毛が抜ける!このままハゲるの?…
そんな、人には言えない、恐怖に近い(?)悩みを抱えている方、そして、もしかしたらこれは脂漏性脱毛症かもしれないと疑っている方はたくさんいることでしょう。
男性に比べて女性にはあまりないと言われていましたが、最近は脂漏性脱毛症を疑って悩む女性が増えているようです。
そこで、脂漏性脱毛症はどうして起こるのか、どんな症状なのか、どんな処置や対策が必要なのかといったことをご紹介します。
脂漏性脱毛症の原因は何?
一般に脂漏性脱毛症といわれる、頭皮がベタベタと脂っぽくて毛が抜けるという症状は、いったい何が原因で起きているのでしょう。
皮脂とカビが引き起こす脂漏性皮膚炎が原因
脂漏性脱毛症と思われる人の頭皮を見てみると、ほとんど例外なく皮脂でベトベトしています。そして、毛穴には皮脂がびっしりと詰まっています。
その皮脂をぬぐいとってもすぐに新しい皮脂が分泌され、頭皮は皮脂で覆われてしまいます。こうして、頭皮は常に皮脂でベトベト状態になっているのです。
これは、皮脂の過剰分泌です。皮脂の分泌異常による症状といっていいでしょう。ただ、皮脂が頭皮を覆っていることが、脱毛(=抜け毛)の原因というわけではありません。
毛が抜ける直接の原因は、皮膚の毛穴などに常在しているカビ(真菌)と過剰な皮脂が引き起こす皮膚の炎症、脂漏性皮膚炎です。
悪さをするのは常在菌のマセラチア菌
私たちの皮膚には、約10種類の膨大な数の常在菌が棲んでいます。普段は、彼らは私たちにとって有益な働きをしていますが、私たちの体が何らかの理由で弱り、免疫力が低下したりすると、菌によっては私たちに害を及ぼす働きをすることもあります。
常在菌の一つであるマセラチア菌は、皮脂に含まれている中性脂肪を分解して栄養源にしています。
皮脂の分泌が過剰になっている頭皮では、マセラチア菌の中性脂肪の分解も活発になり、マセラチア菌の異常増殖につながります。そして、異常に増えたマセラチア菌は皮膚を刺激して炎症を引き起こすとされているのです。
遺伝子や生活環境、精神的ストレスも関与
しかし現時点で、脂漏性皮膚炎の原因が全て解明しているわけではありません。脂漏性皮膚炎の原因はマセラチア菌だけではないとも考えられています。遺伝子や生活環境、そして精神的なストレスなども脂漏性皮膚炎の発症に関わっているのではないかというのです。
脂漏性皮膚炎の人の父親が同様の症状を持っていたり、兄弟がともに脂漏性皮膚炎である場合は、遺伝的な要素が考えられます。
仕事などで強いストレスがある、食事の時間が不規則、栄養が偏っている、シャンプー剤が合っていない、シャンプーの際のすすぎ不足、タバコを吸う、深酒をする、寝不足といった生活習慣が頭皮環境を悪くし、脂漏性皮膚炎の原因になっているといわれています。
また、女性の脂漏性皮膚炎の場合は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少し、男性ホルモンが増えるなど、ホルモンバランスの崩れが影響しているとされています。
頭皮の赤み、フケ・痒みは初期症状
過剰な皮脂と常在菌が原因で炎症を起こした頭皮は、赤みをおびたり、フケや痒みを発症します。それが気になって、爪を立てて掻いたりすると頭皮に傷がつき、出血したり、かさぶたができたりします。
そして、そんな傷ついた頭皮を、日常的な対策や病院での治療をせずにそのまま放置しておくと炎症はさらに進み、頭皮環境は悪化します。
こうなると毛根へのダメージは避けられず、栄養の届かなくなった髪の毛は健康を維持できず、痩せ細って抜け落ちていきます。こうして脂漏性皮膚炎は脂漏性脱毛症へと進んでいくのです。
