皮、真皮、皮下組織という層に分類されます。
皮膚組織を外部刺激から守る、いわゆるバリアが「表皮」です。表皮の状態が悪くなると、バリア機能が失われ、皮膚組織は外部からのダメージを直接受けることになります。
皮膚の大部分を占めているのが「真皮」で、コラーゲンやヒアルロン酸で構成されています。神経や血管が張り巡らされ、髪の毛の元になる細胞、皮脂腺、エクリン腺やアポクリン腺といった汗腺もここにあります。
皮膚のもっとも深いところに位置しているのが「皮下組織」です。主な成分は脂肪で、体温の調節やクッションのような働きをしています。
表皮の構造とターンオーバー
表皮は、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層で成り立ち、この中で皮膚組織のターンオーバーが繰り返されています。
基底層で細胞分裂が行われ、順に上の層へ押し上げられ、最終的に角質層で角片となって剥がれ落ちます。
これがターンオーバーで、正常なら1サイクル4週間(28日間)かかります。
ターンオーバーが乱れると、表皮の保湿などのバリア機能が失われ、細菌や紫外線、強い薬剤などの外部からの刺激が皮膚組織内部に影響します。
ターンオーバーが正常なら、剝がれ落ちる角片は目に見えません。しかし、ターンオーバーのリズムが乱れると角片は目に見えるフケとなります。
皮脂膜は、皮脂と汗が混ざり合って表皮を覆って保湿し、外からの刺激で皮膚がダメージを受けないよう守ります。
皮脂膜は表皮の最も外側で空気(=酸素)や紫外線とじかに接していため酸化し、過酸化脂質に変わります。この過酸化脂質は肌には有害で、皮膚に必要な皮脂膜や細菌類を攻撃して取り込み、酸化を皮膚の内部へと進めます。これが、髪の毛の成長を阻む原因です。
頭皮から髪の毛が生える仕組み
毛根部は皮膚の皮下組織に接していて、毛根の中では細胞分裂が行われています。
毛根で生まれた髪の毛は皮膚組織の上へ向かい、真皮層、角質層を通って、毛穴から頭皮の外へと伸びていきます。
毛穴の数は、生まれたときから終生変わらず、髪の毛の本数と髪の毛の質は遺伝的な要因があるといわれます。
1つの毛穴から生える髪の毛は1本とは限りません。1つの毛穴から2、3本、多い場合は5、6本生えることもあります。
髪の毛は1センチ四方におよそ150本生えていて、髪の毛の総数は、日本人の場合は平均10万本といわれています。少ない人で7、8万本、多ければ13から14万本とのことです。
毛乳頭の周囲には毛母細胞があります。この毛母細胞が、皮膚組織の中を走っている毛細血管から栄養を十分に取り込めるかどうかが、毛根内で作られる髪の毛の成長の最大のポイントになります。
髪の毛に栄養を届ける頭皮の血流
毛根に十分な栄養を供給するには、栄養を運んでくる血流が正常に維持されていなくてはなりません。
毛乳頭から毛母細胞へ「髪の毛を製造せよ」という指令が出され、毛母細胞は新しい髪の毛をつくり始めます。
毛細血管の血流が悪く、毛母細胞が栄養を十分に取り込めないと、毛乳頭は正常な活動ができなくなります。毛乳頭が「髪の毛を製造せよ」という指令が出せなくなると、新しい髪の毛はつくられません。
血流が悪くなったり、滞ったりすることは、髪の毛の製造や成長を阻害するだけでなく、私たちの体のさまざまな活動に支障をきたすことになります。
髪の毛1本ずつにあるヘアサイクル
新しく生まれた髪の毛は、栄養状態や頭皮環境に問題がなければ順調に成長し、太くて長いしっかりした髪の毛になり、やがて寿命がきて抜け落ちます。抜け落ちると同時に、同じ場所から新しい髪の毛が生えてきます。
これが髪の毛の一生、ヘアサイクルです。髪の毛1本1本はそれぞれのヘアサイクルで成長し、抜け落ちる時期は1本ずつ違います。ある部分がまとめて抜けるようなことがあったら、それは頭皮や髪の毛に重大な問題が生じているということです。
1日に抜け落ちる髪の毛の数は、50本から100本といわれています。ヘアサイクルが正常であれば、同時に同じくらいの本数の髪の毛が生まれていますから、髪の毛の総数はあまり変わりません。
正常なヘアサイクルで抜け落ちた髪の毛には毛根がついていて、太さは根元から毛先までほぼ同じです。それに対して、寿命を全うできずに抜けてしまった髪の毛は、毛根が萎縮して細く、全体の太さも一定でなく毛先は細くなっています。