脂漏性脱毛症は早期治療が完治への近道
脂漏性脱毛症は、皮脂の分泌異常と常在菌によって起こる皮膚の炎症が原因です。治療は、炎症を鎮めることから始まります。
脂漏性皮膚炎は皮膚科での治療が必須
ここで注意しておきたいのは、脂漏性皮膚炎が原因の脱毛症は、いわゆる男性型脱毛症(AGA)とは全く異なるタイプの脱毛症であるということです。
男性型脱毛症は、男性ホルモンの作用が大きい脱毛症です。加齢によって硬い毛が柔らかい毛に変化し、前頭部や頭頂部から毛が抜け落ちていきます。その多くが、遺伝的な要素によるとされています。
一方、脂漏性脱毛症は皮膚炎という皮膚病が原因ですから、皮膚科医による治療が必要です。治療さえすれば、それも早期に治療するほどいい結果が得られるはずです。
治療は毛穴の炎症を改善することから
とにかく脱毛を治したい、抜け毛を止めたい…。そう思う気持ちはよくわかります。でも、まずは毛穴の炎症を改善して痒みなどをなくし、頭皮を正常な状態に戻すことです。くれぐれも、素人考えで市販の育毛剤などをいきなり使って治そうなどとしないでください。育毛剤を突然使用すると、弱っている頭皮を刺激することになり、症状をさらに悪化させることにもなりかねません。
脂漏性皮膚炎かもしれない、それが原因の脱毛かもしれない、そう思ったらできるだけ早く皮膚科を訪ねて適切な治療を受けましょう。ほかの病気と同様、早期発見、早期治療は早い治癒につながります。
抗真菌薬に含まれる注目のケトコナゾール
脂漏性皮膚炎の治療には、主に脂漏性皮膚炎に直接的に作用する抗真菌剤が使われます。
脂漏性皮膚炎に使用される抗真菌剤には、ケトコナゾールという成分が含まれています。
ケトコナゾールは、水虫やタムシなどの治療に効果を発揮し、前述した皮膚の常在菌マラセチア菌の増殖も抑えます。また、フケの除去効果もあります。
ケトコナゾールを主成分とした抗真菌薬は、クリームやローションなどが各種市販されています。
市販薬を使う時は医師と相談しながら
ケトコナゾールが配合された、脂漏性皮膚炎に適した市販薬は、外用薬だけでなく内服タイプもあります。医師の指導のもとで、有効に使うといいでしょう。
皮膚炎で生じている痒みなどを抑えるための市販薬に、「レスタミンコーワ軟膏」があります。これは抗ヒスタミン薬が主成分で、ステロイドは不使用です。効果は穏やかですが、長期使用も比較的安全といわれています。
また、痒みなどがひどい場合には、外用ステロイド剤を使うことも考えなくてはならないかもしれません。「テラ・コートリル」や「オイラックスH」は、ステロイド外用薬としては作用が比較的弱いので使用しやすいという人もいます。
いずれにしても、市販薬を使う際は医師に相談することをおすすめします。
日常の対策が最大の予防
治療と合わせて、日常生活の中で十分なケアをすることはとても大切です。症状を改善することと予防を、日常生活の中で同時にしていくことになります。
まず何より大事な食生活を見直す
私たちの体を作るもとになるのは、毎日の食事です。栄養のバランスを考えた食事を規則正しくとることは健康な体作りに欠かせないことで、それはもちろん頭皮や髪の健康にも大きな影響を及ぼします。
脂肪分の多い揚げ菓子などのスナックやジャンクフードばかり食べていると、体は脂肪過多になります。そして、野菜不足になるととビタミン不足になって血液中のコレステロール値が高くなります。これが、よくいわれる〝血液ドロドロ〟状態です。こうなると、皮膚組織の代謝も悪くなって、頭皮や髪へ栄養が行き届かなくなります。
ビタミンB群を意識して摂取する