ヘアサイクルの全期間は、個人差や性別でも差がありますが、4年から6年です。
5段階のヘアサイクル
また、ヘアサイクルは大きく5つの段階に分けられます。
第一段階
寿命になった髪の毛が抜け落ちるために毛根から離れると、同時に毛乳頭が毛母細胞に指令を出して新しい髪の毛をつくり始めます。これが、新しい髪の毛が生まれる「成長期の第1段階」です。
第二段階
寿命になった髪の毛が新しく生まれた髪の毛に下から押され、自らも抜け落ちようとしている時期が「成長期の第2段階」です。抜け落ちようとしているこの時期の髪の毛は、簡単に抜けてしまいます。シャンプーやブラッシングをしているとき、何もしていないときに自然に抜けるのはほとんどがその時期の髪の毛です。
第三段階
そして、毛母細胞が活発に働いて髪の毛がもっとも成長する「成長期の第3段階」に入ります。この時期と、成長期の第1段階、第2段階を合わせると4〜6年の間、髪の毛は成長を続けて長く、太くなります。成長期の髪の毛は、全体の9割くらいです。
この成長著しい時期の髪の毛は、1日におよそ0.5ミリ、1カ月でおよそ1.2センチ、1年でおよそ15センチ伸びます。したがって、約5年間の寿命を全うし、その間一度も切らなければ、髪の毛は75センチくらいの長さになるということです。
第四段階
毛母細胞の活動が弱まり、髪の毛は次第に成長しなくなります。この時期が「退行期」で、2〜3週間です。
第五段階
そして、髪の毛の成長は完全に止まり、抜け落ちるために上へ移動しますが、この成長が止まって抜け落ちるまでの期間が「休止期」です。数カ月間あり、この間に毛根の奥では新しい髪の毛をつくる準備が始まっています。
発毛を促す日常のセルフケア
AGAは多くの場合、前頭部の生え際がM字型に薄くなったり、頭頂部が薄くなるという症状があらわれます。症状の進行を遅らせたり発毛を促進するには、AGA専門の医療機関での治療をおすすめします。
ただし、日常のセルフケアもとても大事です。
AGAは、治療で髪の毛が復活しても、治療をやめてしまうと元の状態に戻ります。AGAは、髪の毛が戻ってからも治療を継続すること、そして復活した髪の毛を健康な状態で維持するためにもケアが必須なのです。
初期であれば、日常のセルフケアは、症状をそこでくい止めたり進行を遅らせるために有効です。
シャンプーで頭皮環境を整える
アミノ酸系やスカルプ専用のシャンプーを使う
シャンプーには必ず、水と油を結びつける洗浄成分(界面活性剤)が配合されています。界面活性剤には、石油系と植物性のアミノ酸系があります。
石油系の界面活性剤が配合されたシャンプーは洗浄力が高く、頭皮の皮脂をほぼ全部落としてしまいます。皮脂は頭皮の保湿など重要な働きをしているため、適量を保っていなくてはなりません。洗浄してしまって皮脂不足になると、適量を保つために皮脂の分泌量が多くなります。それで、皮脂が過剰になって頭皮がベタつきがちになるのです。
一方、アミノ酸系のシャンプーは洗浄力が弱く、髪の毛や頭皮の汚れや余分な皮脂を落とし、頭皮に必要な分の皮脂は残ります。シャンプー後も皮脂が適度に残っているので、皮脂の分泌量が正常な頭皮環境を保てます。
また、頭皮ケア専用のシャンプーとして、スカルプケアシャンプーがあります。スカルプとは頭皮のことで、アミノ酸系シャンプーの代表ともいえる頭皮用シャンプーです。数ある商品の中でも「スカルプD」(医薬部外品)は、AGAや薄毛に悩む人に大人気です。
血行促進成分配合のシャンプーもおすすめ
血管を拡張する働きをする血行促進成分は、育毛剤のほぼ全ての商品に配合されていて、育毛シャンプーにも配合されているものがあります。商品を購入するときはの配合成分を確認しましょう。たくさんある中からいくつか紹介します。購入の際の参考にしてください。
医療用は、育毛効果や血行促進効果の実績があり、AGAの治療薬や育毛剤に多く使用されているものです。
天然由来は、昔から漢方薬として使用されてきたものが多く、副作用が少ないことが知られています。
・医療用 酢酸トコフェロール、ビタミンE誘導体、ニコチン酸アミド、塩化カルプロニウム
・天然由来 ローヤルゼリーエキス、チョウジエキス、エビネエキス、センブリエキス、サンザシエキス、チンピエキス、カミツレエキス、ショウガエキス
シャンプーのときに頭皮マッサージ
シャンプーは、髪の毛を洗うというより頭皮をマッサージするついでに髪の毛や頭皮の汚れを落とすと考えた方がいいかもしれません。
また、シャンプーのときに頭皮マッサージをすると、毛穴の汚れも除去できます。
頭皮マッサージ&シャンプーの仕方
1.シャンプー剤を手のひらにとって十分に泡立てます。
2.泡を髪の毛全体に行き渡らせたら。指の腹で頭皮をもみほぐすようにします。
3.〝気持ちがいい〟くらいの力加減で、爪を立てないように注意します。
4.親指以外の4本の指の腹を使って、頭皮全体を満遍なくマッサージします。
5.指全部を大きく開いて、指の腹で頭皮をつかむようにして、力を入れたり抜いたりしながらマッサージします。
頭皮マッサージで毛穴の汚れも除去
頭皮マッサージのもう1つのメリットが、毛穴に詰まっている汚れの除去です。
毛穴付近には、アポクリン腺とエクリン腺という2つの汗腺があります。アポクリン腺は、汗を分泌して整髪料や小さなゴミや埃などの外的な刺激から頭皮を守り、エクリン腺は皮脂を分泌しています。
これらの汗腺から分泌された汗や皮脂の中には、毛穴の内部にとどまってしまうものがあります。これが頭皮の衛生状態を悪くします。
頭皮マッサージをすることで、この毛穴の汚れを除去することができます。
ツボをさえたマッサージで血流を改善
頭のツボを知って押さえる
頭部には血流をよくしたり、自律神経を整えるツボがあります。
頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」、百会から頭の後ろ中央にまっすぐ下に引いた首と頭の骨の下の接点あたりの両側にある「天柱(てんちゅう)」、天柱と並んでいる「風池(ふうち)」の3つです。
これらのツボを押し、マッサージすると、血流が活発になって自律神経が正常になり、発毛の促進につながります。
押し方は、左右の手の中指の腹をツボに当て、軽く、痛くない程度に力を入れて押します。グーっと押して数秒そのまま、力を抜いて指を離して数秒。これを繰り返します。
M字ハゲに有効なマッサージ
前頭部は頭皮と頭蓋骨との間に脂肪がほとんどなく、頭皮は引っ張られているような状態で血行がよくありません。
血行が悪いと栄養が頭皮まで届かず、頭皮は栄養不足になります。すると、そこで育つ髪の毛も栄養が不足して成長できず、抜けたり、細い軟毛になって、薄毛やハゲになります。
頭部や首筋のコリをほぐし、ストレス解消をすることも血行の促進に有効です。
またマッサージ用のブラシを使うのもいいでしょう。頭皮のマッサージをしながら、余分な皮脂や頭皮の汚れも落としてくれます。
マッサージはリンパの流れも促進
体内のリンパ管にはリンパ液が流れ、ところどころにリンパ節があります。リンパは、体の中の老廃物や有害な細菌などをろ過して体外に排出するといいう働きをしています。
リンパ液は近くにある血管や筋肉などの動きを利用して流れているので、筋肉が動かなかったり、血行が悪いとリンパは滞ります。頭のリンパが滞ると頭痛や抜け毛などの原因になり、顔のリンパが滞ると顔がむくんだりします。
外部からの刺激で筋肉を動かしたり血行を促進して、リンパの流れをよくするのリンパマッサージです。
ヘッドスパをすると顔色がよくなったり頭がすっきりしますが、これは、頭をマッサージすると頭や顔のリンパの流れがよくなっているということです。ヘッドスパでリンパの流れをよくすることは、抜け毛やハゲ対策にもなりそうです。
まとめ
AGAであることがわかり、髪の毛を復活させたいと思ったら、まずは専門の医療機関で治療を受けることをおすすめします。
ですが、AGAの予防や発毛促進のために自分でできることもあります。
正しいシャンプーや頭皮マッサージなどは、それらが単独では発毛効果は期待できませんが、治療と併せて行うことで治療効果を発揮するはずです。
また、AGAは遺伝的な要因を排除することはできませんが、頭皮環境は遺伝ではありません。日常生活によってよくも悪くもなります。
薄毛やハゲを予防したり症状の進行を止めたり進行を遅らせるため、血行の促進や頭皮環境を整える
栄養の偏らない食事、質の良い睡眠、ストレスのない規則正しい生活などの生活習慣が何より重要です。頭皮の状態をベストに保って髪の毛を復活させる生活習慣を身につけましょう
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