健康を維持するのためには、毎日の食事からバランスよく栄養を摂取をしなくてはなりません。特にビタミンB群は意識して摂るようにしましょう。
ビタミンB群は、エネルギーを供給したり老廃物を体外に運び出したりする代謝に重要な働きをしています。B1、B2、 B6のほか多くの種類があり、全部が助け合って働きます。1種だけを摂取するのではなく、総合的に摂取するようにします。また、ビタミンB群で皮膚や髪の健康に関わる働きをするビタミンB2やビタミンB6は、不足しないように注意して摂取しましょう。
ビタミンB2を摂取しやすい食品は、レバーや豚肉、納豆、卵、牛乳などです。ビタミンB6を摂取しやすい食品は、マグロの赤身やカツオ、サバなどの青背魚、牛レバー、鶏のささみなどです。
脂肪の多い食事や偏った食生活を改め、バランスよく必要な栄養を摂取する規則正しい食生活をしましょう。
そして、食べたものを体内で有効に使うために、適度な運動を継続的に日常生活の中に取り入れることも必要です。運動で体力や健康を維持し、頭皮や髪の毛のケアを怠らず、常に清潔にすることを意識した日常生活を送りましょう。
頭皮環境を最良に保つ生活習慣を
生活習慣の乱れは、頭皮環境に大きなストレスを与えます。特に睡眠は、生活のベースになる重要な要素です。量(時間)より、質のよい睡眠を確保したいものです。
22時から深夜2時までは、よく睡眠のゴールデンタイムといわれます。これは、健康や美容に関わっているホルモン(成長ホルモン)が、睡眠に入ってすぐの3時間くらいの間に最も多く分泌されるからです。
成長ホルモンは、睡眠中の新陳代謝を促進して血行をよくします。昼間に酷使して疲れたり損傷した体の細胞を回復・修復するという、体が元気を取り戻すための重要な働きをします。美しい肌や髪は夜作られるというのは、このことからです。
規則正しい睡眠と生活習慣で、皮膚炎を起こしている頭皮環境も改善されるはずです。
頭皮ケアやヘアケアで清潔を保つ
脂漏性皮膚炎が原因で脱毛症を発症している人は、髪や頭皮があまり清潔ではないことが多いようです。
頭皮は、清潔さを保っていないと湿疹などができやすくなります。これはでんぷう菌という真菌が、水虫のように皮膚組織内に潜伏することが原因で起こる症状です。
頭皮をしっかり洗って、毛穴の奥の方まで汚れを除去し、頭皮に汗をかいたらきれいに拭き取り、頭皮表面の皮脂の酸化を予防することが大事です。
シャンプーは低刺激のものを使う
炎症を起こしている頭皮や髪を洗うシャンプー剤は、配合成分や機能をよく確認して選びます。
まず、洗浄力の強い合成界面活性剤が含まれているシャンプーは避けましょう。
低刺激のシャンプーというと、洗浄力が弱いけれど髪や頭皮にいいアミノ酸系シャンプー、頭皮に優しいノンシリコンのシャンプーなどがあげられます。でも、いいと思っても必ず配合成分を確認してください。アミノ酸系やノンシリコンのシャンプーでも、中には合成界面活性剤が含まれているものもあります。
合成界面活性剤を使用していないアミノ酸系やノンシリコンのシャンプー、それに加えて低刺激を謳っているシャンプー、無添加の石鹸シャンプーなどをおすすめします。
成分を確認して目的に合うものを選ぶ
皮膚炎の症状がひどい場合には、アミノ酸系やノンシリコンで、抗真菌剤が含まれているシャンプー剤をおすすめします。
男性の間で圧倒的に支持されている「スカルプDメディカルシャンプー」は、アミノ酸系シャンプーで抗真菌剤配合です。脂漏性皮膚炎や脂漏性脱毛を心配する人や、症状がかなり出ている人におすすめのシャンプーです。
ちなみに、最近ヘアケア商品などでよく見る〝スカルプ〟は、人の頭皮という意味です。スカルプケアは頭皮の手入れ、スカルプシャンプーは頭皮のためのシャンプーということになります。スカルプは選ぶときの基本要素と考えていいでしょう。
植物成分とオーガニック成分配合のシャンプー、天然由来のアミノ酸系シャンプーなど、頭皮や毛髪への有効な成分を配合したシャンプーが多く市販されています。
女性におすすめしたいシャンプー
脂漏性皮膚炎に有効な成分が配合されているうえに、香りにこだわったものや男女兼用のものなどもあります。
中でも特に女性におすすめしたいのがこちら。頭皮に必要のない9つの成分(シリコン、着色料、鉱物油、パラベン、石油系界面活性剤、紫外線吸収剤、合成ポリマー、タール系色素、酸化防止剤)をいっさい不使用で、アミノ酸系の天然植物由来の29種の有効成分を配合したマイナチュレ シリーズ「無添加・頭皮ケアシャンプー」です。このシリーズには「無添加育毛剤」もあります。シリーズをセットで使うのもいいでしょう。
洗いすぎないで、すすぎはていねいに
シャンプーの目的は、頭皮や毛穴の汚れの除去です。
泡立てたシャンプー剤で、頭皮や毛穴の汚れの脂分を浮き上がらせてから、すすいで洗い流します。
頭皮のベタつきが気になるからと、皮脂を必要以上に落としてしまうのは逆効果です。頭皮表面に皮脂がなくなってしまうと、不足している皮脂を補おうとして皮脂がさらに分泌されます。ベタつきは改善されるどころか、ひどくなることもあります。
洗いすぎは頭皮の皮脂を必要以上に落としてしまいます。シャンプーは、少なくても24時間以上間をあけてするようにしてください。
正しいシャンプーの仕方
シャワーを使ってシャンプーします。
お湯の温度はぬるめ、38度くらいがいいでしょう。お湯が熱すぎると、炎症を起こしている頭皮を刺激します。傷つけることもありますので、お湯の温度には注意してください。
まず、髪の表面に付着しているホコリや小さなゴミをざっと洗い流します。
シャンプー剤を適量、両手のひらにとってよく泡だてます。
泡を髪と頭皮につけます。髪全体を泡で包み込み、泡が頭皮にじかにつくようにします。
両手の指の腹で、頭皮をマッサージするように洗います。この時、指先に力を入れたり、指先で頭皮をこすったりしないようにします。髪同士をこするのも厳禁です。洗うのは、髪ではなく頭皮です。それを忘れずにシャンプーしてください。
洗った後、(シャンプー剤によってはそのまま数分放置するものもありますが)シャンプーが頭皮や髪に残らないように、お湯をたっぷり使って、ゆっくりていねいにすすぎます。
頭皮にシャワーヘッドを近づけて、お湯が直接地肌に当たるようにしてすすぎます。
リンスやトリートメントは油脂分が含まれていることが多いので、頭皮の刺激になることがあります。頭皮に炎症がある時は、リンスやトリートメントは控えた方がいいでしょう。
まとめ
脂漏性脱毛症は、頭皮が脂漏性の皮膚炎を起こしていることが原因であることがわかりました。
脂漏性皮膚炎は皮膚病の一種なので、皮膚科でのきちんとした治療が必要です。皮膚炎が治癒すれば、脂漏性脱毛症も改善するはずです。
早く抜け毛を止めたい、脱毛を解消したい、そんな気持ちで焦って市販薬を独断で使わないようにしましょう。
早期に皮膚科に行って治療を始めれば、有効な薬は市販薬にもありますから、治癒はそう難しくはないでしょう。
治癒後は再発防止と予防のために、日常生活の中での対策が大事になります。生活リズムを整えて、健康的な毎日を送りましょう。
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